残業は原則禁止・申請は16時まで…それでもノルマだけは上積みされる金融機関の現実

私は金融機関に勤めておりましたが、そこは一般的に言うブラック企業でした。
まずはお昼ご飯を食べる時間がありませんでした。私が任されていたのは渉外係であり、顧客が預け入れしたい現金の預りや払い戻し、振込など承ったり、融資提案、保険や投資信託の勧誘などが主な仕事です。
なぜご飯が食べれないのかというと、お昼の時間にしか会えない顧客が多いためです。お昼時間と言えば、農家が自宅に帰り、ご飯を食べる時間であり、社長や重役が打ち合わせなどを終えて一息つく時間です。そのため、お昼の時間帯を指定してくる顧客が多く、気付くとお昼ご飯を食べられなかったというのが頻繁にありました。
会社に戻ってから食べればいいだろうという指摘もありましたが、戻った後のほうが忙しいのです。預かった現金の勘定や融資書類の作成、会議などやるべきことはたくさんあります。
それも、我が行は残業は基本的に行ってはいけないというルールがあり、残業をしたいと言えば白い目で見られ、急ぎの案件の際にはその日の16時までに申請しないといけないというルールまでありました。外回りで16時までに会社に戻った際にはどんなに急ぎの書類を仕上げようとも、その日の残業はできないのです。
次にノルマ制の厳しさです。金融機関は今や預金を集めていればいいという時代ではありません。融資もあれば、保険や国債、投資信託などたくさんの商品があります。そして、当然ノルマがあります。それもとんでもない件数を課せられます。いくら100パーセントやってもそれ以上のものを与えられ、ついには保険という保険は全て自分で入れさせられます。残業代もつかない安月給にとって、保険代まで払わなければいけないのは非常に大変でした。
最後に人間関係です。金融機関は上下関係と年功序列が目立つ業界です。どんなに間違っていても上司の顔色を伺い、さらにその上司を立てなければなりません。何度も理不尽な思いをしたことが今では苦い思い出です。
みんブラ事務局の所見:申請しなかったからといって、働いた時間が労働時間でなくなるわけではない。
残業を申請制にしても、働いた時間は労働時間である
この体験談で最も巧妙な仕組みから取り上げます。
投稿者はこう書いています。
「我が行は残業は基本的に行ってはいけないというルールがあり、残業をしたいと言えば白い目で見られ、急ぎの案件の際にはその日の16時までに申請しないといけないというルールまでありました」。
ここを分解します。
三重の壁があります。
- 原則残業禁止という建前
- 申し出れば白い目で見られるという空気
- 16時までに申請という時間の壁
そして三つ目が決定的です。
投稿者はこう続けています。
「外回りで16時までに会社に戻った際にはどんなに急ぎの書類を仕上げようとも、その日の残業はできないのです」。
ここで起きていることを確認します。
16時に戻った時点では、まだ書類の量がわからないのです。
そしてわかった時には申請できない。
ですが仕事は残っています。
ここをはっきり申し上げます。
申請しなかったからといって、働いた時間が労働時間でなくなるわけではありません。
労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。
そしてその指示は明示でも黙示でも構いません。
今日中に仕上げなければならない書類があると会社が知りながら、
帰れとも言わずに放置しているのであれば、
それは黙示の指示です。
そのうえで、全体を確認します。
- 担当は渉外係で現金の預り、払い戻し、融資提案、保険や投資信託の勧誘を行っていた
- 昼の時間帯しか会えない顧客が多く、昼食を取れない日が頻繁にあった
- 帰店後のほうが忙しく、現金の勘定や融資書類の作成、会議があった
- 残業は原則禁止というルールだった
- 残業したいと言えば白い目で見られた
- 急ぎでも16時までに申請が必要だった
- ノルマは100%達成してもさらに上乗せされた
- 保険という保険を全て自分で契約させられた
- 残業代もつかない安月給で保険代を払っていた
- 上下関係と年功序列が強かった
法律から見ると
休憩と自爆営業が中心の論点です。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 昼食を取れない日が頻繁にあり、休憩が実質的に付与されていない。 | 労働基準法34条 34条3項 |
6時間超で45分、8時間超で1時間の休憩を労働時間の途中に与える義務。休憩は自由に利用させなければならず、顧客対応をしていれば労働時間である。 |
| 残業を原則禁止としながら、業務量は減らしていなかった。 | 労働基準法32条 37条 24条 |
黙示の指示による就労も労働時間。申請の有無は割増賃金の支払義務を左右しない。不払いは30万円以下の罰金。 |
| 16時までという申請の締切により、事後の残業申請ができなかった。 | 労働基準法37条 104条2項 |
権利行使を事実上不可能にする社内ルールは申告の抑制にあたり得る。申告を理由とする不利益取扱いは禁止されている。 |
| 残業を申し出た労働者が白い目で見られる状態を放置していた。 | 労働施策総合推進法 30条の2 |
正当な申告を萎縮させる職場の空気の放置は就業環境を害するものと評価され得る。相談体制の整備は事業主の義務。 |
| ノルマ達成のため、職員自身に保険契約を締結させていた。 | 労働施策総合推進法30条の2 (令和6年12月指針改正) |
いわゆる自爆営業はパワーハラスメントの「過大な要求」「個の侵害」として指針に明記された。業務上明らかに不要な負担の強制にあたる。 |
| 職員本人を契約者とする保険契約が成績に計上されていた。 | 保険業法295条 300条 保険会社向けの総合的な監督指針 |
募集人による自己契約には制限がある。実質的に自己または家族の契約で成績を作る運用は監督上の問題として指摘される。 |
| 労働時間が客観的な方法で把握されていない可能性がある。 | 労働安全衛生法66条の8の3 労働基準法108条 |
タイムカード等の客観的方法による把握が義務。賃金台帳には労働時間数を記入し保存しなければならない。 |
| 不正防止のための連続休暇が実質的に機能していない。 | 労働基準法39条 金融機関向けの監督指針 |
金融機関では事務不正の防止のため職員に一定期間の休暇を取得させる態勢が求められる。休めない運用は内部管理上も問題となる。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この金融機関を糾弾する
この記事の要点を順に述べます。
まず昼食です。
投稿者の説明は正確です。
「お昼時間と言えば、農家が自宅に帰り、ご飯を食べる時間であり、社長や重役が打ち合わせなどを終えて一息つく時間です」。
つまり顧客に会いやすい時間なのです。
これは渉外という仕事の性質です。
ですから本人の段取りの問題ではありません。
構造的に昼に休めない仕事なのです。
ではどうすべきか。
労働基準法34条は休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないと定めています。
「途中」とあるだけで、
正午でなければならないとは書いていません。
つまり渉外担当の休憩を別の時間帯に設計することは可能なのです。
ところがこの銀行は「戻ってから食べればいい」と言いました。
そして投稿者はこう返しています。
「戻った後のほうが忙しいのです」。
結局どこにも休憩がないのです。
次に残業のルールです。
ここがこの記事の核心です。
「残業は基本的に行ってはいけない」。
この方針自体は正しいのです。
長時間労働を減らそうという意図なら望ましい。
ですが成立する条件があります。
仕事の量を同時に減らすことです。
この銀行がやったのは逆でした。
ノルマは増やし、残業は禁じたのです。
投稿者の言葉を引きます。
「いくら100パーセントやってもそれ以上のものを与えられ」。
ここで何が起きるか。
答えは一つです。
記録に残らない時間で働くことになります。
これが「残業ゼロ」の正体です。
数字の上では改善されたように見えます。
そして最後に保険です。
「ついには保険という保険は全て自分で入れさせられます」。
これが自爆営業です。
ここで重要な変化をお伝えします。
令和6年12月、
厚生労働省のパワーハラスメント防止指針が改正され、
いわゆる自爆営業がハラスメントの例として明記されました。
具体的には「過大な要求」および「個の侵害」の類型です。
つまりもはや営業の慣行ではなく、
会社が防止すべきハラスメントと位置づけられたのです。
そして金融機関にはもう一つの問題があります。
保険業法の観点です。
募集人が自己や家族を契約者とする契約で成績を作る運用は、
監督上の問題として指摘される種類のものです。
つまり労働法だけの問題ではありません。
そして年功序列という最後の論点に触れます。
投稿者はこう書いています。
「どんなに間違っていても上司の顔色を伺い、さらにその上司を立てなければなりません」。
これは金融機関で特に危険です。
理由は明確です。
金融機関の業務は顧客の財産を扱います。
そして誤りを早く報告できるかが損害の大きさを決めます。
上司の顔色を伺う文化では、
報告が遅れます。
そして隠す動機が生まれます。
これは内部管理上のリスクそのものです。
金融機関の監督では不正防止のために職員に一定期間の休暇を取得させる態勢が求められます。
担当者を一定期間業務から離すことで、
不正が表に出る仕組みです。
ところがこの銀行では昼食すら取れないのです。
連続休暇が実際に機能しているとは考えにくい。
つまり働く人の問題であると同時に、経営の問題でもあります。
そして渉外という仕事の構造をもう一段掘り下げます。
この方は現金を扱っています。
「預かった現金の勘定」と書かれています。
つまり帰店してからの事務は省けません。
現金が合わなければその日のうちに突き合わせる必要があります。
それを残業なしでやれと言われているのです。
ここに矛盾があります。
そしてこの矛盾を解決するのは個人ではありません。
人員配置と訪問件数を決めている経営です。
こういう職場は、今すぐ辞めていい
3つの理由を述べます。
- 1. 「残業禁止」で仕事が減らないなら、負担は隠れるだけ
禁止されるのは申請であって仕事ではありません。結果として記録に残らない労働が増えます。数字が良くなるほど実態は悪くなるという構造です。 - 2. 100%達成しても上積みされる目標は、達成できない
ゴールが動くのですから、どれだけ走っても届きません。そして最後は自分の財布で埋めることになります。働くほど手取りが減るのです。 - 3. 昼食を取れない働き方は、続けられない
休憩は労働基準法上の義務です。それが設計されていないということは、人の身体を計算に入れていないということです。
もし今、同じ状況にいるなら
- 1. 退店・退行の時刻を、自分で記録する
申請していない残業こそ記録が必要です。入退館の記録、パソコンのログ、社内メールの送信時刻、施錠の担当が資料になります。賃金請求権の時効は当面3年です。 - 2. 自分名義の保険契約を、一覧にする
いつ、どの商品を、誰の指示で、いくらで契約したかを整理してください。保険料の引落し記録も証拠です。令和6年12月の指針改正で自爆営業はパワハラの例として明記されました。 - 3. 相談先は、労基署と金融庁の両方にある
休憩・割増賃金は労働基準監督署(匿名申告も可)。ハラスメントは総合労働相談コーナー(無料・予約不要)。募集の適正性は金融庁の金融サービス利用者相談室にも情報を寄せられます。
この体験談に近いケース
この体験談に近いケースとして、あわせて読まれている記事です。
- 自爆営業は違法。行き過ぎたノルマで新人が半数に減った職場。
- 自爆営業でボーナスを使いキャッシングまで。ノルマ地獄の実態。
- 「タイムカード切ってから残業だからな?」記録を残さない手口。
- 手取り11万・休憩実質15分。休憩を設計しない会社の共通点。
この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。





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