社内システムを利用して、他社員に実家のお米を販売。業務上不適切とされ無期限休職。

結婚前に勤めていた会社での出来事です。
会社にて全従業員がスケジュール管理や業務連絡を行っていたプログラムにおいて、長年勤務しており経営者も評価するある女性従業員から複数の従業員にメールがきました。それは、その女性従業員の方の実家で作られたお米を販売する内容でした。
私は仕事の内容ではなかったので、すぐに返事をしなかったのですが、時間がある時に内容や他の従業員の方の返信を詳しく見ると、皆さん快く購入されていました。私も市販のお米よりもお安く自宅にまで郵送いただけるという点と、先輩にあたる方々も喜んで購入していることから購入しました。
そして、無事にお米が届き美味しくいただいている時に、社内会議の際にメールの内容が業務上不適切と処分を言い渡されました。その内容は無期限の休職でした。
私は、100%理不尽とも思いませんでしたが、長年勤務されている方からの連絡であり、長年勤務されている方々の返信内容からそれほどおかしいとも思えなかったので、無期限休職という処分は厳しいと思っていました。さらに、退職を希望するならば自己退職をするよう強制され、会社を続けたいのであれば社長宛の反省文を提出するよう言われました。
私は、この件以外にも会社に対して理解できない部分もあったので、仕事だけに集中できないと思い自己退職しました。
みんブラ事務局の所見:私用は不適切でも、無期限休職は重すぎる。持ちかけた側の処分が示されないまま、応じた側だけが処分された。
この記事は「投稿者に非がある」で終わらせてはいけない
この体験談はみんブラの中でも読者投票が低く出ている一件です。
理由は明らかでしょう。会社のシステムを私的に使ったのは事実だからです。
投稿者自身も「100%理不尽とも思いませんでした」と書いています。
事務局も、会社のシステムで物品を販売するのは不適切だと考えます。そこは争いません。
ですが、この記事には別の論点があります。
やったことに対して、処分が重すぎないか。
事実を整理します。
- 全従業員がスケジュール管理や業務連絡に使っているシステムがあった
- 長年勤務しており経営者も評価するある女性従業員から、実家で作られた米を販売する内容のメールが複数の従業員に届いた
- 投稿者はすぐに返事をしなかったが、他の従業員の返信を見ると皆が快く購入していた
- 市販より安く、自宅まで郵送される点と、先輩たちも喜んで購入していることから購入した
- 米が届いて食べている頃、社内会議でメールの内容が業務上不適切と処分を言い渡された
- その内容は無期限の休職だった
- さらに退職を希望するなら自己都合退職を強制され、会社を続けたいなら社長宛の反省文を提出するよう言われた
- 投稿者は自己都合で退職した
ここで一つ、誰も答えていない問いが残ります。
メールを送った本人は、どうなったのでしょうか。
法律から見ると
懲戒処分には厳格な要件があります。順に確認します。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 「無期限の休職」という処分を科した。 | 労働基準法89条9号 | 制裁の定めをする場合は、その種類および程度に関する事項を就業規則に記載しなければならない。期間の定めのない出勤停止は「程度」が特定されておらず、懲戒処分として成立しにくい。 |
| 処分の重さが、行為の内容に見合っていなかった。 | 労働契約法15条 | 懲戒は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は権利を濫用したものとして無効となる。米を購入しただけの従業員に無期限休職は相当性を欠く疑いが強い。 |
| メールを送った側と、購入した側の処分が明らかにされていない。 | 労働契約法15条 (平等取扱いの原則) |
同じ事案で、より重い関与をした者が軽い処分にとどまるのであれば、処分の公平性を欠き、懲戒権の濫用と評価される要素になる。 |
| 休職期間中の賃金の取扱いが示されていない。 | 労働基準法26条 89条 |
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、平均賃金の60%以上の休業手当が必要。懲戒としての出勤停止で無給とするには、就業規則の定めが必要である。 |
| 退職するなら自己都合退職にするよう求めた。 | 労働契約法3条5項 雇用保険法 |
会社の働きかけによる退職は自己都合とは限らない。退職勧奨に応じた場合は特定受給資格者として扱われ得るため、給付制限や給付日数に大きな差が生じる。 |
| 会社を続けたいなら社長宛の反省文を提出するよう求めた。 | 労働契約法15条 憲法19条 |
始末書の提出を命じること自体は懲戒の一種として認められ得るが、謝罪や反省の意思表明そのものを強制することには限界があるとされる。 |
| 会社が業務システムの私的利用について周知していなかった。 | 労働基準法106条 労働契約法7条 |
就業規則は労働者に周知する義務があり、周知されていない規則は効力を持たない。禁止事項が明示されていなければ、懲戒の根拠として弱くなる。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この処分を糾弾する
この件で問うべきは「私用メールは良いか悪いか」ではありません。
会社が、誰をどう扱ったかです。
まず登場人物の整理から始めます。
- メールを送った人:長年勤務し、経営者も評価する女性従業員
- 購入した人たち:複数の先輩従業員。皆が快く購入していた
- 投稿者:後から購入した一人
関与の度合いは明らかに差があります。
システムを使って販売を持ちかけたのは1人です。投稿者は届いたメールに応じただけ。
そして先輩たちが先に購入していたという事実。
これは投稿者にとって「この会社では許容されている」という合図でした。
新しく入った人が職場の慣行を、先輩の行動から学ぶのは当然のことです。
投稿者が書いているとおりです。
「長年勤務されている方からの連絡であり、長年勤務されている方々の返信内容からそれほどおかしいとも思えなかった」。
この判断は不自然ではありません。
そして、ここが最も重要な点です。
この記事には、メールを送った人がどうなったかが書かれていません。
投稿者が知らされていない、ということです。
もし送った本人が軽い処分で済んでいたなら、この処分は明らかに公平性を欠きます。
そして——経営者も評価する長年勤務の従業員と、後から入った従業員。
どちらが処分しやすいかは、言うまでもありません。
次に、「無期限の休職」という処分の中身です。
無期限という言葉に注目してください。
懲戒処分としての出勤停止には、期間の定めが必要です。「7日間」「1か月」のように。
就業規則には制裁の種類と程度を記載しなければなりません(労基法89条9号)。
期限を定めない出勤停止は、「程度」が定まっていません。
そして、実質的に何が起きるか。
いつ戻れるかわからない状態に置かれます。
収入の見通しも立たない。転職活動をすべきかもわからない。
この状態を続ければ、ほとんどの人が自分から辞めます。
そして実際、会社は次の一手を打ちました。
「退職を希望するならば自己退職をするよう強制され、会社を続けたいのであれば社長宛の反省文を提出するよう言われました」。
2つの選択肢が示されています。
- 自己都合で辞める
- 社長に反省文を書いて残る
この2択の意味を説明します。
自己都合退職を選べば、会社は解雇の責任を負いません。
解雇であれば客観的合理性と社会通念上の相当性が問われます。争われる可能性がある。
ですが本人が辞めたことにすれば、その論点は消えます。
そして雇用保険の扱いも変わります。自己都合と会社都合では、給付の開始時期も日数も違います。
もう一方の反省文。
これを書けば「本人が非を認めた」という記録が会社に残ります。
後から処分の妥当性を争おうとしても、自分の書いた反省文が不利に働きます。
どちらを選んでも、会社が損をしない設計になっているのです。
もう一点、この会社がやらなかったことを指摘しておきます。
事前に、禁止だと知らせていなかったのです。
もし業務システムの私的利用が就業規則で明確に禁じられ、周知されていたなら、話は変わります。
ですが、この会社では長年勤務する従業員が堂々と販売メールを送り、複数の先輩が快く購入していた。
禁止されていると誰も思っていなかったということです。
周知されていない規則は効力を持ちません(労基法106条)。
ルールを知らせずに運用し、違反が起きてから処分する。これは管理の失敗であって、従業員の責任ではありません。
そして、この会社は処分の場を「社内会議」にしました。
個別の面談ではなく、会議の場で言い渡されたのです。
他の従業員に見せるためでしょう。
ですが、その効果は「ルールを守ろう」ではありません。
「目をつけられたらこうなる」という恐怖が共有されるだけです。
そして実際、投稿者は退職しました。
会社が失ったのは米を1袋買った従業員1名です。得たものは、残った全員への萎縮効果でした。
この処分には、応じる前に確認すべきことがある
判定は「処分の重さに問題あり」としました。会社に落ち度がまったくないわけではないと考えるからです。
- 1. 処分の根拠となる条文を、示してもらう
懲戒処分には就業規則の根拠が必要です。「就業規則の第何条に基づく、どの種類の処分ですか」と書面で確認してください。示せないなら、その処分は成立していない可能性があります。周知されていない就業規則は効力を持ちません。 - 2. 他の関係者の処分を確認する
同じ事案で、より重い関与をした人が軽い処分なら、公平性を欠きます。「同じ件で他に処分を受けた方はいますか」と聞いてください。答えを拒まれた事実自体が、記録になります。処分の均衡は、懲戒権濫用の判断で考慮される要素です。 - 3. 「自己都合で辞めろ」には、すぐ応じない
会社の働きかけで辞めたなら、それは自己都合とは限りません。退職勧奨に応じた場合、特定受給資格者として扱われ得ます。給付制限の有無と給付日数が大きく変わります。離職票の離職理由は必ず確認し、納得できなければハローワークに異議を申し立てられます。
もし今、同じ状況にいるなら
- 1. 処分は、必ず書面で受け取る
「処分内容を書面でいただけますか」と求めてください。口頭の処分は、後から内容が変わることがあります。書面には処分の種類・期間・根拠となる規定・理由が記載されているべきです。これがそろっていない処分は、争う余地があります。 - 2. 反省文は、書く前に相談する
反省文は「非を認めた記録」として残ります。処分の重さに納得できないなら、書く前に外部へ相談してください。各都道府県労働局の総合労働相談コーナーは無料・予約不要で、あっせん制度も利用できます。会話の当事者なら録音は適法です。 - 3. 休職期間中の賃金を確認する
「この休職期間中の賃金はどうなりますか」と書面で確認してください。懲戒としての出勤停止で無給にするには就業規則の定めが必要です。会社の都合による休業なら、平均賃金の60%以上の休業手当が必要になります(労基法26条)。
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