勉強熱心な上司が部下に読書・課題を強要。ストレスで倒れる部下も…。上司が来ただけで職場は緊張感で凍りつく…。

以前働いていた、コールセンターの上司(40代男性)がブラックでした。
そこは観光関係のコールセンターで、お客様からの問い合わせに答えるのが主な仕事でした。オペレーター達は全員派遣社員で、その中でも優秀な人達はリーダーというポジションにつくことが出来ました。リーダーの仕事は電話を取る以外に、上司の補佐、他のオペレーター達の指導が主な仕事でした。
業務に慣れてきた頃、私もリーダーに昇格し、上司と関わる機会が一気に増えました。上司は気分屋で自分が気に入らないことがあると、理不尽なことでも人前で怒鳴り散らしました。相手が男性でも女性でも関係ありません。「首から上のものを使ってよく考えろ」「頭悪いなあ」など、他のオペレーターの前で私も怒鳴られる機会が増えました。
事実、上司は仕事の経験年数が長く、仕事が出来る人だったので私は自分に能力がなく要領が悪いからダメなんだと思うようになっていました。
上司が部屋に入ってくると、職場は緊張感で凍りつき、みんなシーンとなりました。
その上司は本を読むのが趣味で、ハーバード大学出身の人が書いた本や、マッキンゼーに勤めている人の仕事のやり方などが書かれたビジネス本を特に熱心に読んでおり、職場に自分で本棚を作って並べていました。私たちリーダーにもそれらを勧め、読むようにと貸してもらうことも多かったです。
その頃は「勉強熱心な人だな」と思い、素直に本を受け取って読んで感想を伝えていました。リーダーと上司は日頃の業務に加えて、週1回ミーティングをしていました。初めは業務に関わることを話し合っていたのですが、ある時から課題が出される様になりました。
「自分の興味のある本を毎週1冊読んで、その要約と感想をA4用紙1枚にまとめて提出して下さい」。
毎週期限が設けられており、必ず提出せねばなりませんでした。週5日フルタイムで働きながら毎週本を一冊読んで要約と感想を出すのは大変な作業でした。やってきた課題は次週のミーティングでみんなの前で発表し、上司が講評をするというシステムでした。上司曰く、今後ビジネスのいろんな場面で活かせる要約力を身につける為の練習とのことでした。初めの1回だけチャレンジしましたが、読書も特に好きではない自分にとって、とてもストレスが溜まる作業でした。
その頃、ダブルワークで別の仕事もしていた私はそれを理由に時間がなく課題が出来ないことを伝え、はっきりと断りました。散々嫌味を言われましたが、最終的には課題をしなくても良いと認められました。他のリーダー達は真面目に課題提出を続けていました。
私の同僚の一人は一児の子供を持つお母さんでしたが、家事、育児の合間をぬい睡眠時間を削ってまで課題を提出していたところ、ストレスで難聴になりました。他の男性の同僚は、人一倍普段から怒鳴られていたことも相まって、円形脱毛症になりました。私も出勤する度に緊張感やストレスで頭痛がすることが段々増えました。
派遣元にもやんわりと相談しましたが、長く勤め、唯一職場のことを把握しており頼りになる上司のことを無下に出来ないのか、話だけは聞いてもらえましたが、対策は特に何も講じてもらえませんでした。週1回の課題以外にも、毎日の業務に別の課題が組み込まれるようになり始め、とうとう私は限界を感じ、退職を決意しました。
他のリーダー達も次々に退職を考え相談し始めたところ、やっと派遣元が動き始め上司にも急遽面談を行なっていました。そのまま辞めてしまった為その後どうなったかは知りませんが、私の初めてのブラック上司体験談でした。
みんブラ事務局の所見:業務時間外の「課題」も、断れないなら労働時間である。真面目に応じた人ほど損なわれた。
「勉強熱心」と「強要」の境界はどこか
この記事の総合判定は3.0です。読者投票の平均も、当サイトの記事のなかでは低いほうです。長時間労働も賃金の不払いも記録されておらず、「これはブラックなのか」と判断が割れる類型だからでしょう。
だからこそ、丁寧に見ていきます。
舞台は観光関係のコールセンター。オペレーターは全員派遣社員で、優秀な人はリーダーというポジションに就けました。投稿者もリーダーに昇格し、上司と関わる機会が増えます。
この上司(40代男性)には、明確な問題行動がありました。気分屋で、気に入らないことがあると理不尽なことでも人前で怒鳴り散らす。「首から上のものを使ってよく考えろ」「頭悪いなあ」といった言葉を、他のオペレーターの前で浴びせる。「上司が部屋に入ってくると、職場は緊張感で凍りつき、みんなシーンとなりました」。
ここまでは、典型的なパワーハラスメントです。
問題は、ここからです。この上司は読書が趣味で、ハーバード大学出身者の本やマッキンゼー出身者のビジネス本を熱心に読み、職場に自分で本棚を作って並べていました。リーダーたちにも勧め、貸すことも多かった。
投稿者は当初「勉強熱心な人だな」と思い、素直に受け取って読み、感想を伝えていました。
そしてある時から、週1回のミーティングで課題が出されるようになります。
「自分の興味のある本を毎週1冊読んで、その要約と感想をA4用紙1枚にまとめて提出して下さい」。
毎週期限があり、必ず提出せねばならない。そして翌週のミーティングでみんなの前で発表し、上司が講評する。上司の説明は「今後ビジネスのいろんな場面で活かせる要約力を身につける為の練習」でした。
結果はどうなったか。
投稿者はダブルワークを理由に、はっきり断りました。散々嫌味を言われましたが、最終的に免除されました。
一方、真面目に提出を続けた同僚たち。一児の母である同僚は、家事と育児の合間に睡眠時間を削って課題を提出し、ストレスで難聴になりました。人一倍怒鳴られていた男性の同僚は、円形脱毛症になりました。投稿者自身も、出勤するたびに頭痛が増えていったといいます。
法律から見ると、これは何にあたるのか
この職場で行われていたことを条文と突き合わせます。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 業務時間外に毎週1冊の読書と要約の提出を、期限つきで義務づけられた。 | 労働基準法32条 労働基準法37条 |
参加や実施が事実上強制され、不参加に不利益がともなうなら使用者の指揮命令下にある労働時間と評価され得る。その場合、賃金と割増賃金の支払義務が生じる。 |
| 課題を断ったところ、散々嫌味を言われた。 | 労働施策総合推進法 30条の2 |
業務上の必要性を欠く要求を断ったことへの継続的な嫌味は「精神的な攻撃」にあたり得る。 |
| 理不尽な理由で、他のオペレーターの前で怒鳴り散らされた。 | 労働施策総合推進法 30条の2 |
「頭悪いなあ」といった人格に関わる言葉を他の労働者の面前で浴びせる行為は「精神的な攻撃」。直接の対象者だけでなく周囲の就業環境も害される。 |
| 課題を続けた同僚が難聴を、怒鳴られていた同僚が円形脱毛症を発症した。 | 労働契約法5条 | 使用者は安全配慮義務を負う。複数の労働者に身体症状が現れている状況を放置すれば、義務違反として責任を問われ得る。 |
| 派遣元に相談したが、対策は講じられなかった。 | 労働者派遣法 労働施策総合推進法30条の2 |
派遣元・派遣先の双方にハラスメント防止の措置義務がある。相談を受けながら対応しないことは、措置義務を果たしたことにならない。 |
| 週1の課題に加え、毎日の業務にも別の課題が組み込まれていった。 | 労働施策総合推進法 30条の2 |
業務上の必要性を超えた負荷の追加は「過大な要求」に該当し得る。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この事例の法的な争点は、業務時間外の課題が「労働時間」にあたるかという点です。
労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を指します。判断の基準は、名目ではなく実態です。次の要素が揃うほど、労働時間と評価されやすくなります。
- 実施が義務づけられているか——この事例では「毎週期限が設けられており、必ず提出せねばなりませんでした」。
- 不参加に不利益があるか——断った投稿者は「散々嫌味を言われました」。
- 業務との関連性があるか——上司は「ビジネスで活かせる要約力の練習」と説明しています。つまり業務に資するものだと会社側が位置づけている。
- 成果物の提出と評価があるか——A4用紙1枚の提出、全員の前での発表、上司による講評。完全に業務の体裁です。
これらを総合すると、この課題は労働時間と評価される余地が十分にあります。週1冊の読書と要約に3時間かかるとすれば、月12時間の未払い労働が発生していた計算になります。
そして派遣という就業形態について。投稿者は派遣元に相談しましたが、「話だけは聞いてもらえましたが、対策は特に何も講じてもらえませんでした」。
これは問題です。ハラスメント防止の措置義務は、派遣元にも派遣先にも課されています。派遣元が「派遣先のことだから」と対応しないことは許されません。投稿者が推測しているとおり「頼りになる上司のことを無下に出来ない」という取引上の配慮があったのだとすれば、派遣労働者の保護より取引関係を優先したということになります。
善意の形をした支配を糾弾する
ここからは、事務局として率直に書きます。
この事例が扱いにくいのは、上司の行動が「善意」の形をしているからです。
読書を勧める。本を貸す。要約力を身につけさせる。どれも、言葉だけ取り出せば部下の成長を願う行為に見えます。実際、投稿者も当初は「勉強熱心な人だな」と受け止め、素直に読んで感想を伝えていました。
ではどこで線を越えたのか。「毎週」「必ず」「提出」「全員の前で発表」「講評」——この5つが揃った時点です。
勧めることと、課すことは違います。勧めるなら、断る自由が残ります。課すなら、断れば不利益が生じる。そして実際、断った投稿者は嫌味を言われました。この「嫌味」こそが、課題が任意ではなかったことの証拠です。
そして、この構造にはより根深い問題があります。課題の中身が「自分の興味のある本」である点です。
業務に必要な知識——観光地の情報、応対マニュアル、システムの操作——であれば、業務命令として合理性があります。ところがこの課題は、私的な読書という本来まったく自由な領域を、評価の対象に変えている。何を読み、何を感じ、どうまとめたかが上司の講評を受けるのです。これは業務指導ではなく、内面への介入です。
そして最も見過ごせないのが、この上司が「仕事ができる人」だったという点です。
投稿者はこう書いています。「事実、上司は仕事の経験年数が長く、仕事が出来る人だったので私は自分に能力がなく要領が悪いからダメなんだと思うようになっていました」。
有能さが、批判を封じている。派遣元が動かなかった理由も同じです。「長く勤め、唯一職場のことを把握しており頼りになる上司」だから、無下にできない。組織にとって有用な人物のハラスメントは、構造的に見逃されやすい。これは当サイトの他の事例でも繰り返し現れるパターンです。
そして結果を見てください。難聴。円形脱毛症。頭痛。3人の身体に、それぞれ症状が出ています。
とくに、家事と育児の合間に睡眠時間を削って課題を提出し、難聴になった同僚のことを考えてください。この人は真面目に取り組みました。上司の期待に応えようとした。そして耳が聞こえにくくなった。「要約力を身につけるため」の課題で、です。
皮肉なことに、はっきり断った投稿者だけが身体症状を免れています(頭痛はありましたが)。真面目に応じた人ほど深く損なわれた。これがこの事例の、最も苦い教訓です。
なぜ、この職場は転職を準備すべきなのか
この記事の判定を「転職の準備を推奨」としたのは、労働時間や賃金に極端な違法状態が記録されていないためです。しかし準備は始めるべきだと考えます。
第一に、負荷が加算されていく構造だからです。投稿者は書いています。「週1回の課題以外にも、毎日の業務に別の課題が組み込まれるようになり始め、とうとう私は限界を感じ、退職を決意しました」。一度受け入れた負荷は、減ることなく積み上がっていきます。
第二に、派遣元も動かなかったからです。通常なら、派遣という就業形態は「派遣元に相談できる」という利点があります。ところがこの事例では、相談しても対策は講じられませんでした。制度上の逃げ道が、機能していない。
第三に、身体症状が複数出ているからです。難聴、円形脱毛症、頭痛。3人に別々の症状が出ているということは、個人の体質の問題ではありません。職場の負荷が、身体に到達する水準にあるということです。
なお、この事例には結末があります。リーダーたちが次々に退職を考え相談し始めたところ、やっと派遣元が動き、上司に急遽面談を行ったのです。一人の相談では動かず、複数の離職が見えてから動いた。ここでも、当サイトで繰り返し見てきたパターンが現れています。
いま同じ状況にいる人が、今日のうちにやるべき3つのこと
- 1. 断ってよい。断った記録を残す
この体験談の投稿者ははっきり断り、免除されました。そして身体症状を免れています。業務時間外の課題は、業務命令として合理性がなければ従う義務はありません。断るときはメールなど記録の残る形で「業務時間外の対応が難しいため、課題の提出は控えさせていただきます」と伝えてください。断ったことで嫌味を言われたり評価を下げられたりしたなら、それは独立したハラスメント事案です。 - 2. 課題にかけた時間を記録する
断りきれない場合は、「いつ、何時間かけたか」を記録してください。事実上強制されている業務時間外の作業は、労働時間と評価され、賃金の対象になり得ます。課題の指示が出たミーティングの日付、提出期限、提出物のコピー、発表と講評が行われた記録——これらは「任意ではなかった」ことを示す材料です。 - 3. 派遣なら派遣元へ。動かないなら記録して外部へ
ハラスメント防止の措置義務は、派遣元にも派遣先にもあります。相談したのに対応されない場合は、相談した日付と対応内容を記録してください。「いつ、誰に、何を伝え、どう対応されたか」——これは派遣元の措置義務違反を示す材料になります。そのうえで、各都道府県労働局の総合労働相談コーナー(無料・予約不要)へ。難聴や円形脱毛症のような身体症状が出たら、必ず受診して診断書を取ってください。
この体験談に近いケース
この体験談に近いケースとして、あわせて読まれている記事です。
- 体育会系の根性論・精神論を押し付ける会社=「時代遅れブラック企業」。
- クラッシャー上司のストレスのはけ口にされる。うつ病、退職者が量産…。
- 人材派遣会社の成果主義と中間マージン搾取。窃盗・詐欺に走る技術者や殴り合いも…。
- 無能上司に限って嫉妬で理不尽な行動を取る。若くて優秀な新人に嫌がらせ!
この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。






・広告、犯罪に関する内容、他人が不快になる誹謗中傷コメントは、書き込みは禁止です(削除させていただきます)。
・投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権、(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利も含む)その他の権利につき(第三者に対して再許諾する権利を含みます。)、サイト運営者に対し、無償で譲渡することを承諾します。
・投稿者は、サイト運営者に対して、著作者人格権を一切行使しないことを承諾します。