男性は開封前に不採用、写真で絞り込み…始末書の書き直しで深夜まで

初めて就職した経営コンサルタント会社の話です。社長が男性でその他スタッフは全員女性でした。
女性のみを採用していますが、公にはそう公表できないので、募集するだけしてから、履歴書を男女別に振り分け、男性はその時点で不採用となります。次に出身大学や履歴書添付の写真で判断し、さらに半分以下に絞りこみをします。そこからテストをして面接をして採用されます。
入社するとすべてにおいてマニュアルが用意されており、そのマニュアル通りに進めなければ社長や上司の逆鱗に触れるという状態です。一言一句、マニュアルと同じようにしなければならないので、マニュアルを暗記する必要があり、暗記するまでまともに仕事ができないということになります。
またマニュアル通りにやらなければ何度も何度も繰り返しやり直しさせられます。たとえお客様が待っていても許されないのです。
あまりにもできないと、できないことについての始末書を書かなければなりません。この始末書の書き方も一言一句チェックされ、うまく書けていなければ、ずっと書き直しさせられ、そのせいで深夜まで会社に残らされるということがよくありました。
出勤して会社に入ると、外出の仕事がない限りは退勤まで一歩も会社から出られませんでした。昼食はアルバイトの子がお弁当屋さんやコンビニに買い出しに行くという決まりだったので、気晴らしに外食するなんて無理で、ずっと仕事をしながら昼食を食べる感じでした。
みんブラ事務局の所見:募集・採用で性別を理由に排除することは均等法5条違反。食べながらの昼食は休憩ではなく労働時間である。
履歴書を男女で振り分けた時点で、法律に反している
この体験談で最初に取り上げるのは採用の入口です。
投稿者はこう書いています。
「女性のみを採用していますが、公にはそう公表できないので、募集するだけしてから、履歴書を男女別に振り分け、男性はその時点で不採用となります」。
これは男女雇用機会均等法5条に正面から反します。
条文はこう定めています。
事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
ここで注意していただきたいのは「均等な機会」という言葉です。
結果として女性ばかりが採用されることが問題なのではありません。
入口で性別を理由に切り捨てることが問題なのです。
そして厚生労働省の指針は禁止される具体例を挙げています。
- 募集・採用の対象から男女いずれかを排除すること
- 募集・採用にあたって男女で異なる条件を付けること
- 選考の方法や基準を男女で異なるものとすること
- 男女のいずれかを優先して採用すること
この会社は一つ目に該当します。
そして「公にはそう公表できない」という一文が決定的です。
会社は違法だと分かっていたのです。
分かったうえで募集だけは男女に出し、書類の段階で捨てていた。
これは応募した男性の時間を奪う行為でもあります。
そのうえで、全体を確認します。
- 経営コンサルタント会社で社長のみ男性、他は全員女性だった
- 履歴書を男女別に振り分け、男性はその時点で不採用にしていた
- 出身大学と履歴書の写真で半分以下に絞り込んでいた
- すべての業務にマニュアルがあり、一言一句そのとおりにすることを求められた
- 暗記するまでまともに仕事ができない状態だった
- 客を待たせてもやり直しを命じられた
- できないと始末書を書かされた
- 始末書の書き直しで深夜まで残された
- 退勤まで一歩も会社から出られなかった
- 昼食は仕事をしながら食べていた
法律から見ると
採用差別と休憩の自由利用がこの記事の二本柱です。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 応募書類を男女で振り分け、男性を書類段階で不採用にしていた。 | 男女雇用機会均等法5条 同法施行規則 指針(平成18年厚労省告示614号) |
募集及び採用について性別にかかわりなく均等な機会を与える義務。対象から男女いずれかを排除することは明確に禁止されている。 |
| 表向きは男女を募集しながら、実際は女性のみを採用していた。 | 男女雇用機会均等法29条 30条 |
厚生労働大臣は報告徴収・助言・指導・勧告ができる。勧告に従わない場合は企業名を公表されることがある。 |
| 履歴書添付の写真で選考の絞り込みを行っていた。 | 職業安定法5条の5 指針(平成11年労働省告示141号) |
業務の目的の達成に必要な範囲で個人情報を収集するのが原則。容姿による選別は公正な採用選考の考え方に反するとされる。 |
| 退勤まで一歩も外に出られず、昼食も仕事をしながら取らせていた。 | 労働基準法34条3項 | 使用者は休憩時間を自由に利用させなければならない。外出を一律に禁止することは原則として認められない。作業をしながらの食事は休憩ではなく労働時間である。 |
| 客を待たせても、マニュアルどおりになるまでやり直させていた。 | 労働契約法3条4項 5条 |
権利の行使にあたっては信義に従い誠実に行う義務。生命・身体等の安全に必要な配慮をする義務も負う。合理性を欠く反復命令は業務の範囲を超え得る。 |
| 始末書の書き直しを命じ、深夜まで会社に残らせていた。 | 労働基準法32条 36条 37条 |
1日8時間・週40時間を超える労働には36協定が必要。時間外は25%以上、午後10時以降はさらに25%以上の割増賃金。命じられて残った時間は労働時間である。 |
| 始末書を書かせること自体を制裁として運用していた。 | 労働基準法89条9号 労働契約法15条 |
制裁の種類・程度は就業規則に記載しなければならない。客観的に合理的な理由を欠く懲戒は権利濫用として無効となる。 |
| 職場全体で、萎縮を前提とした指導が常態化していた。 | 労働施策総合推進法30条の2 | 優越的な関係を背景とした言動で就業環境を害することは禁止。事業主には相談体制の整備義務がある(中小企業も令和4年4月から義務)。 |
| 違法と認識しながら募集を出し、応募者に無駄な応募をさせていた。 | 職業安定法65条8号 5条の3 |
虚偽の広告・条件で募集を行った者は罰則の対象。労働条件は正確かつ最新の内容で明示する義務がある。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この会社を糾弾する
この記事でとくに申し上げたいことを順に述べます。
まず採用の入口です。
この会社は男性を採る気がないのに男性からも応募を受けていたのです。
応募する側は履歴書を書き、写真を撮り、切手を貼って送ります。
それが開封の前に決まっていたのです。
これは単なる不採用ではありません。
時間と費用を奪ったのです。
次に写真による絞り込みです。
厚生労働省は公正な採用選考の考え方を示しています。
そこでは応募者の適性と能力のみを基準とすることが求められます。
そして本人に責任のない事項を選考に用いないことも求められます。
容姿はまさにそれです。
ちなみに令和3年4月から、
厚生労働省の新しい履歴書の様式例では、
性別欄が任意記載となり、
通勤時間・扶養家族数・配偶者の欄が削除されました。
つまり国の側も入口の選別を減らす方向に動いています。
次にマニュアルです。
誤解のないよう申し上げますが、
マニュアルがあること自体は悪ではありません。
品質をそろえるための手順書はむしろ働く側を守ります。
問題は運用です。
「一言一句」という要求と、
「お客様が待っていても許されない」という優先順位です。
手順は客のためにあります。
客を待たせてまで守る手順は、
目的と手段が入れ替わっているのです。
そして始末書です。
ここは重要なので丁寧に述べます。
始末書は就業規則上の制裁として定められていることがあります。
その場合労働基準法89条9号により、
制裁の種類と程度を就業規則に記載しなければなりません。
記載がなければ制裁として課すことはできません。
そして労働契約法15条はこう定めます。
客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない懲戒は、その権利を濫用したものとして無効とする。
マニュアルを暗記していないことが懲戒事由になるか。
常識で考えてください。
そして何より書き直しのために深夜まで残された点です。
ここは労働時間の問題です。
会社の指示で残った時間は労働時間です。
ですから割増賃金の対象です。
始末書だから無給、という理屈は成り立ちません。
昼食を食べながら仕事をしていた時間は、休憩ではない
この記事で最もお伝えしたい条文があります。
労働基準法34条3項です。
使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない。
短い条文ですが意味は大きいものです。
投稿者はこう書いています。
「出勤して会社に入ると、外出の仕事がない限りは退勤まで一歩も会社から出られませんでした」。
この外出禁止は原則として認められません。
行政の解釈では事業場内で自由に休息できることが確保されていれば、
外出に許可制をとること自体は直ちに違法とされない場合があります。
ですがここで重要なのは後半です。
「ずっと仕事をしながら昼食を食べる感じでした」。
これは休憩ではありません。
休憩とは労働から完全に解放されることを保障された時間をいいます。
ですから電話番も来客対応も休憩ではありません。
いわゆる手待時間と呼ばれ、労働時間とされます。
つまりこの方は、
休憩を取らずに働いていたことになります。
そして労働基準法34条1項はこう定めます。
- 労働時間が6時間を超える場合 → 少なくとも45分
- 労働時間が8時間を超える場合 → 少なくとも1時間
これを労働時間の途中に与えることが必要です。
与えなければ6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。
深夜まで残された日を考えれば、
この方の労働時間は1日8時間を大きく超えていたはずです。
ならば1時間の休憩が必要でした。
そしてその1時間は、
仕事から離れて過ごせる1時間でなければなりません。
こういう会社は、今すぐ辞めていい
この職場を離れる判断は正しいものです。
理由を三つ挙げます。
- 入口から法律を守る気がない。 違法と認識しながら男女別に振り分けていた。入社後に法令が守られる期待は持てない
- 手順が目的化している。 客を待たせてでも一言一句を守らせる運用は、働く側の判断力を育てない
- 休憩が存在しない。 外に出られず食べながら働く毎日は、心身の回復を奪い続ける
そしてこの会社に応募して落とされた男性の方々にも触れます。
その方々は理由を知る機会がありません。
「ご期待に沿えず」という一文で終わったはずです。
ですが能力の問題ではなかったのです。
採用差別の厄介さはここにあります。
落とされた側には見えない。
だからこそ中にいた人の証言に価値があるのです。
この投稿はその意味で貴重です。
そして採用の場面での相談先を挙げておきます。
都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。
ここは均等法に関する相談と紛争解決の援助を担う窓口です。
そして働いている人からの情報提供も受け付けています。
労働基準監督署ではないという点にご注意ください。
均等法は労働局が所管しています。
一方で休憩・残業代・労働時間は労働基準監督署です。
この会社のように両方の問題がある場合は、
両方に相談して構いません。
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