アスベストまみれで天井裏へ…単価は相場の半分、支払いは借金で手渡し

社員でもない、アルバイトでもない、外注でもない、履歴書もいらない会社でした。1人親方でもないので屋号もありません。
1人親方なら1現場25000円が相場ですが、もらえるのは1現場12000円でした。確定申告は自分でやります。業務請負という形でした。
支払が遅れることがよくありました。どうしてもお金が欲しいと頼むと、無人契約機でお金を借りて「はい」と手渡しでした。
業種は空調メンテナンスです。エアコンの分解洗浄や修理、吸排気ダクトやファンの清掃などをやります。なかでもダクトの清掃はきつかったです。
夜になると、だいたい店の中はネズミやゴキブリの世界へと変貌します。天井裏などはネズミ、ゴキブリのパラダイスです。アスベストやグラスウールまみれになりながら、ネズミの糞を払いのけながら、足場の悪い天井裏を移動し、ダクトに45センチ角の開口を開け、油まみれの中に入り、掃除をします。ほぼ寝そべって作業をします。
30センチ×30センチ、幅40センチ×高さ25センチあたりのダクトになると、閉所恐怖症じゃなくても怖くなってきます。
作業服の洗濯が大変です。苛性ソーダで洗濯していました。だいたい閉店時間にやるので、夜勤がすごく多いです。作業時間は作業が終わるまでです。昼夜昼夜と連ちゃんすることもよくありました。
みんブラ事務局の所見:石綿のある場所での作業には事前調査・特別教育・保護具が義務づけられている。潜伏期間は数十年に及ぶ。
アスベストのある場所での作業には、厳格な手続きが定められている
この体験談で最も深刻な記述から取り上げます。
投稿者はこう書いています。
「アスベストやグラスウールまみれになりながら、ネズミの糞を払いのけながら、足場の悪い天井裏を移動し」。
アスベストという言葉が出てきます。
ここをはっきり申し上げます。
これは極めて重大です。
アスベスト(石綿)は中皮腫や肺がんの原因となる物質です。
そして潜伏期間が長いのが特徴です。
20年から40年経ってから発症することがあります。
つまりいま何ともなくても安心できないのです。
そのため石綿障害予防規則が定められています。
主な内容を挙げます。
- 石綿等の使用の有無の事前調査(令和5年10月から有資格者による調査が必要)
- 調査結果の記録と3年間の保存
- 作業計画の作成
- 石綿作業主任者の選任
- 特別教育の実施
- 呼吸用保護具と作業衣の使用
- 石綿健康診断(6か月以内ごとに1回)
この現場でそのいずれかが行われた形跡は読み取れません。
そのうえで、全体を確認します。
- 社員でもアルバイトでも外注でもないと説明されていた
- 履歴書も屋号もなかった
- 1現場12000円で相場は25000円だった
- 確定申告は自分で行っていた
- 支払いが遅れることがよくあった
- 頼むと無人契約機で借りて手渡しされた
- 業種は空調メンテナンスだった
- 天井裏はネズミとゴキブリの状態だった
- アスベストやグラスウールまみれで作業した
- 45センチ角の開口からダクトに入り寝そべって清掃した
- 30センチ角のダクトもあった
- 作業服は苛性ソーダで洗濯していた
- 夜勤が多く、昼夜連続もよくあった
法律から見ると
石綿と労働者性が中心の論点です。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 石綿のある場所での作業に、必要な措置が確認できない。 | 石綿障害予防規則 労働安全衛生法22条 |
事前調査、作業計画、石綿作業主任者の選任、特別教育、呼吸用保護具の使用が定められている。令和5年10月から有資格者による事前調査が必要。 |
| 石綿にばく露するおそれのある業務に従事していた。 | 石綿障害予防規則40条 41条 |
6か月以内ごとに1回の石綿健康診断が必要。健康診断個人票は40年間保存とされ、離職後も健康管理手帳の交付を受けられる場合がある。 |
| グラスウールを含む粉じん環境で保護具の使用が確認できない。 | 粉じん障害防止規則 労働安全衛生規則593条 |
粉じん作業では呼吸用保護具の備付けと使用が求められる。特別教育も定められている。 |
| ダクト内という狭あいな空間で単独作業を行っていた。 | 労働安全衛生規則 酸素欠乏症等防止規則 |
換気の不十分な閉塞空間では酸素欠乏や有害ガスの危険がある。作業主任者の選任、換気、監視人の配置が求められる場面がある。 |
| 契約の形態が「業務請負」とされ、労働者性が争われ得る。 | 労働基準法9条 (労働者性の判断基準) |
諾否の自由、指揮監督の程度、時間的場所的拘束、代替性、報酬の労務対償性で判断される。労働者と認められれば労基法と労災保険が適用。 |
| 報酬の支払いが遅れることが常態化していた。 | 労働基準法24条2項 フリーランス・事業者間 取引適正化等法4条 |
労働者なら毎月1回以上一定期日に支払う義務。フリーランスなら給付を受けた日から60日以内のできる限り短い期間内に支払う義務がある。 |
| 同種の作業の相場の半分以下の報酬が設定されていた。 | 下請代金支払遅延等防止法4条 独占禁止法2条9項5号 |
買いたたきは禁止されている。取引上の優越的地位を利用した著しく低い対価の設定は優越的地位の濫用にあたり得る。 |
| 夜勤と昼勤が連続する勤務が繰り返されていた。 | 労働基準法32条 35条 労働時間等設定改善法2条 |
労働者であれば1日8時間・週40時間と週1日の休日が適用。勤務間インターバルの確保も事業主の努力義務とされている。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この会社を糾弾する
この記事はまず契約の性質から整理します。
投稿者の書き出しが象徴的です。
「社員でもない、アルバイトでもない、外注でもない、履歴書もいらない会社でした。1人親方でもないので屋号もありません」。
ここを読んでください。
どれでもないのです。
ですが働いているのです。
法律上この状態は存在しません。
あるのは労働者か事業者かのどちらかです。
そしてそれを決めるのは契約の名称ではありません。
実態です。
判断の目安を挙げます。
- 仕事の依頼を断る自由があるか
- 作業のやり方を指示されるか
- 時間と場所が拘束されるか
- 自分の代わりに他人を出せるか
- 道具や材料を誰が用意するか
この件では現場が指定され、閉店時間に入り、作業が終わるまで拘束されるのです。
労働者性が認められる余地は大きいと考えられます。
そして認められれば労災保険が適用されます。
これが決定的に重要です。
理由はアスベストです。
次にその点を述べます。
投稿者がしていた作業を整理します。
- 天井裏を移動する
- ダクトに開口を開ける
- 中に入って寝そべって掃除する
ここで天井裏とダクトという場所を考えてください。
古い建物では吹付け石綿や石綿含有保温材が使われていることがあります。
そしてその多くは天井裏や設備の周囲にあります。
つまり最もばく露の危険が高い場所で作業していたのです。
そして寝そべっています。
顔が床面に近いのです。
堆積した粉じんを直接吸い込む姿勢です。
ここで石綿障害予防規則が求めることを思い出してください。
事前調査です。
建築物の解体や改修を行うときは、
石綿の有無を調べることが義務です。
そして令和5年10月からは、
建築物石綿含有建材調査者など有資格者による調査が必要となりました。
この現場にそれがあったでしょうか。
投稿者は「アスベストまみれ」と書いています。
つまり何の措置もなかったと読めます。
次に報酬です。
1現場12000円。
相場は25000円。
半分以下です。
そして支払いも遅れる。
ここで最も異様な記述が出てきます。
「どうしてもお金が欲しいと頼むと、無人契約機でお金を借りて『はい』と手渡しでした」。
つまり支払う原資がないのです。
そして借りて払っている。
これは事業として成立していない状態です。
そしてそのしわ寄せが現場に来ています。
安い単価、遅れる支払い、保護具のない作業。
すべてつながっているのです。
そしてネズミの糞という記述にも触れておきます。
これは不快さの話ではありません。
感染症のリスクです。
げっ歯類の排泄物にはレプトスピラ、ハンタウイルス、サルモネラなどの病原体が含まれることがあります。
そして乾燥した糞が舞い上がって吸い込むことで感染する経路も知られています。
投稿者は「払いのけながら」と書いています。
つまり舞い上がるのです。
そして寝そべっています。
ここでも呼吸用保護具が必要です。
そして作業服の洗濯です。
「苛性ソーダで洗濯していました」。
苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)は強アルカリです。
皮膚に触れれば化学熱傷を起こします。
そして目に入れば失明の危険があります。
本来なら会社が作業衣を支給し、洗濯まで行うべきものです。
石綿障害予防規則も作業衣の持ち帰りを禁じ、事業者が洗濯することを前提としています。
つまり個人が自宅で洗うという運用自体が誤りです。
そして家族へのばく露という問題も生じます。
そしてこの記事を読む方へ重要なことを申し上げます。
石綿健康管理手帳という制度があります。
これは石綿を取り扱う業務に一定期間従事した人が、
離職後も無料で健康診断を受けられる制度です。
申請先は都道府県労働局です。
そして在職中か離職後かを問いません。
要件は従事した期間や胸部の所見などいくつかの区分があります。
ですからまずは相談することです。
そして石綿による疾病は労災保険の対象です。
さらに石綿健康被害救済法により、
労災の時効が過ぎた場合や労働者でなかった場合にも給付の道があります。
つまり「業務請負だったから無理」とは限らないのです。
だからこそ働いた現場と時期の記録が決定的に重要になります。
そしてダクトという空間にも一言。
30センチ角のダクトに入るのです。
ここには三つの危険があります。
- 換気が不十分で酸素が薄くなる
- 異常が起きても自力で出られない
- 外から見えないため発見が遅れる
ですから本来は監視人を置くことが求められます。
そして換気と連絡手段です。
投稿者は「閉所恐怖症じゃなくても怖くなってきます」と書いています。
この恐怖は正常な反応です。
こういう働き方は、続けなくていい
3つの理由を述べます。
- 1. 石綿のばく露は、後から取り返せない
潜伏期間は20年から40年です。いま症状がなくても意味がありません。ばく露を止めることが唯一の対策です。 - 2. 単価が半分では、安全に投資できない
1現場12000円から保護具や事前調査の費用は出ません。安さと危険はセットです。本人の努力では変えられません。 - 3. 借金で支払う会社は、続かない
無人契約機で借りて払っているのです。いつ払えなくなってもおかしくありません。そして労災が起きたときの補償も期待できません。
もし今、同じ状況にいるなら
- 1. 作業した現場と日付を、必ず記録する
建物名、所在地、作業内容、日付を残してください。石綿による疾病は発症までに数十年かかります。どこでいつ働いたかが労災認定の決め手になります。 - 2. 労働者かどうかは、実態で判断される
「業務請負」という名称は決め手になりません。現場と時刻の指定、作業手順の指示、道具の提供を記録してください。労働者と認められれば労災保険が適用されます。 - 3. 相談先は、複数ある
石綿・粉じん・閉塞空間の安全は労働基準監督署の安全衛生部門。労働者性や未払いも同じ窓口です。事業者として扱われる場合はフリーランス・トラブル110番(無料)が利用できます。
この体験談に近いケース
この体験談に近いケースとして、あわせて読まれている記事です。
- フリーランスの業務委託で時給300円。契約解除までの全記録。
- 2年で10人が労災。労働災害が多すぎる工場の危険な実態。
- 給料未払いで悩まされた体験談。請求方法とどこに相談するか。
- SES単価40万の裏側。中抜き搾取で単価が見えない構造。
この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。





・広告、犯罪に関する内容、他人が不快になる誹謗中傷コメントは、書き込みは禁止です(削除させていただきます)。
・投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権、(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利も含む)その他の権利につき(第三者に対して再許諾する権利を含みます。)、サイト運営者に対し、無償で譲渡することを承諾します。
・投稿者は、サイト運営者に対して、著作者人格権を一切行使しないことを承諾します。