警察沙汰になっても体制は変わらなかった…休みは月1回、教育もない撮影現場

自分が務めていたブラック企業は映像制作会社でした。
基本的に決まった休みは無く「休めるときに休んでいいよ」というスタンスでしたが、みんなほとんど休みがなく月1回がいいところでした。
1週間家に帰ることができていない社員もおり、ある日無断欠勤をし連絡がつかないので心配になった上司が家まで様子を見に行くも鍵がかかっており、中で自殺をしたんじゃないかと警察沙汰になったこともありました。そんなことがあっても会社の体制は変わらず、相変わらずの勤務体制でした。
一番の若手も35歳の6年目で平均年齢も高く、決まった顔ぶれで会社を回している雰囲気が強く、新人の教育にはあまり力も入れていないようでした。
ですので自分もあまり先輩には教えてもらえず、CM撮影の制作の役割も初めてにしてほぼ1人での作業でした。分からないことだらけで半分パニックになりながらでしたが、なんとか乗り切りましたが、こんなことが永遠に続くのかと思うと鬱になりそうでした。
給料も安くボーナスもなく、また残業手当などもないのでお金も時間もない状態でした。
教育環境がないのが一番きつかったです。やりがいのある業界であるのは間違いないですが、失敗すれば責任もお金も大きく、なるべく失敗要素を排除していきたいのですが、教育環境がないので精神的なプレッシャーがかなり大きかったです。
みんブラ事務局の所見:「休めるときに休んでいい」は休日を与えたことにならない。休日を特定するのは使用者の義務である。
「休めるときに休んでいい」は、休日を与えたことにならない
この体験談で最も基本的な違反から取り上げます。
投稿者はこう書いています。
「基本的に決まった休みは無く『休めるときに休んでいいよ』というスタンス」。
一見自由に聞こえます。
ですがこれは制度として成立していません。
理由を二つ述べます。
第一に、労働基準法35条は毎週少なくとも1回、または4週を通じ4日以上の休日を与えなければならないと定めています。
「与える」のは使用者です。
労働者が自分で取りに行くものではありません。
第二に、労働基準法89条1号は休日を就業規則に記載することを義務づけています。
これは絶対的必要記載事項です。
つまりいつが休みかを定めて書いておけということです。
そして結果を見てください。
「みんなほとんど休みがなく月1回がいいところ」。
月1回です。
35条の最低線は月4回ですから、
4分の1になっています。
そのうえで、全体を確認します。
- 決まった休みがなかった
- 「休めるときに休んでいいよ」というスタンスだった
- 実際の休みは月1回がいいところだった
- 1週間家に帰れない社員がいた
- その社員が連絡不能となり警察沙汰になった
- それでも会社の体制は変わらなかった
- 一番の若手が35歳の6年目で平均年齢が高かった
- 新人教育に力を入れていなかった
- 初めてのCM撮影の制作をほぼ1人で担当した
- 給料は安く、ボーナスも残業手当もなかった
法律から見ると
休日の特定と安全配慮義務が中心の論点です。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 決まった休みを定めず、「休めるときに休む」という運用にしていた。 | 労働基準法35条 89条1号 |
休日を与えるのは使用者の義務であり、休日は就業規則の絶対的必要記載事項。特定しない運用は義務を果たしたことにならない。 |
| 実際の休日が月1回程度にとどまっていた。 | 労働基準法35条 36条 |
毎週少なくとも1回、または4週4日以上の休日が必要。休日労働には36協定と35%以上の割増賃金が要る。違反は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。 |
| 残業手当が支給されていなかった。 | 労働基準法37条 24条 |
1日8時間・週40時間超は25%以上の割増。賃金は全額を支払う義務があり、不払いは30万円以下の罰金。 |
| 1週間帰宅できない社員がおり、連絡不能となる事態が生じた。 | 労働契約法5条 労働安全衛生法66条の8 |
安全配慮義務。長時間労働は精神障害の労災認定基準における心理的負荷の評価対象であり、月80時間超では医師の面接指導が必要。 |
| 重大な事態の後も、勤務体制が見直されていない。 | 労働安全衛生法3条 労働契約法5条 |
事業者は快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて労働者の安全と健康を確保する責務を負う。再発防止措置を講じないことは責務の不履行。 |
| 未経験の業務を教育なしに単独で担当させていた。 | 労働安全衛生法59条 労働契約法5条 |
雇入れ時および作業内容変更時の安全衛生教育は事業者の義務。教育を欠いた単独作業は事故と過重な心理的負荷の双方を招く。 |
| メンタルヘルスに関する体制が確認できない。 | 労働安全衛生法66条の10 70条の2 |
常時50人以上の事業場ではストレスチェックが義務。労働者の心の健康の保持増進のための指針に基づく4つのケアの実施が求められる。 |
| 撮影業務における発注・契約条件が明確でない可能性がある。 | 文化芸術分野の適正な 契約関係構築に向けた ガイドライン |
映像・芸術分野では書面による契約条件の明示が求められている。業務範囲が不明確なまま個人に責任が集中する構造を改めることが要請されている。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この会社を糾弾する
この記事の核心を先に述べます。
警察沙汰になっても変わらなかったという一点です。
順に見ていきます。
まず何が起きたかを確認します。
- 1週間家に帰れていない社員がいた
- その社員が無断欠勤した
- 連絡がつかなかった
- 上司が自宅まで様子を見に行った
- 鍵がかかっていた
- 中で自殺したのではないかと警察沙汰になった
ここで止まってください。
会社は知っていたのです。
その社員が1週間帰れていないことを。
そして連絡がつかなくなった時に真っ先に思い浮かんだのが自殺だったのです。
つまりそうなってもおかしくないと認識していたということです。
ここまでわかっていて、
「そんなことがあっても会社の体制は変わらず、相変わらずの勤務体制でした」。
これがこの記事の最も重い一文です。
ここで安全配慮義務を確認します。
労働契約法5条は使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとすると定めています。
そして「生命」が最初に書かれています。
長時間労働と精神障害の関係は労災認定基準で明確に扱われています。
発病直前の連続した2か月間に1月あたりおおむね120時間以上、
または3か月間に1月あたりおおむね100時間以上の時間外労働は、
心理的負荷が「強」と判断され得ます。
休みが月1回という状態はこの水準に容易に達します。
次に教育の不在です。
投稿者はこう書いています。
「教育環境がないのが一番きつかったです」。
ここは重要な指摘です。
この方は長時間労働を一番の苦痛として挙げていません。
わからないままやらされることを挙げているのです。
理由も書かれています。
「失敗すれば責任もお金も大きく」。
CM撮影は一日で大きな費用が動きます。
スタジオ、機材、出演者、スタッフ。
そこで初めての制作をほぼ1人でやらされたのです。
ここで労働安全衛生法59条を確認します。
事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、その従事する業務に関する安全または衛生のための教育を行なわなければならないとあります。
そして作業内容を変更したときも同じです。
撮影現場は照明、電源、高所、車両が関わります。
安全教育をしないことは事故に直結します。
最後に年齢構成です。
「一番の若手も35歳の6年目」。
これは6年間新人が定着していないことを意味します。
そして教育の仕組みがないのですから、
入っても育たず、育たないから辞める。
会社は今の顔ぶれが働ける間だけ成立している状態です。
そしてこの業界の事情にも触れておきます。
映像制作は発注者の都合でスケジュールが動く仕事です。
撮影日は天候にも左右されます。
ですから完全に定時で回すことは難しい。
ここまでは業界の性質です。
ですがだから休日を定めなくてよいとはなりません。
変形労働時間制という仕組みがあります。
1か月単位や1年単位で労働時間を平均し、
繁忙期に長く、閑散期に短く設定するものです。
これを使えば撮影の波に合わせたシフトが組めます。
ただし労使協定または就業規則で定め、各日の労働時間をあらかじめ特定する必要があります。
つまり「休めるときに休んでいいよ」とは正反対です。
制度を使わずに無定形にしているだけなのです。
そしてやりがいという言葉について述べます。
投稿者は「やりがいのある業界であるのは間違いない」と書いています。
これは正直な記述です。
そして危ういところでもあります。
やりがいのある仕事ほど条件の悪さが正当化されやすいのです。
「好きでやっているのだから」という理屈です。
ここをはっきり申し上げます。
やりがいと労働条件は交換できません。
労働基準法は職種で適用を変えていません。
撮影が好きでも週1日の休日は必要ですし、
時間外には割増が必要です。
そしてやりがいを長く味わうためにこそ、
身体が要ります。
そしてこの会社に欠けているものを一つ挙げます。
記録です。
休日が定まっていないということは、
誰が何日働いたかも管理されていない可能性が高い。
そして1週間帰れていない社員がいたのに、
止める仕組みが働かなかったのです。
労働時間の把握は労働安全衛生法66条の8の3による義務です。
その目的は賃金の計算だけではありません。
働きすぎを見つけて止めるためです。
把握していれば月80時間を超えた時点で面接指導の対象だとわかります。
この会社にはその入口がなかったのでしょう。
そして把握しないことは会社を守りません。
万一労災の申請があれば、
労働基準監督署は実態を調べます。
そのとき記録がないこと自体が不利に働きます。
こういう会社は、今すぐ辞めていい
3つの理由を述べます。
- 1. 警察沙汰でも変わらないなら、次も変わらない
人の命が疑われる事態が起きたのです。それでも体制が変わらなかったのであれば、変わるきっかけはもうありません。 - 2. 教育がない現場では、失敗の責任だけが個人に来る
教えずにやらせ、失敗すれば責任は本人という構造です。費用の大きい仕事ですから、取り返しのつかない事態もあり得ます。 - 3. 月1回の休みでは、技術を伸ばす時間もない
やりがいのある業界だと投稿者も書いています。ですが学ぶ時間も休む時間もないのであれば、そのやりがいに到達できません。
もし今、同じ状況にいるなら
- 1. 休んだ日を、カレンダーに印をつける
月に何日休めたかを記録してください。4週で4日を下回っていれば労働基準法35条違反です。就業規則に休日がどう書かれているかもあわせて確認してください。 - 2. 拘束時間を、月単位で集計する
撮影の入り時刻と解散時刻を記録すれば月の時間外が計算できます。月80時間を超えたら医師の面接指導を申し出る権利があります。賃金請求権の時効は当面3年です。 - 3. 心身の不調は、早い段階で外部へ
「鬱になりそう」と感じた時点で相談してください。こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)、厚生労働省「まもろうよ こころ」があります。労働時間・休日は労働基準監督署(匿名申告も可)です。
この体験談に近いケース
この体験談に近いケースとして、あわせて読まれている記事です。
- ブラック企業・長時間労働のストレスで限界になった体験談3選。
- 月残業200時間という過酷な体験談。もちろん残業代はゼロ。
- 未経験からWEBデザイナーに。教育がないまま潰されかけた話。
- 人手不足・退職ラッシュで職場崩壊。人員が増えない原因は?
この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。





・広告、犯罪に関する内容、他人が不快になる誹謗中傷コメントは、書き込みは禁止です(削除させていただきます)。
・投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権、(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利も含む)その他の権利につき(第三者に対して再許諾する権利を含みます。)、サイト運営者に対し、無償で譲渡することを承諾します。
・投稿者は、サイト運営者に対して、著作者人格権を一切行使しないことを承諾します。