トイレに行けたのは閉店後…事務員が薬を出す手伝いをしていた薬局

私は調剤薬局に調剤事務として勤務していました。そこは有限会社で小さい薬局でした。
まず私が勤務初日に言われたことが「社長が黒と言ったら、白でも黒って言ってね」と先輩に言われました。社長はたびたび薬局に視察に来ました。患者様がいようが社長が来たら社長の相手をするように言われました。
また、冬場に私が薬局が暖まるよう暖房を入れようとしたら「患者様がいない時はつけないで!社長に怒られる!」と言われ、つけたり消したりで結局寒かったです。患者様からも「ここって寒いわよね」と言われてしまいました。
致命的だったのは求人票に書いてあった休憩時間がとれないことでした。求人票には休憩時間1時間と書いてありましたが、実際は5〜10分とれていれば良い方でした。最悪お昼休憩できず、お弁当を食べたのは帰宅した夜の8時だったことが度々ありました。
お弁当はまだいいとして、トイレにいけないこともありました。というのも薬剤師が1人しかいないので、私達事務も先生の指示の下、薬を出す手伝いをしていたぐらいでした。なので薬剤師が粉薬を処方していると、私達も忙しくなります。すると自動的にトイレも行けなくなり、勤務中トイレに行けたのが閉店した後でした。
年末になり、事件が起きました。うちの薬局は配達があり、会社のオンボロな車で私達事務員が交代で運転していました。ある日社長が「誰が公用車に傷つけた?正直に名乗り出れば許すが、誰も名乗り出ない場合はボーナスカットだからな」と言ってきました。
慌てて職員一同で車のチェックをしたら、確かにこすった痕がついていました。誰も心当たりがないと言いました。私は配達には2回しか行ったことがなかったので、犯人から除外されました。皆で話し合った結果「誰も犯人じゃない」ということで社長に報告しました。社長の宣言通りボーナスは無しになりました。
給料の手取りが10万しかないのに、ボーナスまで無しにされ、この会社にいても未来が無いと思い、辞めてやりました。辞めた後は胃痛も膀胱炎にも足のしびれも治まりました。
みんブラ事務局の所見:調剤は薬剤師の独占業務である。事務員に計量や分包をさせることは薬剤師法19条に触れる。
事務員が薬を出す手伝いをすることは、薬剤師法に触れる
この体験談で最も重大な問題から取り上げます。
投稿者はこう書いています。
「薬剤師が1人しかいないので、私達事務も先生の指示の下、薬を出す手伝いをしていた」。
ここで薬剤師法19条をご覧ください。
薬剤師でない者は、販売または授与の目的で調剤してはならない。
これは薬剤師の独占業務を定めた条文です。
そして違反すれば3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、
あるいはその両方が科されます。
ここで整理が必要です。
どこまでが調剤かという線引きです。
厚生労働省の通知は薬剤師以外の者が行える業務として次のようなものを示しています。
- 納品された医薬品の棚への陳列
- 薬剤師の目の届く範囲でのピッキング(処方箋に基づく医薬品の取り揃え)
- 薬剤師の指示に基づく一包化された薬剤の数量確認
逆に薬剤師でなければできないことは、
- 処方箋の内容の確認と疑義照会
- 計量・混合などの調製行為
- 最終的な監査
- 患者への服薬指導
そして投稿者はこう書いています。
「薬剤師が粉薬を処方していると、私達も忙しくなります」。
粉薬は計量と分包を伴います。
これは調製行為です。
そのうえで、全体を確認します。
- 初日に「社長が黒と言ったら、白でも黒って言ってね」と言われた
- 患者がいても社長が来たら社長の相手をするよう言われた
- 暖房をつけると社長に怒られるため寒かった
- 患者からも「ここって寒いわよね」と言われた
- 求人票の休憩1時間に対し実際は5〜10分だった
- 弁当を食べたのが帰宅後の夜8時という日が度々あった
- トイレに行けたのは閉店後だった
- 薬剤師が1人で事務も薬を出す手伝いをしていた
- 公用車の傷の犯人が出ないため全員のボーナスがカットされた
- 手取りは10万円だった
- 辞めた後に胃痛・膀胱炎・足のしびれが治まった
法律から見ると
薬剤師法と休憩が中心の論点です。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 薬剤師でない事務員が、薬を出す作業を担当していた。 | 薬剤師法19条 29条 |
薬剤師でない者は販売等の目的で調剤してはならない。違反は3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。薬歴管理・服薬指導も薬剤師の業務である。 |
| 求人票の休憩1時間に対し、実際は5〜10分だった。 | 労働基準法34条 15条2項 職業安定法65条8号 |
6時間超で45分、8時間超で1時間の休憩が必要。相違があれば即時に契約を解除でき、虚偽の条件による募集は罰則の対象。 |
| 勤務中にトイレに行けない状態が常態化していた。 | 労働基準法34条3項 労働契約法5条 |
休憩は自由に利用させなければならない。排尿の抑制は膀胱炎等の健康被害を招き、安全配慮義務の問題となる。 |
| 冬季に暖房の使用が制限され、室温が確保されていなかった。 | 事務所衛生基準規則5条 労働安全衛生法23条 |
室温は18度以上28度以下になるよう努めることとされている(令和4年に下限を17度から18度へ改正)。患者からも指摘される室温は基準を満たしていない。 |
| 犯人が名乗り出ないことを理由に全員の賞与を不支給とした。 | 労働基準法91条 89条4号 |
減給の制裁は賃金総額の10分の1が上限。賞与の支給条件は就業規則に定めるべき事項であり、連帯責任による一律の不支給は合理性を欠く。 |
| 車両の損傷について、労働者に負担を求める姿勢を示していた。 | 労働基準法16条 24条 |
損害賠償額をあらかじめ定めることは禁止。賃金からの一方的な相殺もできない。車両の管理責任は事業主にある。 |
| 患者への対応より社長への対応を優先するよう指示していた。 | 薬機法 薬局並びに店舗販売業及び 配置販売業の業務を行う 体制を定める省令 |
薬局は業務を適正に行うための体制を整える義務を負う。患者対応を後回しにする運用は体制の適正を損なう。 |
| 薬剤師1人という体制で業務量を処理させていた。 | 労働契約法5条 薬機法5条 |
要員の確保は事業主の責任。薬局には調剤の業務に係る体制の基準があり、過重な体制は医療安全にも関わる。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この薬局を糾弾する
この記事の要点を順に述べます。
まず初日の言葉です。
「社長が黒と言ったら、白でも黒って言ってね」。
先輩が初日にこれを伝えたのです。
つまりそれがこの職場の前提だと教えている。
ここで考えてください。
薬局は医療の現場です。
そして誤りを指摘できることが安全を支えます。
処方の疑問、数量の違い、患者の訴え。
これらを言える職場でなければ、
事故が起きます。
次に休憩です。
求人票には1時間と書かれていました。
実際は5〜10分です。
そして「お弁当を食べたのは帰宅した夜の8時」。
つまり一日何も食べていないのです。
ここで労働基準法34条を確認します。
労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
そして3項があります。
使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
つまり与えるだけでは足りず、自由に使わせることまで求められています。
そしてトイレです。
「勤務中トイレに行けたのが閉店した後」。
ここをはっきり申し上げます。
これは健康被害に直結します。
証拠は投稿者自身の記述です。
「辞めた後は胃痛も膀胱炎にも足のしびれも治まりました」。
膀胱炎です。
排尿を我慢し続ければ細菌が増えます。
そして胃痛は食事を取れないことと緊張から。
足のしびれは長時間の立位からでしょう。
三つとも職場を離れたら治ったのです。
因果関係は明白でしょう。
そして暖房です。
ここも基準があります。
事務所衛生基準規則5条は、
室の気温が18度以上28度以下になるよう努めなければならないとしています。
令和4年に下限が17度から18度に引き上げられました。
患者から「ここって寒いわよね」と言われる室温は、
基準を満たしていないと見るべきです。
そして最後にボーナスです。
「誰が公用車に傷つけた?正直に名乗り出れば許すが、誰も名乗り出ない場合はボーナスカットだからな」。
これは連帯責任です。
ここを整理します。
第一に、傷の原因がわかっていません。
擦り傷は駐車場で他人につけられることもあります。
第二に、車両の管理責任は事業主にあります。
そして第三に、賞与を一律に止めることは制裁です。
労働基準法91条は減給の制裁に上限を置いています。
そして賞与の支給条件は就業規則に定めるべき事項です。
社長の一存で止められるものではありません。
そして薬剤師1人という体制に戻ります。
ここがすべての原因です。
順に見てください。
- 薬剤師が1人 → 調剤が追いつかない
- 追いつかない → 事務が手伝う
- 事務も忙しい → 休憩もトイレもなくなる
つまり人を増やせば解決するのです。
それをしなかった理由は人件費でしょう。
そしてその分のしわ寄せが資格の線を越えさせるところまで来ています。
ここは働く人の問題であると同時に、患者の安全の問題です。
調剤の誤りは健康被害につながります。
だからこそ薬剤師法が独占業務を定めているのです。
そして薬機法は薬局に対して業務を適正に行うための体制を整えることを求めています。
つまり人員の確保は労働法だけの問題ではありません。
最後に手取り10万円という数字を確認します。
資格の線を越える作業までさせられて、
休憩もトイレもなく、
賞与も止められて、
手取り10万円です。
ここまで整理すれば、
辞めた判断が正しかったことは明らかでしょう。
そして時効は当面3年です。
休憩が取れていなかった時間は労働時間ですから、
その分の賃金を請求する余地があります。
こういう職場は、今すぐ辞めていい
3つの理由を述べます。
- 1. 資格の線を越えさせる職場は、事故が起きたときに守ってくれない
薬剤師法19条は調剤を薬剤師の独占業務としています。万一事故が起きれば手伝った側にも説明が求められます。 - 2. 食事もトイレも我慢する働き方は、身体が壊れる
実際に胃痛・膀胱炎・足のしびれが出ています。そして辞めたら治りました。原因は職場にあったということです。 - 3. 連帯責任を使う経営者は、次も使う
原因を調べずに全員を罰するのは楽だからです。そして楽な方法は繰り返されます。
もし今、同じ状況にいるなら
- 1. 自分が行っている作業を、書き出す
ピッキングまでか、計量や分包に及んでいるかを整理してください。薬剤師でなければできない行為をさせられているなら、都道府県の薬務主管課が相談先です。 - 2. 休憩とトイレの記録を、日付で残す
「◯月◯日休憩0分、トイレ閉店後」という形で構いません。労働基準法34条違反を示す資料になります。体調の変化もあわせて書いてください。 - 3. 賞与の不支給は、就業規則を確認する
支給条件がどう定められているかを確認してください。労働基準法106条により就業規則は周知されるべきものです。相談先は労働基準監督署(休憩・賃金、匿名申告も可)です。
この体験談に近いケース
この体験談に近いケースとして、あわせて読まれている記事です。
- 休憩1〜2時間のはずが実質15分。休む場所すら用意しない会社。
- トイレの回数を数えられる職場。生理的な行為への過度な介入。
- ヤブ歯医者の裏話。消毒しない、歯を間違える、治療費架空請求。
- 従業員に課す罰金・ペナルティは違法。連帯責任という名の制裁。
この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。





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