小さな田舎町の家族経営家具屋に入社。社長宅の掃除や庭木の手入れをやらされる。

家族経営の小さな家具屋さんに入社しました。ハローワークで見つけた時に、私としては即決でした。小さな田舎町で、私の身に付けた技術を生かせるところは多くは無かったからです。
でもなぜか、ハローワークの人に、「ここは止めておいた方がいいよ」と言われて驚きました。そんなことを言うハローワークの人もいるんだ、という驚きです。人の入れ替わりが激しいから、というのが理由のようでした。
でも、他に私の資格を生かせる求職は無かったので、押し切って紹介状を出してもらいました。
面接は、社長とでした。バイタリティ溢れる生き生きした感じの社長でした。
無事合格して、ハローワークも認めるブラック企業での仕事が始まったわけですが、始めの頃は自分のことで一杯一杯であまりブラック感は感じませんでした。でも、次第にそのワンマンぶりが際立ってきた頃、決定的なことがありました。
社長の自宅の一角に事務所がありました。そして、年末の大掃除の時期が来ました。当然事務所部分だけだろうな、と暢気に考えていたのは甘かったです。事務所部分だけでなく、社長の家のリビングや仏間、庭の掃除に庭木の手入れまでさせられたことです。
このとき、あのハローワークの人の言葉を思い出しました。なるほどな、こういうことか、と。私もその後辞めたので、またハローワークに求人を出したことでしょう。
みんブラ事務局の所見:社長宅の掃除は業務ではない。厚労省のパワハラ指針が「私的な雑用の強制」を例示している。
ハローワーク職員が「止めておけ」と言う会社
この体験談の判定は3.0です。長時間労働も暴言も賃金不払いも記録されていません。それでも、この記事には求職中の方に強くお伝えしたい教訓があります。
投稿者は44歳の女性。小さな田舎町で、自分の身につけた技術を生かせるところは多くなかったため、ハローワークで見つけた家族経営の家具店に即決しました。
ところが——
「でもなぜか、ハローワークの人に、『ここは止めておいた方がいいよ』と言われて驚きました。そんなことを言うハローワークの人もいるんだ、という驚きです」。
理由は「人の入れ替わりが激しいから」でした。
ここが極めて重要な点です。ハローワークは、求人を出す側と求職する側の両方に接しています。同じ会社が何度も求人を出せば、職員はその事実を知っています。そして通常、職員が特定の求人を否定的に評価することはありません。それでも言った、ということの重みを考えてください。
それでも投稿者は、「他に私の資格を生かせる求職は無かったので、押し切って紹介状を出してもらいました」。
面接は社長と。「バイタリティ溢れる生き生きした感じの社長」でした。——ここも重要です。面接での印象は、判断材料として当てになりません。
入社当初は自分のことで手一杯で、あまりブラック感は感じなかったといいます。そして決定的なことが起きます。
社長の自宅の一角に事務所がありました。年末の大掃除の時期が来ます。当然、事務所部分だけだろうと考えていたところ——
「事務所部分だけでなく、社長の家のリビングや仏間、庭の掃除に庭木の手入れまでさせられたことです」。
そして投稿者は書いています。「このとき、あのハローワークの人の言葉を思い出しました。なるほどな、こういうことか、と。私もその後辞めたので、またハローワークに求人を出したことでしょう」。
法律から見ると、これは何にあたるのか
この職場で行われていたことを条文と突き合わせます。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 社長の自宅のリビング・仏間・庭の掃除、庭木の手入れをさせられた。 | 労働基準法15条 労働契約法6条 |
労働者が提供する義務を負うのは労働契約で定められた業務。従事すべき業務の内容は明示すべき労働条件であり、経営者個人の家事はその範囲に含まれない。 |
| 私的な家事労働を、業務命令として行わせていた。 | 労働施策総合推進法 30条の2 |
業務上明らかに不要なことや、私的な雑用の処理を強制的に行わせることは、厚生労働省のパワハラ6類型のうち「過大な要求」の例として指針に明記されている。 |
| 求人票に記載のない業務が、入社後に追加されていた。 | 労働基準法15条 | 2024年4月から、就業場所と業務の「変更の範囲」まで明示が義務となった。明示された条件と事実が相違すれば、労働者は即時に労働契約を解除できる(15条2項)。 |
| 人の入れ替わりが激しく、頻繁に求人を出し続けていた。 | 職業安定法5条の3 | 求人者は求職者に対し、従事すべき業務の内容等を明示しなければならない。実態と異なる募集を繰り返す事業者については、ハローワークが求人不受理とする制度もある。 |
| 事業所が社長の自宅と一体になっており、公私の区別がなかった。 | 労働基準法89条 労働基準法106条 |
常時10人以上を使用する事業場には就業規則の作成・周知義務がある。業務の範囲が文書で定められていない状態は、経営者の裁量が無制限に及ぶ温床となる。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この事例で押さえるべき法的な論点は、「どこまでが業務か」という一点です。
労働契約とは、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを内容とする契約です(労働契約法6条)。そして、その「労働」の中身は労働契約で定められた業務に限られます。
労働基準法15条により、使用者は従事すべき業務の内容を明示しなければなりません。そして2024年4月からは、将来の配置転換で変わり得る「業務の変更の範囲」まで明示が義務になりました。
家具店の求人に応募した人が社長宅の仏間の掃除と庭木の手入れを業務として想定するでしょうか。明示されていた業務の範囲を、明らかに超えています。
そして、この点は厚生労働省のパワハラ指針にも明記されています。
パワハラ6類型のうち「過大な要求」の該当例として、「労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること」が挙げられているのです。
つまり社長の家の掃除をさせることは、国の指針が名指しで例示しているパワーハラスメントです。「家族経営だから」「小さな会社だから」という説明が通る余地はありません。
公私の区別がない会社を糾弾する
ここからは、事務局として率直に書きます。
この事例で象徴的なのは、社長の自宅の一角に事務所があったという物理的な構造です。
建物として一体になっている。だから「事務所の大掃除」と「自宅の大掃除」の間に、物理的な境界がありません。そして境界がなければ、指示する側は区別しなくなる。
おそらく、この社長には悪意すらなかったのでしょう。自分の家と会社が同じ場所にある以上、同じように片づけてもらうのが自然だと感じている。そこに雇用契約という枠組みは意識されていません。
だからこそ、たちが悪い。悪意ある搾取なら指摘もできますが、「当たり前だと思っている」相手には説明が通じません。「これは業務ではありません」と言った瞬間、「そんなことも手伝えないのか」という話にすり替わる。
そして仏間という具体が重い。仏間は、その家の最も私的な空間のひとつです。そこを従業員に掃除させるという発想には、「雇っている人は自分の家の者に近い」という感覚が透けています。
家族経営の会社で繰り返し起きるのは、まさにこれです。従業員が「家族の一員」として扱われる。一見あたたかい言葉ですが、実態は逆です。家族には労働時間も賃金も契約もありません。「家族だから」という言葉は、権利を消すために使われます。
そして、この記事の白眉はハローワーク職員の忠告です。
投稿者は最初、「そんなことを言うハローワークの人もいるんだ、という驚き」を感じました。ハローワークは求人を紹介する機関であって、通常、特定の求人を否定することはありません。それでも言った。
そして「人の入れ替わりが激しいから」という理由。これはハローワークにしか見えない情報です。求職者は1社の求人票しか見ませんが、ハローワークは同じ会社が何度求人を出したかを知っています。
そして最後の一文が、静かに効いています。「私もその後辞めたので、またハローワークに求人を出したことでしょう」。
忠告は正しかった。そして投稿者自身が、その忠告を裏づける一人になった。
求職中の方へ:この記事から得られる3つの判断材料
この記事の判定は3.0と高くありません。それでも掲載する価値があるのは、入社前に見抜くための材料が揃っているからです。
①ハローワーク職員の言葉を軽く見ない。職員が特定の求人について否定的な情報を口にすることは、まずありません。それでも言うということは、相当の理由があるということです。「人の入れ替わりが激しい」という情報は、求人票からは決して読み取れません。
②面接での社長の印象は、判断材料にならない。この社長は「バイタリティ溢れる生き生きした感じ」でした。当サイトの体験談を読んでいると、カリスマ的な経営者ほどワンマンで公私混同しやすい傾向が繰り返し現れます。印象の良さは、労務管理の質とは無関係です。
③「他に選択肢がない」という状況が、判断を歪める。この方は「小さな田舎町で、私の身に付けた技術を生かせるところは多くは無かった」から押し切りました。その気持ちは痛いほど分かります。しかし選択肢がないという状況こそ、警告を無視させる最大の要因です。
いま同じ状況にいる人が、今日のうちにやるべき3つのこと
- 1. 「これは業務ですか」と確認してよい
経営者の自宅の掃除、私的な買い物、家族の送迎——業務命令として行う義務はありません。厚生労働省のパワハラ指針でも「業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること」が「過大な要求」の例として明記されています。断りにくければ、まずいつ何をさせられたかを記録してください。積み重なった記録は、相談時の具体的な材料になります。 - 2. 労働条件通知書で「業務の内容」を確認する
2024年4月以降に契約した方は、業務の「変更の範囲」が明示されているはずです。書かれていない業務を命じられたなら、明示された条件との相違として労働基準法15条2項による即時解除の根拠になり得ます。契約書や労働条件通知書が交付されていないなら、それ自体が労働基準法15条違反です。 - 3. 求職中なら、ハローワークで「離職状況」を聞く
これは応募前にできる最も有効な調査です。ハローワークの窓口で「この会社は求人を頻繁に出していますか」と聞いてみてください。答えられる範囲で情報をもらえることがあります。また求人票の「離職者数」「採用実績」の欄も確認してください。在職中の方で相談先を探しているなら、各都道府県労働局の総合労働相談コーナー(無料・予約不要)が窓口です。
この体験談に近いケース
この体験談に近いケースとして、あわせて読まれている記事です。
- 家族経営会社の社員=会長の使用人。ストレスとケンカで退職する従業員続出。
- 家族経営の闇。「非常識な会長」「クズ中小企業社長」親子と闘い続けたエピソードの数々。
- 家族経営の社長の奥さんがクソむかつく!休みなしのシフトを毎日入れられる。
- 公私混同かよ!アットホームな職場がブラックになっていく瞬間。
この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。





