激務・長時間労働強要→うつ病で倒れたら産業医を使っていらない社員を解雇。人材を使い捨てにする会社の手口。

月々の残業時間が100時間を超える状態が数ヶ月続き、不眠症と食欲減退で結果的に職場で倒れた社員が休職することになりました。
休職時に所属していた部署の上司から「なぜ、他の社員ができているのに、お前はできないんだ?できないお前に問題がある」と指摘されました。
倒れた社員は中途採用で、部署に配属された際は初めて取り組む業務でしたが特に業務について説明をされることもなく、いきなり業務を割り振られました。
また配属初日から日付が変わってから退社するという状況でした。確かに忙しい部署ではありましたが、新人への配慮にかける状況であったと考えられます。
次に、休職にあたり会社が契約している産業医との面談がありました。
その面談で倒れた社員に産業医が話した内容は、退職するにはどうすればいいか、休職するのは休職する側に問題があることを説明するという内容でした。
倒れた社員は、状況からうつ病と診断されてもおかしくない状況でしたが、社員の体調や精神状態へ寄り添うこともなく、まるで休職する社員は退職してしかるべきと言わんばかりの対応でした。
また、産業医からはそもそも休職する社員一人一人に対して産業医が面談すること自体過保護であり、面談を受けられる社員が感謝すべきだというお話もありました。
結果的に倒れた社員は一旦休職し、その後の進退については保留となりましたが、月に一回必ず産業医との面談をすることとなりました。その月に一回の産業医との面談でも退職に関する話が大半を占めました。
その中で、倒れた社員が退職することを決断しないことに業を煮やしたのか、産業医がなぜ退職の話をするのかということを話しました。「退職の話をすることは、会社の希望であり方針である」とのことでした。
本来、産業医は第三者的な立場から社員の状況を判断するものだと考えられますが、その会社ではあくまで産業医が考えるのは会社の責任と立場だけであり、休職することになった社員の立場などは考慮していないようでした。
産業医との面談には必ず人事に関する会社の社員も同席していましたが、前述の話を産業医がしてもなんの反論もなかったことから、会社としても産業医の話を容認しているものと考えられました。
実際、その会社では産業医と面談し休職した人間の復職率は非常に低く、ほとんど聞くことはありませんでした。
社員の上司など会社に籍を置く人間が会社に不要と判断した人間へ退職の話をすることは問題になるので、あくまで第三者的な立場である産業医に会社側の意向を伝えるという非常に姑息な方法をとって社員をやめさせるという方法をとっていました。
休職からの復帰についても産業医の判断が必要となり、復職させたくない社員に対して産業医が首を縦に振らないという事も少なくありませんでした。
また、その会社の社長自身、役に立たない社員は自ら辞めるべきという話を何度もしていました。
他にも特定の社員に対して仕事をさせない、必要な会議を知らせない、出席させない、会議の結果を伝えないなど、辞めさせたい社員をいかに自分自身から辞める方向に持って行くか、いろいろな方法で実質的なリストラを行っていました。
また社則で労働組合の禁止もうたっており、社員が身を守るために相談する方法がない、社員が会社へ抵抗できない仕組みを巧妙に作っていると感じる会社でした。
みんブラ事務局の所見:産業医は会社の代理人ではない。「退職の話は会社の希望であり方針」と述べた時点で職務の逸脱である。
産業医は、会社の代理人ではない
この記事は、みんブラに寄せられた体験談の中でも特に重い一件です。
先に結論を述べます。
産業医が「会社の希望であり方針である」として退職を勧める行為は、産業医制度の趣旨に真っ向から反します。
事実を確認します。
- ある社員は月々の残業時間が100時間を超える状態が数か月続き、不眠症と食欲減退で職場で倒れ、休職することになった
- その社員は中途採用で、初めて取り組む業務だったが説明もなくいきなり業務を割り振られ、配属初日から日付が変わってから退社していた
- 休職にあたり上司から「なぜ、他の社員ができているのに、お前はできないんだ?できないお前に問題がある」と指摘された
- 産業医との面談で話された内容は「退職するにはどうすればいいか」と「休職するのは休職する側に問題がある」という説明だった
- 産業医は「休職する社員一人一人に産業医が面談すること自体が過保護であり、面談を受けられる社員が感謝すべきだ」とも述べた
- 月1回の面談でも退職に関する話が大半を占めた
- 社員が退職を決断しないことに業を煮やし、産業医は「退職の話をすることは、会社の希望であり方針である」と述べた
- 面談には必ず人事の社員が同席していたが、何の反論もなかった
- この会社では産業医と面談し休職した人間の復職率は非常に低かった
- 社則で労働組合の禁止をうたっていた
投稿者は、この会社の狙いを見抜いています。
「会社に籍を置く人間が会社に不要と判断した人間へ退職の話をすることは問題になるので、あくまで第三者的な立場である産業医に会社側の意向を伝えるという非常に姑息な方法をとって社員をやめさせる」。
法律から見ると
この事例には労働安全衛生法・労働基準法・労働組合法がそれぞれ関わっています。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 月100時間超の残業が数か月続き、社員が職場で倒れた。 | 労働基準法36条 労働安全衛生法 66条の8 |
時間外労働は単月100時間未満、複数月平均80時間以内が絶対的な上限。月80時間を超え疲労の蓄積が認められる者から申出があれば医師の面接指導を行う義務がある。 |
| 業務上の疾病で休業している社員に、退職を求め続けた。 | 労働基準法19条 | 業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間中とその後30日間は解雇できない。長時間労働による精神障害は業務上の疾病と認定され得るため、退職勧奨は解雇制限の潜脱にあたり得る。 |
| 産業医が、会社の方針として退職を勧め続けた。 | 労働安全衛生法13条 13条3項 |
産業医は労働者の健康を確保するため誠実にその職務を行わなければならない。事業者から独立した立場で医学的知見に基づき判断するのが制度の前提であり、会社の意向の代弁は職務逸脱である。 |
| 復職を認めない判断を、会社の意向に沿って行っていた。 | 労働安全衛生法13条5項 労働契約法5条 |
産業医は労働者の健康確保のため必要があるときは事業者に対して勧告することができる。本来は労働者を守るための権限であり、これを排除の手段に用いるのは目的外の行使である。 |
| 退職を決断しない社員に、月1回の面談で繰り返し退職を求めた。 | 労働契約法3条5項 民法709条 |
退職勧奨は労働者の自由な意思を尊重する範囲でのみ許される。拒否の意思を示した後も執拗に繰り返す行為は違法な退職強要となり、不法行為として損害賠償の対象になる。 |
| 特定の社員に仕事をさせず、必要な会議を知らせず、出席させなかった。 | 労働施策総合推進法 30条の2 |
業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないことは「過小な要求」、隔離・仲間外し・無視は「人間関係からの切り離し」にあたる。 |
| 社則で労働組合の結成・加入を禁止していた。 | 憲法28条 労働組合法7条 |
団結権は憲法が保障する権利であり、これを禁じる社則は無効。組合の結成・加入を理由とする不利益取扱いや組合運営への支配介入は不当労働行為として労働委員会の救済の対象となる。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この手口を糾弾する
この会社がやったことを、正確に言葉にします。
この会社は、医師という職業の信用を、解雇の道具として使いました。
なぜ産業医だったのか。投稿者が書いているとおりです。
上司や人事が「辞めてくれ」と言えば退職強要になります。記録に残れば争われます。
ところが産業医が言えば、それは「医学的な助言」に見える。
倒れた社員の立場に立ってみてください。
月100時間超の残業で不眠と食欲減退。職場で倒れている。判断力が落ちている状態です。
その人に対して、白衣を着た専門家がこう言うのです。
「休職するのは休職する側に問題がある」。
これがどれほど残酷か。
この社員はすでに上司から「できないお前に問題がある」と言われています。
そして次に会った医師からも同じことを言われた。
会社の中で、味方が一人もいなくなったのです。
しかも、この社員の経緯を思い出してください。
中途採用で、初めての業務を、説明もなく割り振られ、配属初日から日付が変わるまで働いた。
投稿者の指摘のとおり「新人への配慮に欠ける状況」です。
倒れた原因は、この人の中にありません。説明もせずに、初日から深夜まで働かせた側にある。
次に、産業医のもう一つの発言について。
「そもそも休職する社員一人一人に対して産業医が面談すること自体過保護であり、面談を受けられる社員が感謝すべきだ」。
これは事実に反します。
産業医は労働安全衛生法に基づいて選任される制度です。常時50人以上の労働者を使用する事業場では選任が義務づけられています。
労働者の健康を守るために法律が置いた仕組みであって、会社の恩恵ではありません。
「感謝すべきだ」という言い方は、制度を恩恵にすり替えて、相手を黙らせるための言葉です。
そして、決定的な一言。
「退職の話をすることは、会社の希望であり方針である」。
産業医が自分の口で認めています。
労働安全衛生法13条3項は産業医は労働者の健康を確保するため誠実にその職務を行わなければならないと定めています。
会社の希望を伝えることは、産業医の職務ではありません。
そして最後に、この会社で最も見過ごせない一行です。
「社則で労働組合の禁止もうたっており」。
これは明確に無効です。
団結権は憲法28条が保障する権利です。社則で禁止することはできません。
そして、なぜこの会社が組合を禁じたか。理由は明らかです。
組合があれば、産業医の面談内容を団体交渉の議題にできます。個人では争えないことも、組織なら争えます。
この会社の一連の手口は、組合がないことを前提に組み立てられているのです。
この会社は、今すぐ相談先を確保すべきである
この事例では「辞めるべき」と単純に言えません。会社が辞めさせようとしているからです。3点に整理します。
- 1. 自分から辞めると、労災も解雇制限も使えなくなる
長時間労働による精神障害は、労災として認定され得ます。認定されれば療養中とその後30日間は解雇できません(労基法19条)。自己都合で辞めてしまうと、この保護が働きません。だから会社は「自分から辞める」形にこだわるのです。急いで退職届を出さないでください。 - 2. 産業医の判断は、絶対ではない
復職の可否は、最終的には会社が判断するものであり、主治医の診断書も重要な資料です。産業医が首を縦に振らないという状況が続くなら、主治医に復職可能の診断書を書いてもらい、書面で復職を申し入れてください。記録として残ります。 - 3. 「組合禁止」の社則は、守る必要がない
社内に組合がなくても、一人でも加入できる労働組合(ユニオン)があります。加入すれば団体交渉を申し入れられ、会社は正当な理由なくこれを拒めません(労働組合法7条2号)。加入を理由とする不利益取扱いは不当労働行為です。
もし今、同じ状況にいるなら
- 1. 産業医面談の内容を、必ず記録する
面談の日時、同席者、産業医が述べた内容を面談直後にメモしてください。「会社の希望であり方針である」のような発言は一字一句そのまま残す価値があります。自分が当事者である会話の録音は適法です。人事が同席しているなら、なおさら記録が要ります。 - 2. 主治医を、自分で確保する
産業医は会社が選任した医師です。それとは別に、自分で受診した主治医を持ってください。診断書は、労災申請でも復職交渉でも退職強要への対抗でも中心的な証拠になります。受診記録そのものが、症状の経過を示す資料です。 - 3. 窓口は、内容ごとに分かれている
長時間労働・36協定違反は労働基準監督署。労災申請も労働基準監督署で、会社の証明が得られなくても本人が申請できます。退職強要・パワハラは各都道府県労働局の総合労働相談コーナー(無料・予約不要)。組合の禁止や団交拒否は各都道府県の労働委員会へ。
この体験談に近いケース
この体験談に近いケースとして、あわせて読まれている記事です。
- マタハラの実態まとめ。妊娠・出産を理由とする不利益取扱いは違法です。
- 1年中求人を出している会社は要注意。人が定着しない理由が必ずある。
- 後頭部を棒で叩く「職人の世界」。度を超えた指導は暴行罪です。
- 就職活動・転職で注意すべき”嘘つき企業”。会社説明会・面接では都合の悪い事は隠蔽。
この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。




