小声で話すと「しゃべるな」と電話…灰皿で叩かれ全員が病んだ職場

20代の時に勤めていた会社の話です。面接に行った時は私の他に1人だけいらっしゃいました。小さなベンチャー企業です。
入って間もなく違和感を覚えました。会社内には至る所に監視カメラ。それを社長は自宅で監視しているのです。
職員が仕事の話でコソコソ話をしているとすぐ会社用の電話が鳴り「しゃべるな」と連絡が来ます。その他、来客対応中で姿が見えないと連絡がきたり、お客様がいても平気で怒鳴り散らしていました。
ある時、部屋を綺麗にしておけと連絡がありました。誰が来るのかなと思いながらもお客様を待つと、明らかに普通の方では無いお客様。お通ししてお待ちくださいと伝えると「聞きたいことがある」と引き止められました。それは会社の経営、売り上げに関する事でした。あとで知ったのですがここの企業の出資者との事でした。守秘義務もありましたのでもちろん「分かりません」の一点張り。その後すぐに社長が来られ事なきを得ました。
その後、売り上げが悪いと怒鳴られるだけでなく、灰皿で叩かれる等、パワハラを越えた行為が増えていきました。先輩社員は精神を病み、退職。その後入ってきた後輩も精神的な病気で入退院を繰り返すことになりました。
もちろん私にも被害が及び、さすがに命の危険を感じ退職を決意。しかしすんなり受け取ってもらえるわけもなく、労働関係機関に入っていただき無事退社する事が出来ました。
しばらくはその社長が乗っていた車と同じ車種を見るだけで吐き気が止まらなくなるほど疲れていました。
みんブラ事務局の所見:職場のカメラには目的の正当性と手段の相当性が求められる。会話を止めるための常時監視は限度を超える。
職場の監視カメラには、目的と方法の相当性が求められる
この体験談の出発点から取り上げます。
投稿者はこう書いています。
「会社内には至る所に監視カメラ。それを社長は自宅で監視しているのです」。
ここを整理します。
まず職場にカメラを設置すること自体は直ちに違法ではありません。
防犯、現金の管理、品質の確認など正当な目的がある場合があります。
ですが限度があります。
裁判例は目的の正当性、手段の相当性、労働者のプライバシーへの配慮を総合して判断しています。
具体的には次のような点が問われます。
- 何のために設置するのか
- 撮影の範囲は必要最小限か
- 労働者に事前に知らせているか
- 誰がどのように画像を扱うのか
- 常時監視する必要があるのか
そしてこの件では使い方が明らかです。
「コソコソ話をしているとすぐ会社用の電話が鳴り『しゃべるな』」。
つまり防犯ではありません。
従業員の行動を常時監視し、会話を止めるために使われているのです。
そのうえで、全体を確認します。
- 小さなベンチャー企業だった
- 社内の至る所に監視カメラがあった
- 社長が自宅から監視していた
- 小声で話すと「しゃべるな」と電話が来た
- 来客対応で姿が見えないと連絡が来た
- 客がいても怒鳴り散らした
- 出資者から経営や売上について尋ねられた
- 売上が悪いと灰皿で叩かれるようになった
- 先輩社員は精神を病んで退職した
- 後輩は入退院を繰り返した
- 労働関係機関の力を借りて退職した
- 退職後も同じ車種を見ると吐き気がした
法律から見ると
監視と暴行が中心の論点です。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 社内の至る所に設置したカメラで、従業員を常時監視していた。 | 民法709条 個人情報保護法 労働者の個人情報保護に 関する行動指針 |
目的の正当性・手段の相当性・プライバシーへの配慮で判断される。常時監視は必要最小限を超えると評価され得る。 |
| 会話をしていることを理由に「しゃべるな」と連絡していた。 | 労働施策総合推進法 30条の2 (個の侵害) |
私的なことに過度に立ち入ることはパワーハラスメントの類型。業務上の会話まで封じる運用は業務の遂行自体を妨げる。 |
| 売上が悪いことを理由に灰皿で叩く行為があった。 | 刑法208条 204条 労働施策総合推進法30条の2 |
暴行は2年以下の拘禁刑等、傷害は15年以下の拘禁刑等。指針の「身体的な攻撃」にあたり、適正な範囲に含まれる余地はない。 |
| 顧客の面前で従業員を怒鳴る行為があった。 | 労働施策総合推進法 30条の2 民法709条 |
第三者の面前での威圧的な叱責は「精神的な攻撃」の典型例。名誉感情の侵害としても問題となる。 |
| 複数の従業員が精神疾患を発症し、退職・入退院に至っている。 | 労働契約法5条 労働安全衛生法66条の10 |
安全配慮義務。ひどい嫌がらせ・いじめ・暴行は精神障害の労災認定基準における心理的負荷の評価対象で、強と判断され得る。 |
| 退職の申出をすんなり受け取らなかった。 | 民法627条1項 労働基準法5条 |
期間の定めのない契約は申入れから2週間で終了。会社の承諾は不要であり、強制労働は最も重い罰則が定められている。 |
| 出資者から経営情報について質問を受ける場面があった。 | 会社法 労働契約法3条4項 |
経営情報の説明は経営者の責任である。従業員が対応を迫られる状況を放置することは業務体制の不備にあたる。 |
| 退職後も身体症状が続く状態が生じていた。 | 労働者災害補償保険法 心理的負荷による精神障害の 認定基準 |
業務による精神障害は労災の対象となり得る。療養補償給付・休業補償給付の時効は2年で、退職後でも請求できる。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この会社を糾弾する
この記事の要点を順に述べます。
まず監視の使われ方です。
投稿者が挙げた例を並べます。
- 仕事の話でコソコソ話をしていると「しゃべるな」
- 来客対応で姿が見えないと連絡
ここで一つ目に注目してください。
「仕事の話で」と書かれています。
つまり雑談ではありません。
業務上の相談をしていたのです。
それを止められるのです。
ここにこの職場の危険があります。
仕事は確認と相談で回ります。
それが禁じられているのですから、
誤りが増えます。
そして誤れば怒鳴られる。
二つ目も同じです。
来客対応中に連絡が来るのです。
接客中に電話が鳴れば客に失礼です。
つまり監視が業務を妨げているのです。
次に出資者の来訪です。
この場面はこの会社の構造をよく表しています。
社長は「部屋を綺麗にしておけ」とだけ連絡しました。
誰が来るのかも、
何を聞かれ得るのかも伝えていません。
そして経営と売上について質問されました。
ここで投稿者は正しい対応をしています。
「守秘義務もありましたのでもちろん『分かりません』の一点張り」。
これは適切です。
経営情報を説明するのは経営者の仕事です。
そしてここで考えてください。
常時カメラで監視しているのに、
この場面では助けに来なかったのです。
つまり監視は守るためではないということです。
そしてこの記事の核心に入ります。
灰皿です。
「売り上げが悪いと怒鳴られるだけでなく、灰皿で叩かれる等、パワハラを越えた行為が増えていきました」。
ここをはっきり申し上げます。
これは犯罪です。
刑法208条の暴行罪にあたります。
そして怪我をすれば傷害罪です。
灰皿は硬く重いものです。
頭部に当たれば命に関わります。
投稿者が「命の危険を感じ」と書いたのは誇張ではないでしょう。
そして結果を見てください。
- 先輩社員 → 精神を病んで退職
- 後輩 → 入退院を繰り返す
- 投稿者 → 退職後も吐き気
関わった全員です。
そして最後に退職の場面です。
「すんなり受け取ってもらえるわけもなく、労働関係機関に入っていただき無事退社する事が出来ました」。
ここは評価すべき行動です。
一人で交渉すればまた怒鳴られたでしょう。
そして灰皿が飛んだかもしれません。
だからこそ第三者を入れたのです。
これは正しい判断でした。
そしてカメラそのものについてもう少し述べます。
職場にカメラを置く会社は珍しくありません。
店舗であれば防犯のため、
工場であれば安全の確認のため。
これらは正当な目的です。
そして適切な運用には共通する要素があります。
- 設置の目的が示されている
- 撮影中であることが掲示されている
- 画像を見る人が限られている
- 保存期間が決まっている
- 目的以外に使わない
この会社にそのいずれかがあったとは読み取れません。
そして使い方が決定的です。
会話を止めるために使われているのです。
これは目的外というより、
最初からそのための設置だったのでしょう。
厚生労働省の労働者の個人情報保護に関する行動指針は、
労働者の個人情報の収集は業務の遂行に必要な範囲で行うことを求めています。
そしてビデオによる監視についても言及があります。
つまりやってよいことではないのです。
そしてこの方の退職後について述べます。
「しばらくはその社長が乗っていた車と同じ車種を見るだけで吐き気が止まらなくなる」。
ここを軽く見ないでください。
これは身体の反応です。
特定の刺激に対して自分の意思とは無関係に症状が出るのです。
強い心理的負荷を受けた後に見られる反応として知られています。
そして時間がたてば自然に治るとは限りません。
ここで労災の話をします。
厚生労働省の心理的負荷による精神障害の認定基準には業務による心理的負荷評価表があります。
そこには「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」という出来事が挙げられています。
そして治療を要する程度の暴行があれば強と判断され得ます。
この件では灰皿で叩かれているのです。
そして先輩も後輩も発症しています。
つまり複数の事例があるのです。
ですから申し上げます。
退職後でも労災を請求できます。
窓口は労働基準監督署です。
そして証拠について一点。
この職場には至る所にカメラがありました。
つまり暴行の瞬間も記録されている可能性があります。
監視のためのカメラが、
行為者に不利な証拠になり得るのです。
画像の保存期間は限られますから、
早く相談することが重要です。
そしてその開示を求める方法もあります。
自分が写っている画像は保有個人データにあたる場合があり、
個人情報保護法33条による開示の請求ができることがあります。
こういう会社は、今すぐ辞めていい
3つの理由を述べます。
- 1. 灰皿が飛ぶ職場に、話し合いの余地はない
暴行は犯罪です。そして頻度が増えていたと書かれています。次はもっとひどくなると考えるべきです。 - 2. 相談も会話も禁じられれば、仕事にならない
業務上の確認まで止められるのです。そして誤れば責められます。成果を出せない構造になっています。 - 3. 関わった全員が病んでいる
先輩も後輩も本人もです。個人の耐性の問題ではありません。環境が人を壊しているのです。
もし今、同じ状況にいるなら
- 1. 暴行を受けたら、受診と記録を最優先に
日時、場所、使われた物、目撃者を記録してください。痛みや痕があれば受診し診断書を取ってください。暴行は警察に相談できます。 - 2. 一人で交渉しなくてよい
この方は労働関係機関に入ってもらって退職しています。各都道府県労働局の総合労働相談コーナー(無料・予約不要)やあっせんが使えます。退職代行の前に公的な窓口を検討してください。 - 3. 退職後の症状も、労災の対象になり得る
ひどい嫌がらせ・いじめ・暴行は心理的負荷の評価表に明記されています。療養補償給付・休業補償給付の時効は2年。退職後でも労働基準監督署に請求できます。
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この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。





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