集金7割未達なら給料0円…学費のために学べなくなる新聞奨学生の構造

新聞奨学生の時が、いままでの中で最もブラックな職場だとおもいました。
というのも、朝は2時に起きて6〜7時まで朝の配達をし、夕方は4時から7時まで配達。休みは日曜の夕刊を含み四件、つまり三回の朝刊、夕刊を休めるという体制でした。
ここまでは奨学生の募集要項と差異はありませんが、他に家々への新聞勧誘(ノルマはありませんが、月に0件だと嫌味は言われます)と集金業務があり、集金のノルマ(7割以上を月に回収すること)をこなさないと、給料は0円でした。
朝食は出してもらえるのと、部屋代はないので、集金ノルマをこなせなくても最悪死なない程度はいけますが、学校へ通うとなると、集金の時間は大きく限られており、集金先のお宅が深夜しか在宅されていない場合、朝夕刊の中回収するのはなかなかに難しかったです。
時間帯が合わないお客様だとマシで、たまにインターフォンを鳴らすと電気を消されて居留守を使われたり、契約を取りに行く専門の方が勝手に結ばれた「○ヶ月無料だから契約した」とか連絡のないことが多く、神経が削られました。
カレンダーを見ながら、あと何ヶ月でこの仕事が終わるのかとペンを入れながら数えた仕事はこれ以外にありません。朝日だと集金業務がない選択があるそうなので、選択のある奨学生をえらぶべきでした。
みんブラ事務局の所見:ノルマ未達で給料0円という制度は成立しない。労基法27条の保障給と最低賃金法4条が働く。
「ノルマ未達なら給料0円」という制度は成立しない
この体験談で最も明確な違法から取り上げます。
投稿者はこう書いています。
「集金のノルマ(7割以上を月に回収すること)をこなさないと、給料は0円でした」。
ここをはっきり申し上げます。
この仕組みは成立しません。
理由を三つ述べます。
第一に、賃金は労働時間に対して発生します。
配達は毎日行われています。
その時間に対する賃金が集金の成績で消えることはありません。
第二に、出来高払制には保障給が必要です。
労働基準法27条は出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならないと定めています。
0円は保障給ではありません。
第三に、最低賃金を下回ります。
最低賃金法4条は最低賃金額に達しない賃金を定める労働契約はその部分について無効とし、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなすと規定しています。
そのうえで、全体を確認します。
- 朝は2時起き、6〜7時まで朝刊配達
- 夕方4時から7時まで夕刊配達
- 休みは日曜の夕刊を含め月に四件
- 他に新聞勧誘があり、月0件だと嫌味を言われた
- 集金業務があり、7割以上の回収がノルマだった
- 未達なら給料は0円
- 朝食の支給と部屋代なしという待遇だった
- 学校に通うと集金の時間が大きく限られた
- 勧誘専門の担当者が勝手に結んだ契約の説明を受けていなかった
法律から見ると
賃金と労働時間を軸に整理します。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 集金のノルマ未達を理由に、月の賃金を0円としていた。 | 労働基準法24条 27条 最低賃金法4条 |
賃金は全額を支払わなければならない。出来高払制でも労働時間に応じた保障給が必要であり、最低賃金を下回る定めは無効となる。 |
| 配達業務の労働時間に対する賃金が個別に計算されていない。 | 労働基準法37条 労働安全衛生法66条の8の3 |
朝夕の配達は明確な労働時間。客観的方法による労働時間の把握は事業者の義務であり、1日8時間超は25%以上の割増が必要。 |
| 午前2時起床の勤務で、深夜時間帯の割増が確認できない。 | 労働基準法37条4項 | 午後10時から午前5時は深夜業として25%以上の割増賃金が必要。朝刊配達はこの時間帯に大きく重なる。 |
| 休みが月に四件しかない勤務体系だった。 | 労働基準法35条 | 毎週少なくとも1回、または4週を通じ4日以上の休日が必要。四件という表現が示す実態次第ではこの最低線を割り込む。 |
| 朝食の支給と部屋代の免除を待遇の一部としていた。 | 労働基準法24条 最低賃金法 同施行規則 |
賃金は通貨で支払うのが原則。現物給与を最低賃金に算入できるのは法令・労働協約に定めがある場合に限られる。 |
| 勧誘の実績が0件のとき、嫌味を言われていた。 | 労働施策総合推進法 30条の2 |
ノルマではないと説明しながら未達を責める運用は「精神的な攻撃」にあたり得る。達成が相手方に依存する事項でもある。 |
| 学業との両立を前提とする制度でありながら、集金が学校の時間と重なっていた。 | 労働基準法15条 職業安定法5条の3 |
労働条件は書面等で明示する義務がある。制度の前提と実際の業務時間が両立しないのであれば募集時の説明の的確性が問われる。 |
| 他人が結んだ契約の内容を知らされないまま、集金を担当させられた。 | 特定商取引法 新聞業における景品類の提供の制限 (公正競争規約) |
訪問販売には書面交付義務とクーリング・オフがある。無料期間等の条件を担当者が把握できない状態は購読者との紛争を現場に押しつけるものである。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この販売店を糾弾する
この記事の構造をはっきりさせます。
新聞奨学生は、学費を出してもらう代わりに働く制度です。
つまり学業が目的であり、
労働はその手段です。
ところがこの体験談では順序が逆転しています。
順に見ます。
まず時間です。
朝2時起きで6〜7時まで。
そして夕方4時から7時まで。
これだけで1日8時間前後です。
そこに勧誘と集金が乗ります。
そして学校です。
1日は24時間しかありません。
ここで睡眠を考えてください。
朝2時起きですから、夜9時に寝ても5時間です。
ですが夕刊が7時までで、集金はその後です。
投稿者はこう書いています。
「集金先のお宅が深夜しか在宅されていない場合」。
深夜です。
つまり寝る時間がさらに削られるのです。
次に集金ノルマです。
ここがこの記事の核心です。
7割の回収が条件でした。
ここで問うべきはこの数字が本人の努力で達成できるかです。
投稿者の記述を見てください。
- 時間帯が合わないお宅がある
- 電気を消して居留守を使われる
- 勧誘担当が勝手に結んだ契約の説明を受けていない
いずれも本人にはどうにもできないことです。
特に三つ目が重い。
「◯ヶ月無料だから契約した」と言われても、
その条件を知らされていないのです。
つまり会社の情報共有の失敗が、
集金できないという形で本人の成績になり、
最終的に給料0円につながるのです。
ここまで整理すれば見えてきます。
会社はリスクをすべて奨学生に移していたのです。
そして逃げられないという点が決定的です。
なぜなら住まいと学費が会社に紐づいているからです。
辞めれば部屋を失い、学費の扱いも問題になります。
この構造が「カレンダーにペンを入れながら数えた」という一文を生んでいます。
辞めるという選択肢が事実上ないから、終わるのを待つしかなかったのです。
そしてもう一つ、見落としてはならない点があります。
朝食の支給と部屋代の免除です。
これは待遇の一部として説明されます。
投稿者も「最悪死なない程度はいけます」と書いています。
ですがここに法律上の論点があります。
労働基準法24条は賃金は通貨で支払わなければならないと定めています。
これを通貨払いの原則といいます。
食事や住居といった現物給与を賃金の代わりにすることは、
法令または労働協約に定めがある場合に限られます。
そして最低賃金の計算でも同じです。
現物給与を最低賃金に算入できるのは厚生労働省令で定める場合だけです。
つまり「食事と部屋を出しているから給料0円でよい」という理屈は、
まったく成り立ちません。
最後に、この制度を選ぶ方へ申し上げます。
投稿者はこう締めくくっています。
「朝日だと集金業務がない選択があるそうなので、選択のある奨学生をえらぶべきでした」。
これは実務的に重要な指摘です。
新聞奨学生の負担は販売所と業務範囲で大きく変わります。
- 集金ありか配達のみか
- 勧誘(拡張)の有無
- 朝刊のみか朝夕刊か
- 部数と配達区域の広さ
ここを契約前に書面で確認することが身を守ります。
そして労働条件は書面で明示されるものです。
労働基準法15条は賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定め、
従事すべき業務の内容もその対象です。
口頭で「集金もあるよ」で済ませる販売所は、
その時点で警戒すべきです。
そしてこの体験談の一文を引いておきます。
「カレンダーを見ながら、あと何ヶ月でこの仕事が終わるのかとペンを入れながら数えた仕事はこれ以外にありません」。
これは辞められないことの表現です。
なぜ辞められないのか。
住まいと学費が仕事に紐づいているからです。
ここで労働基準法17条を確認しておきます。
使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならないという条文です。
奨学金の仕組みが「辞めたら一括で返せ」という形で運用されているなら、
身分的な拘束として問題になり得ます。
契約の書面を必ず手元に残しておいてください。
そして集金という業務そのものについても触れておきます。
集金は現金を扱う仕事です。
夜間に一人で住宅を回り、相当額の現金を持ち歩くことになります。
これは安全上のリスクです。
使用者には労働契約法5条の安全配慮義務があります。
そして現金の不足が出たときの扱いも問題です。
労働基準法16条は賠償予定の禁止を定めています。
つまり「集金分が合わなければ自腹」という取り決めはそれ自体が違法です。
そして24条の全額払いにより、賃金から一方的に差し引くこともできません。
回収できなかった分を本人に背負わせるのは、会社が負うべき貸倒れのリスクを移しているだけです。
こういう働き方は、続けなくていい
3つの理由を述べます。
- 1. 「給料0円」は制度として存在できない
労働基準法24条・27条と最低賃金法4条により、配達に従事した時間分の賃金は必ず発生します。集金の成績で消える性質のものではありません。 - 2. 学業に支障が出るなら、制度の前提が壊れている
新聞奨学生は進学のための制度です。集金の時間が授業と重なるのであれば、制度が機能していません。投稿者が書くとおり集金業務のない販売所を選ぶ余地もあります。 - 3. 睡眠が5時間を切る生活は、学べない
朝2時起き+深夜の集金では授業中に起きていられません。学費のために学べなくなるのでは本末転倒です。
もし今、同じ状況にいるなら
- 1. 配達した日と時刻を、自分で記録する
起床時刻、配達開始・終了、集金に回った時間を手帳に書いてください。賃金請求権の時効は当面3年ですから、卒業後でも請求できます。 - 2. 給料0円の月があるなら、それが証拠になる
給与明細と振込記録を保管してください。労働していながら支払いが0円という事実は、それ自体が労働基準法24条違反を示す資料です。 - 3. 相談先は、学校にも外部にもある
賃金・労働時間は労働基準監督署(匿名申告も可・在学中でも可)。奨学生制度そのものの問題は新聞社の奨学会と在学校の学生課にも申し出てください。嫌味や叱責は総合労働相談コーナー(無料・予約不要)へ。
この体験談に近いケース
この体験談に近いケースとして、あわせて読まれている記事です。
- 時給700円の麻雀荘。最低賃金を下回る賃金は法律上無効です。
- 雇用詐欺の手口。給料がもらえない上に研修費用を請求される。
- 手取り11万の正社員生活。若さを理由に安く使われる構造。
- 従業員に課す罰金・ペナルティは違法。賃金から引くことはできません。
この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。





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