休みの日も朝7時半からチラシ配り…固定残業代を上限として運用する会社

今話題の裁量労働制を悪い意味で先取りしていたブラック会社でした。
朝8時30分に出勤して、業務が終わるのが21時。そこから片づけや翌日の準備等を行い、22時半頃に職場を出ていました。
みなし残業として時間外手当が一律支給されているという仕組みでしたが、実態よりもかなり少なかったため、サービス残業が常態化していました。
更に週に1回会議があったのですが、この会議の日時調整がうまくできず、私の休暇日の午前中に会議がある有様でした。しかもこの日は朝から7時30分集合で駅前にて自社のチラシ配りをするというスケジュールが組まれていましたので、私は毎週休みの日にいつもよりも早く起きてチラシ配りをした後に会議に参加するという状態でした。
これでも会社を辞めずに仕事を続けられていたのは、やはりお客様に喜んでいただけるから、という社会的使命感のようなものが大きかったです。
しかしこの会社は経営状況が悪化した結果、採算がとれていた部門1つを経費削減・人件費削減を狙って、いきなり廃止してしまいました。恐らく上層部の方は「選択と集中」のつもりだったのでしょう。お客様に対する説明責任も放棄したような暴挙、従業員を人とも思わないような急激なスリム化を、他部門とはいえ内部から一部始終を見ており、「この会社に未来は無い」と確信を得たため、転職活動を進めることにしました。
今はこの時の転職活動でご縁があった普通の会社に所属することができています。
みんブラ事務局の所見:固定残業代は上限ではなく前払いである。定めた時間を超えた分は必ず支払わなければならない。
固定残業代は、三つの条件を満たさなければ有効にならない
この体験談で最も争点になる部分から取り上げます。
投稿者はこう書いています。
「みなし残業として時間外手当が一律支給されているという仕組みでしたが、実態よりもかなり少なかったため、サービス残業が常態化していました」。
ここを整理します。
固定残業代(みなし残業代)という仕組み自体は違法ではありません。
一定額をあらかじめ割増賃金として支払うことは認められます。
ただし三つの条件があります。
- 通常の労働時間の賃金にあたる部分と、割増賃金にあたる部分が明確に区分できること
- 固定残業代が何時間分の割増賃金にあたるかが明らかであること
- その時間を超えた分は追加で支払うこと
そして三つ目がこの記事の核心です。
固定残業代は上限ではありません。
前払いです。
つまり30時間分払っているなら、31時間目からは別に払うのです。
投稿者は「実態よりもかなり少なかった」と書いています。
つまり超えた分が払われていないのです。
そして令和6年4月からは、
固定残業代を採用する場合、その旨と時間数、超過分の支払いについて労働条件通知書に記載することが求められています。
そのうえで、全体を確認します。
- 8時30分出勤だった
- 業務終了は21時だった
- 片づけと翌日の準備を行い22時半に退勤した
- みなし残業として一律の時間外手当が支給されていた
- 実態よりかなり少なく、サービス残業が常態化していた
- 週1回の会議が休暇日の午前中に入っていた
- その日は朝7時30分集合で駅前のチラシ配りもあった
- 毎週休みの日に早起きして出ていた
- 採算が取れていた部門がいきなり廃止された
- その後転職し、普通の会社に所属している
法律から見ると
固定残業代と休日が中心の論点です。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 固定残業代の対象時間を超えた分が支払われていなかった。 | 労働基準法37条 24条 |
固定残業代は上限ではなく前払いである。定めた時間を超えた分は別に支払う義務があり、不払いは30万円以下の罰金。 |
| 固定残業代が何時間分にあたるかの明示が確認できない。 | 労働基準法15条 同施行規則5条 |
通常の賃金部分と割増部分が判別できることが要件。令和6年4月からは固定残業代の時間数と超過分の支払いの明示が求められている。 |
| 業務終了後の片づけ・翌日の準備が労働時間に算入されていない。 | 労働基準法32条 労働安全衛生法66条の8の3 |
業務に必要な準備・後片づけは労働時間。客観的方法による労働時間の把握が事業者の義務である。 |
| 休暇日の午前中に会議が設定されていた。 | 労働基準法39条5項 35条 |
年休は労働義務のある日を休む制度であり会議への出席を求めれば年休が成立しない。休日であれば休日労働となる。 |
| 休日に朝7時30分集合でのチラシ配りが組まれていた。 | 労働基準法35条 36条 37条 |
休日労働には36協定と35%以上の割増が必要。毎週繰り返されていれば休日が確保されていない。 |
| 8時30分から22時30分という14時間の拘束が常態化していた。 | 労働基準法32条 36条6項 34条 |
36協定なしの時間外労働は違法。特別条項でも単月100時間未満が上限で、8時間超なら1時間以上の休憩が必要。 |
| 裁量労働制を名乗る場合、要件を満たしているかが問題となる。 | 労働基準法38条の3 38条の4 |
専門業務型は対象業務が限定され、令和6年4月から本人同意が必要となった。企画業務型は労使委員会の決議と本人同意が要る。 |
| 裁量労働制でも深夜・休日の割増賃金は免除されない。 | 労働基準法38条の3 37条4項 35条 |
みなされるのは労働時間の長さだけであり、深夜割増と休日割増は別に発生する。健康・福祉確保措置も要件である。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この会社を糾弾する
この記事の要点を順に述べます。
まず拘束時間です。
8時30分に出勤し22時30分に出る。
14時間です。
そして21時に業務が終わってから1時間半があります。
投稿者はこう書いています。
「そこから片づけや翌日の準備等を行い」。
ここをはっきり申し上げます。
片づけも準備も労働時間です。
これは争いのないところです。
判例は業務に必要な準備行為や後始末を労働時間としています。
次にみなし残業です。
ここが最も多い誤解です。
会社はしばしばこう説明します。
「みなし残業だからいくら残業しても同じ」。
これは誤りです。
もう一度整理します。
固定残業代とは一定時間分の割増賃金をあらかじめ払っておく仕組みです。
たとえば30時間分と定めた場合。
- 残業が20時間 → 30時間分もらえる
- 残業が30時間 → 30時間分
- 残業が50時間 → 30時間分+20時間分
つまり超えた分は必ず出るのです。
そしてこの会社では出ていなかった。
投稿者の拘束は14時間です。
休憩1時間を引いても13時間。
所定8時間を超える5時間が毎日の時間外です。
月20日で100時間になります。
これは36協定の特別条項でも上限に達する水準です。
そしてこの記事の核心に入ります。
休暇日の会議です。
「この会議の日時調整がうまくできず、私の休暇日の午前中に会議がある有様でした」。
ここを分解します。
まず休暇日に会議を入れることの意味です。
年次有給休暇は労働義務のある日を休む制度です。
そこに出席を求めるのであれば、
年休を取ったことになりません。
そして所定の休日であれば休日労働です。
さらに深刻なのがその先です。
「この日は朝から7時30分集合で駅前にて自社のチラシ配りをするというスケジュールが組まれていました」。
つまり休みの日に朝7時30分です。
そして投稿者はこう書きます。
「毎週休みの日にいつもよりも早く起きてチラシ配りをした後に会議に参加するという状態」。
毎週です。
ここまで整理すれば見えてきます。
休日が存在していません。
労働基準法35条は毎週少なくとも1回の休日を義務づけています。
その1回がチラシ配りと会議で埋まっているのです。
そして最後に部門の廃止です。
投稿者はこう書いています。
「採算がとれていた部門1つを経費削減・人件費削減を狙って、いきなり廃止してしまいました」。
ここで注目すべきは「採算がとれていた」という点です。
赤字部門の整理なら説明がつきます。
ですが黒字の部門を切ったのです。
そして「お客様に対する説明責任も放棄した」と書かれています。
ここでこの方が何を見ていたかを考えてください。
この方が働き続けた理由は「お客様に喜んでいただけるから」でした。
そしてそのお客様が切り捨てられたのです。
働く理由が失われました。
そして裁量労働制という言葉に戻ります。
投稿者は「悪い意味で先取りしていた」と書いています。
ここで本来の制度を整理しておきます。
裁量労働制には二種類あります。
専門業務型は研究開発、情報処理システムの設計、記事の取材編集、デザイナー、プロデューサーなど限られた業務が対象です。
企画業務型は事業の運営に関する企画、立案、調査及び分析の業務です。
そしていずれも手続きが重いのです。
- 労使協定または労使委員会の決議
- 本人の同意(専門業務型は令和6年4月から必要になった)
- 健康・福祉確保措置
- 苦情処理措置
- 労働基準監督署への届出
そして最も誤解されている点を申し上げます。
裁量労働制でも深夜割増と休日割増は発生します。
みなされるのは労働時間の長さだけです。
午後10時から午前5時に働けば25%以上、
休日に働けば35%以上が必要です。
つまり休日のチラシ配りには割増賃金が発生するのです。
そして裁量という言葉の意味です。
裁量とはいつ働くかを自分で決められることです。
ところがこの職場では、
8時30分に出勤し、休日の7時30分に集合していました。
裁量がありません。
そしてこの方の結末を確認します。
「今はこの時の転職活動でご縁があった普通の会社に所属することができています」。
「普通の会社」という言葉が重い。
特別に良い会社ではありません。
普通です。
つまり14時間拘束も、休日のチラシ配りも、普通ではなかったのです。
そしてもう一点。
この方が長く勤めた理由は「お客様に喜んでいただけるから」でした。
これは健全な動機です。
ですがその動機が会社に利用されていたとも言えます。
やりがいのある仕事ほど条件の悪さが見えにくくなります。
そして会社が顧客を切り捨てたとき、
この方はすぐに判断できました。
それは働く理由を自分で把握していたからでしょう。
こういう会社は、今すぐ辞めていい
3つの理由を述べます。
- 1. 固定残業代を上限として運用する会社は、時間を管理しない
いくら働いても同じなのですから、時間を把握する動機がありません。そして把握しなければ減りません。 - 2. 休日が毎週埋まるなら、回復できない
平日は14時間拘束です。そして休日は朝7時30分からです。身体を休める時間が設計に入っていません。 - 3. 黒字部門を説明なく切る会社は、次に何をするかわからない
採算が取れていたのに廃止したのです。基準が読めません。投稿者が「この会社に未来は無い」と判断したのは妥当です。
もし今、同じ状況にいるなら
- 1. 固定残業代が何時間分か、確認する
労働条件通知書と給与明細を見てください。時間数の記載がなければそもそも固定残業代として有効と認められない可能性があります。その場合全額が通常の賃金と扱われます。 - 2. 出退勤の時刻を、毎日記録する
片づけと準備の時間も含めてください。入退館の記録、パソコンのログ、施錠の担当が有力です。時効は当面3年ですから退職後でも請求できます。 - 3. 休日の業務は、必ず記録に残す
チラシ配りも会議も業務です。日付、集合時刻、終了時刻を書いてください。休日労働には35%以上の割増が必要です。相談先は労働基準監督署(匿名申告も可)です。
この体験談に近いケース
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- 「残業は原則禁止」で仕事は減らない。申請制の限界。
- 月残業200時間という過酷な体験談。もちろん残業代はゼロ。
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- 有給休暇が取れない・拒否する違法ブラック企業の実態。
この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。





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