エアコンは年中故障のまま…暑さが集中力を奪い同僚が指を失った

私は車パーツの製造を行う会社で働いておりました。給与や労働時間に関してはブラックな要素はなかったと思います。問題は労働環境でした。
きつい、危険、汚い、いわゆる3Kと言われているものです。作業自体は特に難易度が高いわけではなく簡単なものでしたが、室温が常時高かったのです。夏でも外に出た方がマシなくらい暑かったです。替えのTシャツは毎日5枚常備は当たり前。エアコンは年中壊れていると言われ、どうしようもない状態でした。
危険要素でいえば、僕の同僚は機械操作の誤りでケガをし、指の切断という惨事になってしまいました。
もちろん僕の同僚にも非がないわけではありませんが、劣悪な労働環境が生んだ悲劇であるとも私は考えています。もちろん本人も危険な機械を扱うことに関しては十分に警戒をし、作業に取り組んだと思います。しかし人間です。異常な暑さから集中力を欠いてしまい、ミスを誘ってしまいました。
私が思うに、会社が労働者に対して最低限の労働環境の提供は必須だと考えます。暑い中で働いている人は確かにたくさんいらっしゃると思います。しかし、危険な機械を前にして厳しい労働環境であると辛いものがあります。このような悲劇が起こらぬように会社には考えていただきたいものです。
みんブラ事務局の所見:暑熱の屋内作業場には温湿度調節の措置が義務づけられている。暑さは我慢ではなく安全の問題である。
屋内作業場の温度調節は、事業者の義務として条文がある
この体験談は賃金の話が出てきません。
投稿者自身がこう書いています。
「給与や労働時間に関してはブラックな要素はなかったと思います。問題は労働環境でした」。
ここがこの記事の重要な点です。
ブラック企業の話はしばしば残業代とパワハラに集中します。
ですが労働環境も法律の対象です。
ここで労働安全衛生規則606条をご覧ください。
事業者は、暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、有害のおそれのあるものについては、冷房、暖房、通風等適当な温湿度調節の措置を講じなければならない。
「講じなければならない」です。
努力義務ではありません。
そして冷房が明記されています。
投稿者はこう書いていました。
「エアコンは年中壊れていると言われ、どうしようもない状態でした」。
ここをはっきり申し上げます。
壊れているなら直すのが事業者の義務です。
そして直せないなら別の措置を講じることになります。
条文は「冷房、暖房、通風等」と書いています。
つまり手段は問わないのです。
大型送風機、スポットクーラー、遮熱、断熱、排熱の経路の見直し。
できることはいくつもあります。
そのうえで、全体を確認します。
- 車パーツの製造を行う会社だった
- 給与や労働時間に問題はなかった
- きつい・危険・汚いの3K環境だった
- 室温が常時高く、夏でも外の方がマシなほどだった
- 替えのTシャツを毎日5枚常備するのが当たり前だった
- エアコンは年中壊れていると言われた
- 同僚が機械操作の誤りで指を切断した
- 投稿者は異常な暑さが集中力を奪ったと見ている
法律から見ると
温湿度の調節と機械の安全が中心の論点です。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 屋内作業場の室温が常時高い状態が放置されていた。 | 労働安全衛生規則606条 労働安全衛生法23条 |
暑熱の屋内作業場では冷房・暖房・通風等の温湿度調節の措置を講じる義務がある。努力義務ではなく義務である。 |
| 空調設備が故障したまま修繕されていなかった。 | 労働安全衛生規則 606条 619条 |
設備の維持管理は事業者の責任。機械換気設備は2か月以内ごとに1回点検し必要な措置を講じることとされている。 |
| 高温環境での作業について、熱中症対策が確認できない。 | 労働安全衛生規則 612条の2 |
令和7年6月から熱中症対策が事業者の義務。報告体制の整備、作業離脱・身体冷却等の手順の作成と周知が求められる。屋内作業場も対象となる。 |
| 機械操作の誤りにより指の切断という災害が生じた。 | 労働安全衛生法20条 労働安全衛生規則101条 |
機械の危険な部分には覆いや囲いを設ける義務。操作の誤りだけで指が切断される構造であれば安全装置の不備が問われる。 |
| 災害の原因が本人の不注意として扱われている可能性がある。 | 労働安全衛生法28条の2 労働安全衛生規則97条 |
危険性・有害性等の調査と措置が求められる。作業行動も評価の対象であり、休業を伴えば労働者死傷病報告の提出が義務。 |
| 高温により集中力が低下する状態で危険作業を継続させていた。 | 労働契約法5条 労働安全衛生法3条 |
安全配慮義務。暑熱環境は判断力と反応速度を低下させることが知られており、危険作業との組合せは災害要因となる。 |
| 作業環境の測定や評価が行われた形跡が確認できない。 | 労働安全衛生法65条 作業環境測定法 |
一定の有害な作業場では作業環境測定が義務。暑熱についてもWBGT値の把握が熱中症対策の前提となる。 |
| 衣服が汗で使えなくなるほどの環境で就労させていた。 | 労働安全衛生規則625条 事務所衛生基準規則 |
事業者は洗面設備等を設け清潔に保持する義務を負う。更衣や洗身の設備は高温多汗の作業場では特に重要である。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この工場を糾弾する
この記事の核心は因果関係です。
投稿者の分析を引きます。
「もちろん本人も危険な機械を扱うことに関しては十分に警戒をし、作業に取り組んだと思います。しかし人間です。異常な暑さから集中力を欠いてしまい、ミスを誘ってしまいました」。
これは極めて正確な見立てです。
順に説明します。
高温環境が身体に与える影響は体調不良だけではありません。
判断力と反応速度が落ちます。
深部体温が上がると注意の持続が難しくなります。
そして脱水が加わります。
汗でTシャツが5枚必要な環境です。
相当な量の水分が失われています。
ここに回転する機械があるのです。
つまり暑さは快適さの問題ではありません。
安全の問題です。
そしてここで労働安全衛生法28条の2が効いてきます。
この条文は危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて必要な措置を講ずることを求めています。
そして調査の対象には作業行動が含まれます。
つまり暑い中で機械を操作するという行動自体が、
評価すべきリスクなのです。
次に「本人にも非がないわけではない」という記述についてです。
投稿者は公平に書こうとしているのでしょう。
ですがここは補わせてください。
安全管理の考え方では人は必ず誤ることを前提にします。
だから誤っても大事に至らないように設計するのです。
これをフェイルセーフといいます。
労働安全衛生規則101条はこう定めています。
事業者は、機械の原動機、回転軸、歯車、プーリー、ベルト等の労働者に危険を及ぼすおそれのある部分には、覆い、囲い、スリーブ、踏切橋等を設けなければならない。
つまり手が入る場所に危険な部分があること自体が問題なのです。
操作を誤っただけで指が切断されるのであれば、
設備の側に不備があると見るべきです。
そして最後にエアコンです。
「年中壊れていると言われ」。
この言い方に注目してください。
「壊れている」で説明が終わっているのです。
本来なら次に来るべき言葉があります。
- いつ修理するのか
- それまでどうするのか
それがないのです。
つまり直す予定がないということです。
そして年中という言葉がそれを裏づけています。
そして暑さを測る基準について説明します。
熱中症のリスクは気温だけでは決まりません。
湿度と輻射熱が効きます。
そこで使われるのがWBGT値(暑さ指数)です。
これは気温、湿度、輻射熱を組み合わせた指標で、
28度以上で厳重警戒、
31度以上で危険とされます。
工場では機械の発熱が加わります。
つまり外気温より室内のほうが高くなるのです。
投稿者が「夏でも外に出た方がマシ」と書いたのはそのためでしょう。
そして令和7年6月から、
WBGT28度以上または気温31度以上で連続1時間以上または1日4時間超の作業には、
熱中症対策が事業者の義務となりました。
この工場は確実に該当します。
つまりいまならよりはっきり違反と言える状態です。
そしてこの体験談の価値を述べます。
この方は被害者ではありません。
指を失ったのは同僚です。
それでも記録して書き残したのです。
そして原因を分析しています。
ここが重要です。
労働災害の調査では周囲の証言が大きな意味を持ちます。
本人はその瞬間のことを覚えていないこともあります。
そして会社はしばしば「本人の不注意」で片づけようとします。
そのとき「あの日は室温が異常に高かった」という証言が効きます。
ですから見ていた人が記録を残すことには意味があります。
そして労災保険の請求について申し添えます。
指の切断は障害補償給付の対象となり得ます。
請求の時効は5年です。
そして会社が手続きをしなくても本人から請求できます。
そして「3K」という言葉についても述べます。
きつい、危険、汚い。
この言葉はそういう仕事だから仕方ないという諦めとセットで使われがちです。
ここをはっきり申し上げます。
3Kは改善の対象です。
労働安全衛生法1条はこう書かれています。
職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。
「快適な職場環境」と書いてあります。
そして労働安全衛生法71条の2は、
事業者は、快適な職場環境を形成するよう努めなければならないとしています。
つまり暑いのは当たり前という前提が法律にはありません。
製造業でも空調を整えている工場は数多くあります。
差が出るのは業種ではなく経営の姿勢です。
そして費用の話にも触れます。
空調の整備には費用がかかります。
ですが指を失った同僚のことを考えてください。
労災が起きれば労災保険料のメリット制により保険料が上がります。
そして人が欠け、生産が落ちます。
つまり安くついていないのです。
こういう会社は、今すぐ辞めていい
3つの理由を述べます。
- 1. 暑さは我慢の問題ではなく、事故の要因である
判断力と反応速度が落ちるのです。そして回転する機械が目の前にあります。同僚は指を失いました。次がないとは言えません。 - 2. 「年中壊れている」なら、直す気がない
労働安全衛生規則606条は温湿度調節の措置を義務としています。それを何年も放置しているのであれば、指摘されても変わらないでしょう。 - 3. 給与と労働時間が普通でも、身体は守られない
投稿者自身が「給与や労働時間に関してはブラックな要素はなかった」と書いています。ですが失われるのは身体です。賃金では取り返せません。
もし今、同じ状況にいるなら
- 1. 室温を、日付とともに記録する
温度計の写真が最も確実です。WBGT計があればなお良いですが、気温だけでも資料になります。「◯月◯日14時38度」という記録を積み上げてください。 - 2. 空調の故障は、書面で申し出る
口頭では記録が残りません。「空調が故障しており室温が高い状態です。修繕の予定をお教えください」とメールで送ってください。申し出たのに対応がなかったという事実が残ります。 - 3. 労基署の安全衛生部門が窓口である
労働安全衛生規則606条・101条・612条の2はいずれも労働基準監督署の所管です。匿名での申告も可能で、設備の不備は是正勧告につながりやすい類型です。
この体験談に近いケース
この体験談に近いケースとして、あわせて読まれている記事です。
- 2年で10人が労災。労働災害が多すぎる工場の危険な実態。
- 農業法人の炎天下作業。熱中症の症状が出ても中断できない現場。
- トイレの電気をつけてはいけない。職場環境を軽視する会社。
- 「頭がクラクラする」と言っても休ませない引っ越し現場。
この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。





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