激務・ブラック業界として有名な建設業(ゼネコン)。施工管理の長時間労働は過酷すぎて、過労で倒れることに…。

建設業の施工管理をやっていましたが、大変な仕事でした。普通の日で朝は6:30に出勤、夜は20:00時に退勤。屋外労働なので、夏はうだる暑さに冬は凍える寒さに耐えるだけでもかなりのストレスでした。
日中は現場を歩き回って危険がないか安全管理を行い、設計図通りに鉄筋が組まれているか、コンクリートの品質は大丈夫かなどの品質管理で動きっぱなし。
現場の作業自体は、7:00から16:00なので、作業員は16:00になると「お疲れ様っす」と言って帰って行きますが、施工管理はそこからが本番。「定時」が過ぎてから事務所に戻り、次の日のための段取りや記録のために撮影した写真のチェック、書類の作成などを行います。これで20:00に帰れればいい方ですが、日付が変わってから帰ることや、朝は日の出前に出勤することもしばしば。
休みはお情けで日曜だけ休ませてもらっているような状態でした。毎日12時間以上、週6日働いていればさぞお給料たんまりもらっていることだろうと思われるでしょうが、残業代は60時間分までしか出ませんでした。なので毎月60時間程度、賃金という対価がもらえない仕事をしていたことになります。
最終的には過労が原因で病気を患い、退職しました。
みんブラ事務局の所見:建設業の「仕方ない」は2024年4月に終わった。上限規制の猶予はもう無い。
この職場の何がブラックだったのか
施工管理という仕事の構造が、この体験談にはっきり表れています。現場の作業時間と、施工管理の労働時間が一致しないという構造です。
現場作業は7時から16時。作業員は16時になれば「お疲れ様っす」と帰っていきます。ところが施工管理はそこからが本番。事務所に戻って翌日の段取りを組み、撮影した写真をチェックし、書類を作成する。その前段として朝は6時30分に出勤し、日中は現場を歩き回って安全管理と品質管理を行っている。20時に帰れればいいほうで、日付が変わることも、日の出前に出勤することもある。そして休みは「お情けで日曜だけ」。
単純に計算します。6時30分から20時なら拘束13時間30分。休憩1時間を引いても実働12時間30分。所定8時間との差は4時間30分。週6日で月26日働けば、時間外労働は月110時間を超える計算になります。いわゆる過労死ラインとされる月80時間を、大きく超えています。
それでいて、残業代は60時間分までしか出ませんでした。投稿者本人が「毎月60時間程度、賃金という対価がもらえない仕事をしていたことになります」と正確に書いています。働いた時間の半分近くが、賃金の計算から消えていたわけです。
加えて屋外労働という条件があります。夏はうだる暑さ、冬は凍える寒さ。これは単なる「大変さ」ではなく、熱中症という具体的な労働災害のリスクを意味します。そして結末は、投稿者自身が書いているとおりです。「最終的には過労が原因で病気を患い、退職しました」。24歳で、です。
法律から見ると、これは何にあたるのか
この勤務実態を条文と突き合わせます。建設業で働く方には、必ず知っておいてほしい制度変更があります。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 朝6時30分から夜20時、日付をまたぐ日もある勤務を週6日。時間外労働は月110時間規模。 | 労働基準法32条 労働基準法36条 |
労働時間の上限は1日8時間・週40時間。36協定を結んでも時間外は原則月45時間・年360時間まで。特別条項をつけても単月100時間未満・複数月平均80時間以内が上限。建設業も2024年4月からこの上限規制の対象になった。 |
| 残業代が月60時間分で頭打ちにされ、超過分は支払われなかった。 | 労働基準法37条 労働基準法24条 |
時間外労働には実際に働いた全時間について25パーセント以上の割増賃金が必要。さらに月60時間を超える時間外労働には50パーセント以上の割増率が適用される(中小企業も2023年4月から適用)。60時間で打ち切る運用は、最も割増率が高くなる部分を丸ごと切り捨てていることになる。 |
| 休みは日曜だけ。週6日勤務が常態化していた。 | 労働基準法35条 | 毎週1回または4週4日の休日は確保されているが、週6日勤務で1日12時間半では、休日1日で回復できる疲労を超えている。建設業では週休2日の確保が国土交通省の施策としても推進されている。 |
| 時間外労働が月80時間を大きく超えていたが、医師の面接指導は行われていない。 | 労働安全衛生法 66条の8 |
時間外・休日労働が月80時間を超えた労働者には、事業者が医師による面接指導を受けさせる義務がある。 |
| 夏の酷暑・冬の厳寒のなかでの屋外作業が続いた。 | 労働安全衛生法 労働安全衛生規則 |
事業者には作業環境に応じた健康障害防止措置の義務がある。熱中症対策については2025年6月1日から罰則つきで義務化され、暑さ指数28度以上などの環境下での作業について、報告体制の整備・重篤化防止手順の作成・関係者への周知が事業者に求められている。 |
| 過労が原因で病気を患い、退職に至った。 | 労働者災害補償保険法 労働契約法5条 |
発症前1か月におおむね100時間、または2〜6か月平均でおおむね80時間を超える時間外労働があれば、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと評価される。使用者は安全配慮義務も負う。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
建設業で働く方に、最も重要な情報をお伝えします。時間外労働の上限規制は、建設事業には5年間の猶予が設けられていました。働き方改革関連法による上限規制は2019年4月(中小企業は2020年4月)から始まりましたが、建設事業・自動車運転の業務・医師については適用が先送りされていたのです。そして2024年4月1日から、建設業にも一般の上限規制が適用されました。
つまり、かつて「建設業だから仕方ない」と言われていた根拠は、すでに法的に消滅しているということです。災害時の復旧・復興事業という例外はありますが、通常の工事現場で月100時間を超える時間外労働を続けさせることは、罰則つきで違法になりました。「うちの業界は特別だから」は、もう通りません。
もうひとつ、金額の面で決定的に重要な点があります。月60時間を超える時間外労働の割増率は50パーセント以上です。大企業では以前から適用されていましたが、中小企業にも2023年4月から適用されました。この会社は「60時間分まで」で支給を打ち切っていましたが、これは最も単価の高い部分を、まるごと支払わずに済ませていたということです。偶然60時間で線を引いたとは考えにくい。
「業界の常識」を盾に若者を使い潰す構造を糾弾する
ここからは、事務局として率直に書きます。
この体験談には、暴言も暴力も出てきません。出てくるのは「業界だから仕方ない」という空気だけです。そして24歳の若者が、過労で病気になって辞めています。
私たちが最も引っかかったのは、「休みはお情けで日曜だけ休ませてもらっているような状態でした」という一文です。「お情け」「休ませてもらっている」。週1日の休日は労働基準法35条が定める最低限の義務であって、会社の温情ではありません。にもかかわらず、24歳の本人が「休ませてもらっている」と感じるところまで感覚が調整されている。これがこの業界の最も恐ろしい点です。法律が保障する最低ラインを、恩恵として受け取らせる。そこまで基準を下げてしまえば、待遇改善を求める発想そのものが出てこなくなります。
そして残業代60時間の壁です。会社は実際の労働時間を把握していました。把握していなければ「60時間まで」という線を引けません。つまりこの会社は、月110時間働かせていることを認識したうえで、支給額に蓋をしていたということです。知らなかったのではない。知っていて、払わなかった。
さらに言えば、施工管理という職種は建設業のなかでも構造的に長時間労働に追い込まれやすいポジションです。作業員が16時に帰ったあと、書類と段取りが残る。現場の進捗は天候にも左右される。この構造を放置したまま人を配置すれば、長時間労働は必然的に発生します。それは個人の段取りの問題ではなく、要員計画の問題です。そして要員計画を決められるのは、現場の一人ではなく会社です。
建設業は担い手不足が深刻だと言われ続けています。しかし、24歳の若者を過労で病気にして辞めさせている会社が人手不足を嘆くのは、順序が逆でしょう。入ってきた人を壊しているから、人が定着しないのです。
なぜ、この働き方は今すぐ変えるべきなのか
第一に、脳・心臓疾患のリスクが具体的な段階にあるからです。厚生労働省の労災認定実務では、発症前1か月におおむね100時間、または発症前2か月から6か月にわたり1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働があった場合、業務と発症との関連性が強いと評価されます。この職場は月110時間規模です。過労死ラインは比喩ではなく、行政が使っている実務基準です。実際にこの投稿者は、過労が原因で病気を患っています。
第二に、失っている金額が大きいからです。月60時間分が未払いだとして、時給2,000円換算・割増1.5倍(60時間超の部分)で計算すると月18万円、年間216万円。3年で650万円規模になります。未払い賃金の請求権の時効は当分の間3年ですから、記録さえあれば遡って請求できます。
第三に、いま業界の側が変わりつつあるという点です。2024年4月の上限規制適用に加え、国土交通省は建設業の週休2日確保を進めており、工期の設定にも規制がかかるようになってきました。つまり「まともな施工管理の職場」が現実に存在し、増えているということです。施工管理技士の資格と現場経験は、業界内で高く評価されます。同じ資格と経験を持って、労働時間を守る会社へ移るという選択肢は、以前よりずっと現実的になっています。
いま同じ状況にいる人が、今日のうちにやるべき3つのこと
- 1. 実際の労働時間を、自分の手で記録する
施工管理は直行直帰や現場常駐が多く、会社の記録が実態を反映していないことがほとんどです。毎日の出勤・退勤時刻をメモしてください。現場の入退場記録、朝礼の時刻、工事写真のExif(撮影日時)、施工日報や安全日誌、業務用スマートフォンの位置情報履歴、事務所のパソコンのログイン・ログオフ履歴は、いずれも実労働時間を裏づける強力な証拠になります。工事写真の撮影時刻は、あなたが何時に現場にいたかを客観的に示します。 - 2. 体調の変化を軽く見ない
過労による健康障害は、ある日突然来るのではなく前兆があります。血圧の上昇、動悸、頭痛、極端な倦怠感、眠れない、休日に何もする気が起きない。これらは日付つきで記録し、早めに受診してください。月80時間を超えているなら、医師の面接指導を申し出る権利があります(労働安全衛生法66条の8)。会社から言ってこなくても、こちらから申し出ることができます。夏場は熱中症にも注意してください。2025年6月からは事業者の熱中症対策が義務化されています。 - 3. 労働基準監督署へ。建設業はもう「例外」ではない
違法な長時間労働と割増賃金の不払いは労働基準監督署の申告対象です。繰り返しますが、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています。「業界だから」という言い訳は、監督署には通用しません。申告を理由とする不利益な取扱いは労働基準法104条2項で禁止されています。退職は、期間の定めのない雇用なら民法627条1項により申し入れから2週間で成立します。「工期の途中だから」は、あなたが残る法的な理由になりません。
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