年に10回しか休めない牧場勤務…13時間労働の末に倒れて言われた「根性がねぇな」

ブラック企業だと感じたのは、某牧場で働いていたときのことです。まず、自分に自由の権利がありませんでした。
一日の休憩時間は1から2時間程度、朝の作業開始は6時から夜の終了時刻が19時ほどでしたので、13時間ほど労働していました。その労働もかなりの重労働で、動物を扱っていましたので、その動物の部屋の掃除等かなり辛い作業でした。輸送も行なっていましたので、ひどい日は一日中ほぼ休憩もなく運転にひた走っていました。
休みの日もほとんどありません。年に10回あるか無いかです。動物相手なので休む時間は少ないとはいえ、少なすぎたと思います。
ある日のことです。ある大学の学生さんが多く手伝いにいらっしゃって人数が増えた為、翌日に久々にお休みを貰えるという話になりました。自分も久しぶりのお休みでしたので、何をしようかと前日から考え、友達と遊ぶ約束をし、ワクワクしながら辛い作業を頑張っていました。
翌日の早朝に社長から電話がありました。「6時から輸送な」。その一言だけです。自分に権利などありませんでした。お休みのところごめんな等の謝りの言葉は一切なく、業務命令を下されただけです。
しょうがなく自分は仕事に向かいましたが、ショック、精神的に追い込まれていた為に作業中倒れこんでしまいました。社長からは、「根性がねぇな」。その一言です。
今はその社長が変わり、新しい社長になり少し体制が良くなりました。自分はブラック企業は社長の意向、人間性から生まれて来るのだなと感じました。
みんブラ事務局の所見:畜産業で外れるのは労働時間・休憩・休日の3つだけ。年休も深夜割増も安全配慮義務も生きている。
農業・畜産業は、労働時間の規制が外れる
この体験談を読むにあたって、先に知っておくべき条文があります。
労働基準法41条1号です。
この条文は別表第一6号(林業を除く農業)および7号(畜産・水産業)の事業について、
労働時間(32条)、休憩(34条)、休日(35条)の規定を適用しないと定めています。
牧場は畜産業にあたりますから、
1日8時間・週40時間という上限がかからないことになります。
理由は天候と生き物に左右される仕事だからです。
牛は定時になったから乳を出すのをやめるわけではありません。
ここまでは制度の話です。
ですが、ここから先が重要です。
適用除外になるのはその3つだけです。
そのうえで、全体を確認します。
- 朝6時から夜19時まで、約13時間の労働だった
- 休憩は1〜2時間程度
- 動物の部屋の掃除など重労働だった
- 輸送も担当し、ひどい日はほぼ休憩もなく一日中運転していた
- 休みは年に10回あるかないかだった
- 久々の休日の早朝に社長から「6時から輸送な」と電話があった
- 謝りの言葉は一切なかった
- 作業中に倒れこんだ
- 社長は「根性がねぇな」と言った
法律から見ると
適用除外の範囲と安全配慮義務が論点です。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 13時間労働・年10日程度の休みという勤務体系だった。 | 労働基準法41条1号 別表第一7号 |
畜産業は労働時間・休憩・休日の規定が適用除外。ただし適用除外はこの3つに限られ、他の規定はすべて生きている。 |
| 深夜時間帯を含む輸送業務があった。 | 労働基準法37条4項 41条 |
41条は深夜割増を除外していない。午後10時から午前5時の労働には25%以上の割増賃金が適用除外の事業でも必要である。 |
| 年に10回程度しか休みが取れていない。 | 労働基準法39条 39条7項 |
年次有給休暇は適用除外にならない。年10日以上付与される労働者には年5日を確実に取得させることが使用者の義務で、違反は30万円以下の罰金。 |
| 休日と伝えた日に、当日の朝に業務命令で呼び出した。 | 労働契約法3条4項 労働基準法39条5項 |
休日と告げた以上、労働者はその日の予定を組む。前日から翌朝までの一方的な撤回は権利の濫用と評価され得る。 |
| 精神的に追い込まれた状態で就労させ、作業中に倒れた。 | 労働契約法5条 労働安全衛生法3条 |
使用者には安全配慮義務がある。倒れるまで働かせた事実は義務の不履行を示す。牧場では機械・大型動物による重大災害の危険も高い。 |
| 倒れた労働者に「根性がねぇな」と言った。 | 労働施策総合推進法 30条の2 |
体調不良を人格の問題にすり替える言動は「精神的な攻撃」にあたり得る。災害の再発防止の機会も失われる。 |
| 倒れたことについて、災害としての手続きが確認できない。 | 労働安全衛生規則97条 | 労働者が業務中に負傷・疾病により休業した場合、労働者死傷病報告の提出が義務。提出しないことは「労災隠し」として処罰対象。 |
| 休憩や休日の取り決めが就業規則で明確でない。 | 労働基準法89条 106条 |
適用除外の事業でも、常時10人以上なら就業規則の作成・届出義務がある。周知されていない規則は効力を持たない。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この牧場を糾弾する
この記事の要点をはっきりさせます。
適用除外は、何をしてもよいという意味ではありません。
順に見ていきます。
まず労働基準法41条で外れるものを正確に押さえます。
- 32条 労働時間の上限
- 34条 休憩
- 35条 休日
この3つだけです。
逆に言えば、残るすべては生きています。
- 37条4項 深夜割増(22時〜5時)
- 39条 年次有給休暇
- 24条 賃金の全額払い
- 最低賃金法
- 労働安全衛生法のすべて
- 労働契約法5条 安全配慮義務
ここでこの牧場が守っていないものを数えてください。
年に10回という休みの数です。
年次有給休暇は適用除外になりません。
そして年10日以上付与される労働者には、年5日を確実に取得させることが使用者の義務です。
取らせなければ30万円以下の罰金です。
つまり「年に10回あるかないか」という状態は、
その10回が年休として処理されていない限り、違法である可能性が高い。
次に輸送です。
投稿者は「一日中ほぼ休憩もなく運転にひた走っていました」と書いています。
ここには二つの問題があります。
一つは深夜割増です。
牧場の輸送は早朝や深夜にかかることが多い仕事です。
この日も6時からでした。
準備を含めれば5時前に動いているでしょう。
午前5時までは深夜業であり、25%以上の割増が必要です。
そしてこれは適用除外になりません。
もう一つは安全です。
休憩なしの長時間運転は、
本人だけでなく道路上の第三者の命にも関わります。
そして、この記事の核心に入ります。
休日の朝の電話です。
この方は前日から考えていたのです。
「何をしようかと前日から考え、友達と遊ぶ約束をし、ワクワクしながら辛い作業を頑張っていました」。
休みがあるから頑張れたのです。
そこに「6時から輸送な」の一言でした。
ここをはっきり申し上げます。
畜産業に休日規定が適用されないことと、
与えた休日を当日の朝に一方的に取り上げてよいことは、
まったく別の話です。
前者は法律の話です。
後者は使用者の権利の使い方の話です。
労働契約法3条4項は労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならないと定めています。
そして結果がこれでした。
「作業中倒れこんでしまいました」。
ここで会社がすべきだったことを挙げます。
- 直ちに作業から離脱させる
- 必要なら医療機関へ搬送する
- 原因を調べ、再発を防ぐ
- 休業したなら労働者死傷病報告を提出する
実際に返ってきたのは「根性がねぇな」でした。
これは原因を本人の精神力にすり替える言葉です。
そしてすり替えた瞬間に、会社は何も改善しなくてよくなります。
投稿者は最後にこう書いています。
「ブラック企業は社長の意向、人間性から生まれて来るのだなと感じました」。
この見立ては正確です。
証拠はその後社長が変わって体制が良くなったことです。
畜産という業種が原因ではなかったのです。
同じ牛、同じ設備、同じ季節で、人が変わったら変わったのですから。
そしてもう一点、押さえておくべきことがあります。
適用除外は事業単位で判断されるという点です。
会社が「うちは農業だから」と言えば通るわけではありません。
実際に営んでいる事業の内容で決まります。
たとえば牧場に併設された直売所やレストランで働いているのであれば、
それは商業や接客娯楽業であり、適用除外になりません。
同じく加工場での作業が主であれば製造業です。
この方は飼育と輸送が中心でしたから畜産業と見てよいでしょう。
ですが自分の仕事がどこに当たるかは確認する価値があります。
最後に、この体験談が示していることを述べます。
投稿者は21歳です。
そして動物が好きでこの仕事を選んだのでしょう。
文中に牧場そのものへの不満は書かれていません。
書かれているのは休みを取り上げられたことと、
倒れたときの一言だけです。
つまり仕事がつらかったから辞めたのではありません。
人として扱われなかったからです。
そしてそういう職場ほど人が定着しません。
畜産は経験が効く仕事です。
個体の見分け、体調の変化、季節ごとの段取り。
それを覚えた頃に辞められるのですから、
損をしているのは牧場のほうです。
ここで休憩の話にも触れておきます。
投稿者は「一日休憩時間は1から2時間程度」と書いています。
数字だけ見れば十分に見えます。
ですが13時間拘束のうちの1〜2時間です。
そしてその休憩がまとまって取れていたかは別の話です。
畜産の現場では作業と作業の合間が休憩として数えられがちです。
ですが次の作業まで現場を離れられないのであれば、
それは手待時間であって休憩ではありません。
畜産業は34条が適用除外ですから、休憩の付与自体は義務ではありません。
ですが賃金の計算では話が違います。
実際に拘束されていた時間に対して最低賃金を下回っていないかは、
最低賃金法の問題として残ります。
こういう職場は、今すぐ辞めていい
3つの理由を述べます。
- 1. 「農業だから仕方ない」で片づく範囲を超えている
労働時間・休憩・休日は確かに適用除外です。ですが年休も、深夜割増も、安全配慮義務も生きています。そこを守っていないのであれば、業種は言い訳になりません。 - 2. 倒れた原因を精神論にする職場は、次も倒れる
「根性がねぇな」で終わらせる限り、13時間労働も年10日の休みも見直されません。次に倒れるのは別の誰かです。 - 3. 大型動物と機械の現場で、疲労は命に関わる
牛や馬は数百キロあります。判断が一瞬遅れれば重大な事故です。そこに長距離運転が加わります。取り返しがつきません。
もし今、同じ状況にいるなら
- 1. 年次有給休暇は、農業でも取れる
労働基準法39条は適用除外になりません。6か月継続勤務し、出勤率8割以上なら10日が付与されます。そして年5日は使用者が取得させる義務です。「うちに年休はない」は労基法13条により通りません。 - 2. 早朝・深夜の時間を、記録する
午後10時から午前5時にかかった時間を書き留めてください。この時間帯の25%割増は適用除外になりません。輸送であれば運行記録やETCの履歴も資料になります。 - 3. 倒れた・怪我をしたら、必ず記録を残す
業務中の負傷や体調不良は労災保険の対象になり得ます。労災と認定するのは労働基準監督署であり、会社ではありません。相談先は労働基準監督署(匿名申告も可)、ハラスメントは総合労働相談コーナー(無料・予約不要)です。
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