指導という名の人格否定で鬱病や適応障害による退職が激増…。

正社員を希望していましたが、正社員だと子供の学校行事に参加する為に休みを申請することはできないといわれ、パート・アルバイトで働いてみてはどうだろうかと打診され、面接に何度も落ちていたこともありそこで週5~6日の1日7時間で働かせて貰うことになりました。
正社員ではないものの一人で1店舗任され、時には店舗移動勤務を2年程は何事もなく楽しんで仕事をしていました。6店舗程でしたがどの店舗も一人勤務体制で私と同じパート・アルバイト勤務でしたので不思議に思うことはありませんでした。
しかし、国内外の相場の変動もあり、社長から経費削減の通達が下りました。その時期か各店舗の文房具等などは自爆することが暗黙の様な雰囲気になりました。
同時に月に一度会議と称して全店舗の管理者が集まり店舗ごとの売上が悪いと、集中的に指導という形で人格否定などもあり、一年の間に鬱や適応障害で退職が続き、私が標的になった時には社長、統括マネージャー、社員一人、私含めるパート・アルバイトが二人でした。私も精神的に参り、鬱のため就労不能と書かれた診断書を貰いましたが「皆、抗うつ剤とか飲んでるから」と相手にされませんでした。
その後に家庭の事情や日付けが変わる頃に帰宅する日々などが続き、精神的に限界を感じ業務後に統括マネージャーがいる店舗まで赴き退職届けを提出しましたが、表情一転し受け取ろうともせずに無言で帰宅されてしまいました。
その姿をみて私の何かが切れてしまい、翌日休日だったこともあり労働相談している各所に電話相談しまくり、週40時間超えているのに雇用保険(雇用・労災・健康)に加入していないのは違反であることや、残業代支給、有給休暇もないなんて在住県では聞いたことがないといわれました。
みんブラ事務局の所見:「就労不能」の診断書を握り潰す会社は、労働契約法5条の安全配慮義務に違反している。
この職場の何がブラックだったのか
この体験談で最初に目を留めるべきは、「私が標的になった」という一文の手前にある事実です。この職場では、1年の間に鬱や適応障害での退職が続いていました。投稿者が精神的に参ったのは、本人の資質の問題ではありません。同じ手法で次々と人が壊れているのですから、壊しているのは職場の側です。
その手法もはっきりしています。月に一度、全店舗の管理者を集めた会議を開き、売上の悪い店舗の担当者を「指導という形で」集中的に人格否定する。公開の場で個人を吊るし上げる、典型的な見せしめの構造です。しかも各店舗は一人勤務体制ですから、日常的に相談できる同僚もいない。孤立させたうえで月に一度まとめて叩く、という設計になっています。
そして決定的なのが、「鬱のため就労不能」と書かれた診断書を突きつけられてなお、「皆、抗うつ剤とか飲んでるから」で片づけたという対応です。この一言は、単なる無神経ではありません。「精神をやられるのはこの会社では普通のことだ」と経営側が自ら認めてしまっている発言です。異常が常態であることを、加害者本人が証言している。
さらに背景として、週40時間を超えて働いているのに社会保険に加入させてもらえず、残業代も出ず、有給休暇も存在しない。経費削減の名目で文房具を自腹で買う空気まで作られていました。正社員を希望したのに「子供の学校行事で休めない」と言われてパートにされた経緯を思い返すと、最初から法定の義務を負わずに人を使うための入口だった疑いすら残ります。
法律から見ると、これは何にあたるのか
感情論を抜きにして、この職場で起きていたことを条文と突き合わせて整理します。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 医師の「就労不能」の診断書を提出しても「皆、抗うつ剤とか飲んでるから」と一蹴され、何の措置も取られなかった。 | 労働契約法5条 | 使用者は労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をする義務(安全配慮義務)を負う。診断書という明確な危険信号を認識しながら就業を継続させた場合、義務違反として損害賠償責任を問われ得る。 |
| 人格否定をともなう「指導」が月1回の会議で行われ、1年間に鬱・適応障害での退職が相次いだ。 | 労働施策総合推進法 30条の2 |
厚生労働省が示すパワハラ6類型のうち「精神的な攻撃」にあたる。同一の手法で複数の労働者が精神疾患を発症している以上、「たまたま本人が弱かった」という説明は通用しない。 |
| 週40時間を超えて勤務しているのに、雇用保険・健康保険・厚生年金に加入させてもらえない。 | 雇用保険法6条 健康保険法3条 |
雇用保険は週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みで加入義務が生じ、適用事業所で常時雇用される労働者は健康保険・厚生年金の被保険者となる。パート・アルバイトという呼称は、加入義務を免れる理由にならない。 |
| 残業代が支払われず、年次有給休暇も与えられていない。 | 労働基準法37条 労働基準法39条 |
時間外労働には25パーセント以上の割増賃金が必要。年次有給休暇はパート・アルバイトにも労働日数に応じて比例付与される権利で、2019年4月からは年10日以上付与される人に年5日を取得させることが企業の義務。 |
| 経費削減を理由に、店舗の文房具などを従業員が自腹で購入する空気が作られた。 | 労働基準法16条 | 業務に必要な費用を労働者に負担させる、いわゆる自爆営業。厚生労働省はこれをパワハラ指針に明記する改正を進めており、2026年10月1日からの施行が予定されている。 |
| 退職届を提出したが、統括マネージャーが受け取ろうとせず無言で帰宅した。 | 民法627条1項 | 期間の定めのない雇用は、退職を申し入れた日から2週間の経過で終了する。受理も承諾も不要で、受け取り拒否によって退職を阻止することはできない。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
とりわけ重要なのが表の1行目、安全配慮義務です。これは労働安全衛生法ではなく労働契約法5条に定められた、労働契約に当然にともなう使用者の義務です。医師が就労不能と診断した労働者について、業務量の軽減も配置転換も休業の指示も行わずに働かせ続けた結果、症状が悪化したのであれば、会社は損害賠償責任を負い得ます。加えて労働安全衛生法66条の8は、時間外・休日労働が月80時間を超えた労働者に医師の面接指導を受けさせることを事業者に義務づけています。「日付が変わる頃に帰宅する日々」が続いていたのなら、この義務も果たされていなかった可能性が高い。
もうひとつ知っておいてほしいのは、長時間労働やパワハラによる精神障害は労災の対象になるという点です。厚生労働省は「心理的負荷による精神障害の認定基準」を定めており、上司からの人格を否定するような言動や過重労働は、認定にあたって評価される出来事として明示されています。そして労災保険は、たとえ会社が保険関係の成立手続を怠っていたとしても、労働者側が給付を受けられる制度です。「うちは労災に入っていないから」は、諦める理由になりません。
診断書を握り潰す会社を糾弾する
ここからは、事務局として率直に書きます。
私たちがこの体験談で最も強い怒りを覚えたのは、「皆、抗うつ剤とか飲んでるから」という一言です。
この言葉の卑劣さは、単に冷たいという点にはありません。被害の多さを、被害を否定する材料にすり替えている点にあります。本来なら「1年で何人も精神をやられている」という事実は、職場を作り替えるべき最大の警告です。それを「みんなそうだから、あなたも我慢しろ」という同調圧力の道具に変換してしまった。異常の多発を、異常でないことの証明に使う。これは論理の倒錯です。
そして、医師の診断書というものの重みを考えてください。それは同僚の噂話でも、本人の主観的な訴えでもありません。国家資格を持つ専門家が、責任を負って発行した医学的な判断です。それを一介の管理職が「皆飲んでるから」の一言で無効化できると思っている。この会社には、自分たちの判断が医師の診断より上位にあるという、救いがたい思い上がりが染みついています。
退職届を受け取らずに無言で帰宅した統括マネージャーの態度も同じ根から出ています。受け取らなければ辞められない、と本気で思っていたのでしょう。しかし民法627条1項は、承諾も受理も要求していません。この人は、法律ではなく「自分が認めなければ物事は進まない」という思い込みで人を縛っていただけです。そして投稿者が各所へ電話相談した結果、社会保険未加入という自社の違法状態が判明した。人を縛ることに使っていた権威が、実際にはただの張りぼてだったわけです。
なぜ、この状況からは今すぐ離れるべきなのか
「もう少し様子を見よう」と考えている方に、理由を3つ挙げます。
第一に、精神疾患は、原因から離れるまで治らないということです。風邪であれば休めば治りますが、鬱や適応障害は、発症の原因となっているストレス源に晒され続けている限り回復に向かいません。就労不能の診断が出ている状態で同じ職場に留まることは、傷口に触れ続けながら傷が塞がるのを待つのと同じです。
第二に、この職場は構造的に改善しないということです。1年で複数名が精神疾患で辞めているのに、経営側は手法を変えていません。それどころか「皆そうだから」と正当化している。改善する意思のない組織で、次の標的が自分でなくなることを期待するのは合理的ではありません。実際この体験談でも、標的は順番に回ってきています。
第三に、回復にかかる時間は、我慢した期間に比例して伸びるという点です。早い段階で環境を変えた人ほど短期間で復帰できています。限界まで粘ってから離れた場合、その後の療養に何年もかかることは珍しくありません。失われるのは目の前の給料ではなく、その後の人生の選択肢そのものです。
付け加えると、この方は正社員を希望していたのに「正社員だと子供の学校行事で休めない」と言われてパートを打診されています。しかし年次有給休暇は雇用形態にかかわらず労働日数に応じて付与される権利であり、正社員だから学校行事で休めない、という説明にはそもそも根拠がありません。入口の時点で、事実と異なる説明がなされていた可能性が高いのです。
いま同じ状況にいる人が、今日のうちにやるべき3つのこと
- 1. 診断書と記録を必ず保全する
医師の診断書はコピーを取ってから提出してください。そして「いつ・誰に・何と言われたか」を日付つきで記録に残します。今回の「皆、抗うつ剤とか飲んでるから」のような発言は、安全配慮義務違反や労災認定を判断するうえで極めて重要な証拠になります。出退勤時刻のメモ、シフト表、給与明細、業務用のメールやLINEもすべて手元に残してください。 - 2. 労働基準監督署と年金事務所の両方に相談する
残業代の不払いと年次有給休暇の問題は労働基準監督署、社会保険の未加入は年金事務所、雇用保険の未加入はハローワークが窓口です。それぞれ管轄が違うので、まとめて1か所に相談しても解決しません。精神疾患の労災申請も労働基準監督署が受け付けています。申告したことを理由とする不利益な取扱いは、労働基準法104条2項で禁止されています。 - 3. 生活の見通しを立ててから離れる
健康保険の傷病手当金は、病気やケガで働けない期間について最長1年6か月、給与のおおむね3分の2が支給される制度です(健康保険法99条)。ただし健康保険の被保険者であることが前提なので、未加入のまま放置されている場合は加入手続きの是正が先になります。ここでも社会保険未加入の被害の大きさが効いてきます。退職の意思表示は民法627条1項により2週間で効力が生じ、受け取りを拒まれるなら内容証明郵便で送れば到達の事実が記録に残ります。
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