本人が「辞めます」と言うまで問い詰める…解雇予告手当を避ける手口

以前勤めていた司法書士事務所がヒドイ職場でした。司法書士とその奥さんと、女性職員が3名の職場でした。私はハローワークで求人を見つけて、司法書士なので堅い職場だろうと勝手に思い込んでいたのですが…。
入社したその日から、「ホチキスが無くなった。おまえ、盗んだんじゃないのか。」などといきなり疑われました。どうやら数日前まで勤めていた職員が、文房具類をいくつか盗んでいったようでした。(「それで求人を出して、あなたが来たのよ」と言われました。)辞める職員が事務所内のちょっとしたものをくすねたことが、これまでにも結構あったそうです。
最初は、どうしてそんなことをするのか不思議に思っていたのですが、数日後に謎が解けました。私より前に入社していた女性職員が突然、辞めることになったのです。本人の「一身上の都合」により辞めることになったと司法書士から皆に話がありました。
お礼を言って、こっそり辞める理由を聞いてみると…。仕事で彼女がちょっとしたミスをしたのを、司法書士がとても怒って、「どう責任をとるんだ」「やる気があるのか」「仕事をやる気がないからこういうことになるんだろう」「そうか、辞めるつもりなのか?」「どうなんだ?」「辞めるんだろう?」という感じで、司法書士からは決して辞めろとかクビとかは言わず、本人が辞めますと言うまで軟禁状態で色々言われたそうです。そしてそういうことが過去に何度もあり、もう耐えられないから辞めることにしたそうです。
司法書士はさすがに会社都合でクビにすると1か月分のお給料を出さないといけない、といった仕組みは熟知していて、本人都合となるように話を強引に持っていくのだそうで、同じように事実上やめさせられた人が何人もいたそうです。
そして、前回の給料日以降の分は日割りで計算されることになっているのですが、これが現金で支給されるため、「次の給料日に会社へ取りに来い」と言われ、これまで辞めたほとんどが、そんなに大した金額じゃないお金をもらうために再び司法書士と顔をあわせたくないということで、お金を取りに来ないのだそうです。
そのかわりに、自宅で使えるものとか、次の職場で使えそうなものなどをこっそり持っていくのだということでした。それはそれで犯罪なのですが、もう皆そうだったから、という感じで当たり前のようになっているようでした。私はそうはなりたくないと思い、これ以外にも司法書士夫妻の傍若無人ぶりがひどかったので、早々に退社しました。
みんブラ事務局の所見:本人に「辞めます」と言わせるまで問い詰める行為は、実質的な解雇であり退職強要である。
本人に「辞めます」と言わせる手口は、退職強要である
この体験談で最も悪質な部分から取り上げます。
投稿者はこう書いています。
「司法書士からは決して辞めろとかクビとかは言わず、本人が辞めますと言うまで軟禁状態で色々言われた」。
そしてその理由も書かれています。
「会社都合でクビにすると1か月分のお給料を出さないといけない、といった仕組みは熟知していて」。
ここを整理します。
労働基準法20条はこう定めています。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
これが解雇予告手当です。
そして労働契約法16条があります。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
つまり解雇にはハードルがあるのです。
そこで使われるのが自己都合退職に持ち込むという手口です。
本人が「辞めます」と言えば、
解雇ではなくなります。
予告手当も不要です。
そして解雇の有効性も争われません。
ここがこの事務所の狙いです。
ですがこれは成立しません。
判例は退職勧奨について、
社会通念上相当と認められる範囲を超えて執拗に行われた場合には違法としています。
そのうえで、全体を確認します。
- 司法書士とその妻、女性職員3名の事務所だった
- 入社初日から「盗んだんじゃないのか」と疑われた
- 直前に辞めた職員が文房具類を持ち出していたという
- そうしたことはこれまでにも結構あったという
- 先に入社していた職員が突然辞めることになった
- 理由はミスを責められ、「辞めるんだろう?」と言われ続けたため
- 本人が「辞めます」と言うまで軟禁状態だった
- 同じように辞めさせられた人が何人もいた
- 最後の日割り給与は現金で「取りに来い」とされた
- 受け取りに来ない人が備品を持ち出すのが常態化していた
法律から見ると
退職強要と金品の返還が中心の論点です。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 本人が「辞めます」と言うまで長時間にわたり問い詰めていた。 | 労働施策総合推進法30条の2 労働契約法16条 |
社会通念上相当な範囲を超えて執拗に行われる退職勧奨は違法。「精神的な攻撃」にもあたり、実質的な解雇と評価される余地がある。 |
| 解雇予告手当を避けるため、自己都合退職の形をとっていた。 | 労働基準法20条 労働契約法16条 |
解雇には30日前の予告または30日分以上の平均賃金が必要。合理的理由を欠く解雇は無効であり、形式を変えても実質で判断される。 |
| 退職者の最後の賃金を、来所しての現金受取としていた。 | 労働基準法23条 24条 |
労働者の請求があれば7日以内に賃金を支払わなければならない。受取方法により事実上支払わない運用は全額払いの原則に反する。 |
| 入社初日に、根拠なく窃盗を疑う発言をしていた。 | 刑法230条 231条 民法709条 |
事実を摘示して名誉を毀損すれば名誉毀損罪、事実を摘示しなくても侮辱罪となり得る。不法行為として損害賠償の対象。 |
| ミスに対して長時間にわたり責任を問い詰めていた。 | 労働施策総合推進法 30条の2 |
必要以上に長時間にわたる厳しい叱責は指針が挙げる「精神的な攻撃」の例。逃げられない状況での実施は悪質性を高める。 |
| 同様の退職が繰り返し発生していた。 | 労働施策総合推進法 30条の2 (措置義務) |
事業主には防止措置と再発防止措置の義務がある。行為者が事業主本人である場合、社内での是正は期待できない。 |
| 退職者による備品の持ち出しが常態化していた。 | 刑法235条 労働基準法23条 |
持ち出しは窃盗罪にあたり正当化されない。ただし賃金が適正に支払われない運用が背景にある点は事業主の責任である。 |
| 離職理由が実態と異なる形で処理されていた可能性がある。 | 雇用保険法 同施行規則 |
離職票の離職理由に異議があればハローワークで申し立てできる。会社都合と認められれば給付制限がなく所定給付日数も増える。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この事務所を糾弾する
この記事の要点を順に述べます。
まず初日の言葉です。
「ホチキスが無くなった。おまえ、盗んだんじゃないのか」。
入社したその日です。
まだ何もしていません。
そして前任者が持ち出していたことは会社が知っていたのです。
それでも新しく来た人を疑う。
これは誰でも疑うということです。
次に辞めさせ方です。
ここがこの記事の核心です。
投稿者が記録した言葉を並べます。
- 「どう責任をとるんだ」
- 「やる気があるのか」
- 「仕事をやる気がないからこういうことになるんだろう」
- 「そうか、辞めるつもりなのか?」
- 「どうなんだ?」
- 「辞めるんだろう?」
ここで言葉の運びに注目してください。
最初はミスの話です。
次にやる気の話に移ります。
そして辞めるかどうかに移ります。
最後は「辞めるんだろう?」という確認です。
つまり結論は最初から決まっているのです。
そして本人の口から言わせることだけが目的です。
投稿者はその理由も書いています。
「会社都合でクビにすると1か月分のお給料を出さないといけない、といった仕組みは熟知していて」。
ここがこの事務所の最も悪い点です。
法律を知っているのです。
司法書士は法律の専門職です。
登記や供託、簡裁での代理業務を扱います。
つまり手続きの専門家です。
その知識が職員を追い出すために使われているのです。
そしてもう一つの損失を説明します。
自己都合退職になると雇用保険で不利になります。
- 給付制限期間がつく
- 所定給付日数が短くなる場合がある
つまり辞めた後の生活にも影響します。
そして最後に最後の給与です。
「次の給料日に会社へ取りに来い」。
ここで労働基準法23条を引きます。
使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。
つまり請求すれば7日以内です。
次の給料日まで待つ必要はありません。
そして受取方法です。
この事務所は現金で取りに来いとしています。
ここに意図が見えます。
辞めた人は顔を合わせたくありません。
だから取りに来ない。
そして賃金が会社に残るのです。
投稿者はその先まで書いています。
「そのかわりに、自宅で使えるものとか、次の職場で使えそうなものなどをこっそり持っていく」。
そして「それはそれで、犯罪なのですが」と正しく指摘しています。
そのとおりです。
持ち出しは窃盗であり正当化できません。
ですがその循環を生んだのは事務所の運用です。
最後にこの方の判断に触れます。
投稿者はこう書いています。
「私はそうはなりたくないと思い」。
ここが重要です。
備品を持ち出すという行為に加わらなかったのです。
そして早々に退社しました。
この判断は正しいです。
理由を二つ述べます。
第一に、窃盗は犯罪です。
会社の運用がどれだけひどくても、
それを理由に正当化できません。
そして刑事の記録が残れば将来に響きます。
第二に、正しい手段があるからです。
最後の賃金は労働基準法23条で請求できます。
離職理由はハローワークで争えます。
退職強要は総合労働相談コーナーで相談できます。
つまり持ち出す必要はまったくありません。
そしてもう一点。
この職場の本当の問題は、
まともな手段があることを誰も知らなかったことです。
知っていれば取りに行かずに振込を求めることができました。
知らなかったから諦めて、別の形で取り返そうとしたのです。
こういう事務所は、今すぐ辞めていい
3つの理由を述べます。
- 1. 行為者が事業主本人なら、社内に救済がない
司法書士とその妻が行為者です。相談先がありません。そして何人も同じ目に遭っているのですから、変わる見込みがありません。 - 2. 初日に疑う相手とは、信頼関係が築けない
まだ何もしていない人を疑ったのです。これから何かが無くなるたびに疑われます。証明のしようがありません。 - 3. 法律を知っている相手ほど、手口が巧妙になる
解雇と言わずに辞めさせるのは知識があるからです。そしてその知識は次の人にも使われます。
もし今、同じ状況にいるなら
- 1. 「辞めます」と言わないでよい
退職の意思表示は本人が自由に決めるものです。その場で答える義務はありません。「持ち帰って考えます」で足ります。録音ができれば最も確実な証拠になります。 - 2. 離職票の理由には、異議を申し立てられる
自己都合と記載されていても、ハローワークで異議を申し立てることができます。会社都合と認められれば給付制限がなくなり、所定給付日数も変わります。 - 3. 最後の賃金は、7日以内に請求できる
労働基準法23条により請求から7日以内の支払いが義務です。振込を求めることもできます。相談先は労働基準監督署(匿名申告も可)と総合労働相談コーナー(無料・予約不要)です。
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- 個人経営の職場。経営者本人が行為者なら相談先がない。
この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。





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