申し込んでいない年休が勝手に入る…月休み4日が続いた乗務員の2年間

二年前に私は関東の鉄道会社のグリーン車内客室乗務員として働いていました。私は九州出身ですが、関東のほうが九州に比べて給料が確実に高いことを理由に、専門学校卒業後、関東での就職を決めました。
契約社員としての採用でしたが、ひと月の休みは8日から10日、年間で約120日の休日という内容の契約でした。しかし、実際に働くと最悪な月で、月休み4日という月が3ヶ月ほど続きました。
私たち乗務員の仕事は泊まり勤務がほとんどで、それぞれの行路により勤務時間は変わってきますが、どれも不規則で本当に辛い毎日でした。例えば朝、9:30出勤しその日の23:00に勤務が終わり、ホテルに宿泊します。宿泊と言っても、3時間ほどの仮眠です。次の日の朝5:30の始発の電車に乗り、昼の12:00に全ての乗務が終わり、各所属センターに戻り、車内販売の売上を計算し、日報を書き、次勤務確認を当直としてやっと退勤することができます。
家に帰っても疲れていて遊びに行く元気など全くありません。もし、仮に次の日が日勤で朝5:00出勤となると、帰宅してそのまま寝床について起きたらそのまま次の出勤となるのです。
会社がくれる休みが少ないため、新入社員を採用しても仕事の力量の割に給料と休日が適していないと判断し、どんどん辞めていくのです。
年休ももちろんありましたが、年休を申し込むと先輩達がロッカーで悪口を言い出したり、また勤務を作る人が私たち乗務員が年休を申し込んでもいないのに、このままだと年休がどんどんたまっていって消化されないからという理由で、勝手に公休、特休の代わりに年休を入れていたりなど、本当に最悪でした。
私は働き出して半年程経ってから親にも専門学校の先生にも相談しました。私は留学したいという目的があったので2年間我慢して働き、たくさん貯金をし頑張ることができました。留学が終わって日本に帰っても、2度とこの会社では働きません。次の会社を選ぶ時もしっかり企業実態について下調べをしてから就職しようとこの経験を通して強く思いました。
みんブラ事務局の所見:公休の穴を年休で埋めても休みは1日も増えない。年休の時季を決めるのは労働者である。
年休を勝手に入れることは、消化ではなく侵害である
この体験談で最も見過ごされやすい違反から取り上げます。
投稿者はこう書いています。
「勤務を作る人が私たち乗務員が年休を申し込んでもいないのに、このままだと年休がどんどんたまっていって消化されないからという理由で、勝手に公休、特休の代わりに年休を入れていたり」。
ここを整理します。
労働基準法39条5項は使用者は、有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならないと定めています。
つまりいつ取るかを決めるのは労働者です。
これを時季指定権といいます。
会社ができるのは事業の正常な運営を妨げる場合に他の時季へ変更すること(時季変更権)だけです。
そしてここが重要です。
もともと休みだった日を年休に振り替えることはできません。
年休は労働義務のある日を休む制度だからです。
公休日はもともと労働義務がない日です。
そこに年休を当てても休みは1日も増えません。
つまりこの運用は帳簿の上でだけ年休を消化させ、実際の休みは与えていないのです。
そのうえで、全体を確認します。
- 契約はひと月の休み8〜10日、年間約120日だった
- 実際は月休み4日が3ヶ月ほど続いた
- 泊まり勤務がほとんどで勤務は不規則だった
- 9:30出勤→23:00終業→ホテルで3時間ほどの仮眠→翌5:30始発乗務→12:00終業
- その後も売上計算・日報・次勤務確認があった
- 翌日が朝5:00出勤なら帰宅して寝るだけだった
- 年休を申し込むと先輩がロッカーで悪口を言った
- 申し込んでいない年休を公休・特休の代わりに入れられていた
法律から見ると
年次有給休暇と労働時間が中心の論点です。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 労働者が請求していない年休を、公休・特休の代わりに勝手に充てていた。 | 労働基準法39条5項 | 年休の時季を指定するのは労働者である。労働義務のない公休日に年休を充てても休日は増えず、年休を与えたことにならない。 |
| 年休の消化を、労使協定によらず会社側で割り振っていた。 | 労働基準法39条6項 39条7項 |
計画年休には労使協定が必要で、5日を超える部分に限られる。使用者による時季指定も労働者の意見を聴き尊重することが要件。 |
| 年休を申し込んだ労働者が、職場で悪口を言われていた。 | 労働基準法附則136条 労働施策総合推進法30条の2 |
年休の取得を理由とする不利益な取扱いは禁止。取得を萎縮させる職場環境の放置は就業環境を害するものと評価され得る。 |
| 契約は年間休日約120日だが、月4日の月が3ヶ月続いた。 | 労働基準法15条 35条 89条 |
休日は書面で明示すべき労働条件であり就業規則の絶対的必要記載事項。相違があれば労働者は即時に契約を解除できる。 |
| 宿泊を伴う勤務で、仮眠が3時間程度しか確保されていない。 | 労働基準法32条 (仮眠時間の法理) |
指揮命令下から解放されていない仮眠時間は労働時間と判例上扱われる。宿泊は休息ではなく行路の一部である。 |
| 終業から次の始業までの休息時間が確保されていない。 | 労働時間等設定改善法2条 | 勤務間インターバルの確保は事業主の努力義務。帰宅して寝るだけで次の出勤という状態は生活時間が成立していない。 |
| 乗務終了後の売上計算・日報・次勤務確認が勤務時間外に行われていた。 | 労働基準法32条 37条 |
業務の一部である事務処理は労働時間。1日8時間・週40時間を超えれば25%以上の割増が必要。 |
| 不規則な泊まり勤務が常態化していた。 | 労働安全衛生法66条 同規則45条 |
深夜業を含む業務に常時従事する労働者には6か月以内ごとに1回の健康診断が必要。特定業務従事者の健康診断にあたる。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この鉄道会社を糾弾する
この記事の要点を順に述べます。
まず契約とのずれです。
年間約120日という数字は、
月あたり10日です。
実際は月4日でした。
つまり月に6日不足し、3ヶ月で18日が消えたことになります。
そしてここが重要です。
その不足を埋めるために年休が使われていたのです。
投稿者の記述をもう一度読んでください。
「公休、特休の代わりに年休を入れていた」。
ここで何が起きているか。
会社は与えるべき公休を与えられなかったのです。
そしてその穴を労働者の年休で埋めた。
これは二重に不利益です。
- 本来もらえる公休が減る
- 自分で使えるはずの年休も減る
そして記録の上では「年休を消化した」ことになるのです。
39条7項の年5日も達成したことになります。
つまり会社は義務を果たしたように見える。
ですが本人の休みは1日も増えていません。
次に行路です。
投稿者が挙げた例を時刻で並べます。
- 9:30 出勤
- 23:00 勤務終了・ホテルへ
- 仮眠3時間ほど
- 5:30 始発から乗務
- 12:00 乗務終了
- その後売上計算・日報・次勤務確認
9:30から翌12:00過ぎまで、27時間近い拘束です。
そのうち休息は3時間。
ここで仮眠時間の扱いを確認します。
判例は仮眠中であっても事案対応の義務があり、場所的拘束がある場合には労働からの解放が保障されているとはいえず、労働時間にあたるとしています。
乗務員の宿泊は行路の途中であり、翌朝の始発に乗るための待機です。
自由に帰れるわけではありません。
そして最後にロッカーの悪口です。
これを些細な人間関係と見ないでください。
労働基準法附則136条は有給休暇を取得した労働者に対して賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないと定めています。
そして取りにくい空気は、
制度を使わせないという点で同じ働きをします。
会社にとっては都合がよいのです。
誰も申し込まなければ、勝手に割り振っても文句が出ません。
ここで年休の基本を整理しておきます。
年次有給休暇は労働基準法39条による法律上の権利です。
雇入れの日から6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤すれば10日が付与されます。
そして契約社員でもパートでも付与されます。
週の所定労働日数が少ない場合は比例付与になりますが、
フルタイムに近い勤務であれば正社員と同じ日数です。
そのうえで使うタイミングを決めるのは本人です。
会社が一方的に割り振れるのは二つの場合だけです。
- 労使協定を結んだ計画年休(39条6項・5日を超える部分に限る)
- 年5日の時季指定(39条7項・本人の意見を聴き尊重すること)
いずれも手続きが定められています。
この会社がやっていたのはそのどちらでもありません。
勤務を作る担当者が勝手に入れていたのです。
そしてこの会社の構造的な問題を指摘します。
投稿者はこう書いています。
「会社がくれる休みが少ないため、新入社員を採用しても仕事の力量の割に給料と休日が適していないと判断し、どんどん辞めていくのです」。
ここに循環があります。
- 休日が少ない
- 人が辞める
- 行路を埋める人が足りない
- 残った人の休みがさらに減る
そして1に戻ります。
この循環を止める方法は一つです。
休日を契約どおりに戻すことです。
ですが会社が選んだのは年休で帳尻を合わせることでした。
これは数字上解決したように見せる方法です。
実態は何も変わりません。
そして年休という最後の逃げ道まで失われるのです。
そして最後に投稿者の結論を引きます。
「次の会社を選ぶ時もしっかり企業実態について下調べをしてから就職しよう」。
これは正しい教訓です。
ただし一点だけ補います。
下調べをしなかったから悪いのではありません。
この方は契約書に書かれた条件を見て判断しています。
年間約120日と書いてあったのです。
それを守らなかったのは会社です。
下調べで防げるのは一部にすぎません。
ですから入ってから違うとわかった時に動ける知識のほうが実用的です。
労働基準法15条2項の即時解除はそのための条文です。
こういう会社は、辞めて構わない
3つの理由を述べます。
- 1. 契約の休日数が守られていない
年間120日と書かれていたのですから、月4日が続いた時点で契約違反です。労働基準法15条2項により即時に契約を解除できます。 - 2. 27時間拘束・仮眠3時間は、身体が持たない
不規則な泊まり勤務は睡眠のリズムを崩します。乗務は乗客の安全にも関わる仕事です。疲労は個人の問題ではありません。 - 3. 人が辞め続ける職場は、負担が増える一方
投稿者が書くとおり新入社員がどんどん辞めていくのですから、残った人の行路が増えます。状況は悪化しかしません。
もし今、同じ状況にいるなら
- 1. 勤務表と年休の記録を、毎月コピーする
公休・特休・年休がどう記載されているかを確認してください。申し込んでいない年休が入っていれば労働基準法39条5項違反の証拠です。年次有給休暇管理簿は3年間の保存義務があります。 - 2. 行路の実時刻を、自分で残す
出勤・終業・仮眠の開始と終了・事務処理の終了時刻を記録してください。仮眠時間が労働時間にあたるかは解放されていたかどうかで判断されます。 - 3. 年休は、理由を言う必要がない
年休の取得に理由は不要です。「私事都合」で足ります。相談先は労働基準監督署(年休・労働時間、匿名申告も可)と総合労働相談コーナー(無料・予約不要)です。
この体験談に近いケース
この体験談に近いケースとして、あわせて読まれている記事です。
- 有給休暇が取れない・拒否する違法ブラック企業の実態。
- 有給を取ると賞与が減額される。附則136条が禁じる不利益取扱い。
- ホテル業界の薄給・休みなし。シフトで休日が消える仕組み。
- 24時間365日働け!休暇中でも呼び出される職場の異常さ。
この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。





・広告、犯罪に関する内容、他人が不快になる誹謗中傷コメントは、書き込みは禁止です(削除させていただきます)。
・投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権、(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利も含む)その他の権利につき(第三者に対して再許諾する権利を含みます。)、サイト運営者に対し、無償で譲渡することを承諾します。
・投稿者は、サイト運営者に対して、著作者人格権を一切行使しないことを承諾します。