一年経っても異動なし、後から入った人は一か月でCADへ…出張監督まで背負わされて

面接時はやはり良い事ばかりを言うのは普通ですよね…。CADで面接を受けて採用されたのですが、「暫くの間は現場にて商品を学んでから部署替えします」と言われました。
しかしひと月経ち、2ヶ月経ち、一向に部署は変わらない…。日報にはCADグループとなっているのですけど。
暫く経ったあたりに、片言しか話せない外国人の研修生を指導して欲しいと言われました。言葉が通じないので、こちらも教え方から手探りで、大変でした。置いてあるものは誰かが置いてあるだけで、捨ててある物ではないのだよ、というところから教えることになりました。
一年過ぎ、新しい方が入ってきましたが、その人はCADということで一か月の研修で部署替えして二階に行ってしまいました。
私はと言うと、現場の方でだいぶ重宝されていたため、部品の製作から組立、仕上げと現場の方がやる全部をするようになり、なぜか出張まで任されるようになったのです。それも監督者として数名引き連れて…。その辺は、組織の中にいる以上、多少我慢しました。
ですが、仕事の成果と言うか、物理的に作業が遅れてしまう事もしばしばあったのですが、毎日夜遅くまで作業をするわけですが、成果がないということで給料は支払われないのです。先輩に言っても上司に言っても当たり前のように…。
結局、後から入社されてくる人も当たり前のように「今月は何十時間、残業代カットだった」と…。結局、成果もあげていましたが、最初の約束も守られず、賃金もカットされての支給でしたので退職することにしました。
みんブラ事務局の所見:職種を限定する合意があれば同意なき配置転換を命じる権限はない。賃金は時間に対して発生し、成果は条件にならない。
職種を限定して採用された人を、同意なく別の仕事に回せるのか
この体験談の中心は約束された仕事と実際の仕事のずれです。
投稿者はこう書いています。
「CADにて面接を受けて採用されたのですが、暫くの間は現場にて商品を学んでから部署替えします」。
そして一年経っても変わらなかったのです。
ここで職種限定合意という考え方を説明します。
労働契約で従事する業務を特定する合意がある場合をいいます。
そして令和6年4月26日、
最高裁判所が重要な判断を示しました。
そこではこう述べられています。
労働者と使用者との間に職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には、使用者は当該労働者に対しその同意を得ることなく他の職種等への配置転換を命ずる権限を有しない。
これは大きな意味を持ちます。
従来は配置転換命令は広く認められると考えられてきました。
ですが職種を限定する合意があれば、
そもそも命じる権限がないと整理されたのです。
そしてここで重要なのは合意の認定です。
書面がなくても合意が認められることがあります。
判断材料はこうしたものです。
- 求人票や募集要項の職種の記載
- 採用面接でのやり取りの内容
- 労働条件通知書の「従事すべき業務の内容」
- 採用にあたって資格や技能が要件とされていたか
- 実際の勤務の実態
この方の場合、
日報にはCADグループと書かれていたのです。
会社自身がCAD職として扱っていた証拠です。
そのうえで、全体を確認します。
- CAD職として面接を受け採用された
- 「暫く現場を学んでから部署替え」と説明された
- 一年経っても異動はなかった
- 日報上はCADグループだった
- 外国人研修生の指導を任された
- 後から入った人は一か月でCAD部署へ異動した
- 製作・組立・仕上げの全工程を担うようになった
- 出張の監督者まで任された
- 毎日夜遅くまで作業していた
- 「成果がない」として残業代が支払われなかった
- 他の社員も同様にカットされていた
法律から見ると
職種限定合意と成果を理由とする賃金カットがこの記事の柱です。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| CAD職として採用しながら、一年以上にわたり現場作業に従事させた。 | 労働契約法3条1項 最高裁令和6年4月26日判決 |
職種を限定する合意がある場合、使用者は同意なく他職種への配置転換を命ずる権限を有しない。合意の有無は求人票・面接での説明・実態から判断される。 |
| 募集時に示した職種と実際の業務が異なっていた。 | 労働基準法15条1項 2項 |
従事すべき業務の内容は書面で明示すべき事項。明示された条件と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できる。 |
| 令和6年4月以降、業務の変更の範囲が明示されているかが問題となる。 | 労働基準法施行規則5条 | 令和6年4月から「就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲」の明示が義務。入社時点で将来の配置転換の範囲を示す必要がある。 |
| 「成果がない」という理由で残業代を支払っていなかった。 | 労働基準法37条 24条1項 |
時間外労働には25%以上の割増賃金を支払う義務。成果の有無は割増賃金の支払義務に影響しない。賃金は全額払いが原則。 |
| 社内で「今月は何十時間カット」という運用が常態化していた。 | 労働基準法37条 119条 |
割増賃金の不払いは6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。裁判所は同額の付加金の支払いを命ずることができる(114条)。 |
| 夜遅くまでの作業が常態化し、時間の把握もされていなかった。 | 労働安全衛生法66条の8の3 労働基準法108条 |
労働時間の状況を客観的な方法で把握する義務。賃金台帳に労働日数・労働時間数・時間外労働時間数を記入する義務がある。 |
| 経験の浅い社員に、外国人技能実習生の指導を単独で任せていた。 | 技能実習法9条 技能実習法施行規則 (平成29年11月施行) |
技能実習計画には技能実習指導員を置くことが認定基準。指導員は修得させる技能等について5年以上の経験を有する者である必要がある。 |
| 外国人労働者への言語面の支援体制がないまま現場に配置していた。 | 労働安全衛生規則35条 外国人労働者の雇用管理の 改善等に関して事業主が 適切に対処するための指針 |
雇入れ時の安全衛生教育は労働者が理解できる方法で行う必要がある。母国語での説明や視聴覚教材の活用などが求められる。 |
| 出張の監督者を任せながら、それに応じた処遇をしていなかった。 | 労働基準法38条の2 労働契約法3条4項 |
事業場外労働のみなし労働時間制は労働時間の算定が困難な場合に限られる。責任の増加に見合わない処遇は信義則上問題となり得る。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
「成果がないから残業代は出ない」という理屈は成り立たない
ここがこの記事で最も重要な部分です。
投稿者はこう書いています。
「毎日夜遅くまで作業をするわけですが、成果がないということで給料は支払われないのです」。
結論から申し上げます。
この理屈は成り立ちません。
理由を説明します。
労働基準法37条はこう定めます。
使用者が労働時間を延長し、または休日に労働させた場合においては、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内で政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
条文に出てくるのは労働時間だけです。
成果という言葉はどこにもありません。
ここが本質です。
日本の労働法制は時間を基準に組み立てられています。
使用者の指揮命令下に置かれた時間が労働時間です。
そしてその時間に対して賃金が発生します。
ですからこうなります。
- 作業が遅れた → 賃金は発生する
- 失敗した → 賃金は発生する
- やり直しになった → 賃金は発生する
- 成果物が出なかった → 賃金は発生する
これは請負との違いです。
請負は仕事の完成に対して報酬が支払われます。
雇用は労務の提供に対して賃金が支払われます。
この方は雇用です。
ですから成果を条件にすることはできません。
そしてもう一つ申し上げます。
投稿者はこう書いています。
「後から入社されてくる人も当たり前のように今月は何十時間残業代カットだったと」。
これは個人の問題ではないことを示しています。
会社の運用なのです。
この点は重要です。
労働基準監督署に申告する際、
複数の労働者に及ぶ問題であれば、
是正勧告の範囲も広くなり得ます。
そして遡って支払うことを求められることもあります。
ですから一人で抱えないことが大切です。
研修生の指導を丸投げされるということ
この体験談にはもう一つ重要な場面があります。
「片言しか話せない外国人の研修生を指導して欲しいと言われました」。
ここは会社の側の問題として述べます。
まず技能実習制度を説明します。
この制度は技能等の開発途上地域等への移転を目的とするものです。
労働力の需給の調整の手段として行われてはならないと法律に明記されています。
そして平成29年11月、
技能実習法が施行されました。
これにより技能実習計画の認定制が導入されました。
認定基準にはこうしたものがあります。
- 技能実習指導員を置くこと 修得させる技能等について5年以上の経験を有する者
- 生活指導員を置くこと
- 日本人が従事する場合と同等以上の報酬を支払うこと
- 技能実習を行わせる体制と事業所の設備が整っていること
つまり受け入れる側に体制が求められるのです。
ところがこの会社はどうしたか。
入社一年未満の社員に任せたのです。
しかも言語の支援もなくです。
ここで申し上げたいのはこういうことです。
投稿者は教え方から手探りだったと書いています。
それは当然です。
教える訓練を受けていないからです。
そして言葉が通じないからです。
この状況で生じたすれ違いは、
どちらの責任でもありません。
体制を作らなかった会社の責任です。
労働安全衛生の面でも同じです。
労働安全衛生規則35条は雇入れ時の安全衛生教育を義務づけています。
そして厚生労働省の指針は、
外国人労働者が理解できる方法で行うことを求めています。
具体的にはこうした方法です。
- 母国語での説明
- 視聴覚教材の使用
- やさしい日本語の使用
- 危険箇所の図示や掲示
これをせずに現場へ出せば、
事故が起きたとき会社の責任が問われます。
そして制度はいま変わろうとしています。
令和6年6月、
技能実習制度に代わる育成就労制度を定める法律が成立しました。
目的が人材の育成と確保に改められ、
一定の要件のもとで本人の意向による転籍が認められる方向です。
公布から3年以内に施行されます。
つまり受け入れる側の責任はさらに重くなるのです。
こういう会社は、今すぐ辞めていい
この方の退職の判断を確認します。
「結局、成果もあげていましたが、最初の約束も守られず、賃金もカットされての支給でしたので退職することにしました」。
この判断は妥当です。
理由を三つ挙げます。
- 約束が果たされる見込みがない。 一年待ち、後から入った人が一か月で異動した。順番の問題ではないと判明している
- できるほど損をする構造。 現場で重宝された結果、全工程と出張監督まで背負い、本来の職種から遠ざかった
- 賃金カットが制度化している。 個人の評価ではなく会社の運用である以上、改善は期待できない
そしてこれからできることを申し上げます。
まず未払いの割増賃金です。
賃金請求権の時効は当面3年です。
退職後でも請求できます。
必要なものはこうしたものです。
- 給与明細 カットされた事実が分かる
- 日報や作業記録 この方の場合日報があった
- 出張の記録 宿泊先や移動の記録
- 手帳やメモ 毎日の始業・終業時刻
とくに日報です。
投稿者は日報にはCADグループとなっていると書いていました。
これは二重の意味で使えるのです。
- 職種がCADであったことの証拠
- 実際に働いた日と内容の証拠
次に申告の窓口です。
労働基準監督署です。
割増賃金の不払いは労働基準法違反です。
そして申告したことを理由とする不利益取扱いは禁止されています(労働基準法104条2項)。
退職後であればなおさら心配はいりません。
最後にいま同じ状況にいる方へ申し上げます。
「暫くしたら部署を変える」と言われたら、
期限を確認してください。
そしてできればメールで残してください。
「先日お話のあった配置の件、おおよその時期を教えていただけますか」で構いません。
返事が来れば記録になります。
返事が来なければそれも判断材料です。
そして令和6年4月から、
従事すべき業務の変更の範囲を明示することが義務になりました。
入社時の労働条件通知書をもう一度ご覧ください。
そこに書かれている範囲が、
会社が命じられる範囲です。
この体験談に近いケース
この体験談に近いケースとして、あわせて読まれている記事です。
- 「正社員」のはずが入社1週間前に契約社員へ。助成金目当ての実態。
- 試用期間だけ最低賃金の時給。正社員の話はどこへ消えたのか。
- 「望まない転勤はない」と言われ入社。拒否したら降格処分に。
- 手取り13万・保険なし。社会保険に入れてもらえない職場。
この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。





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