診断書を出しても「2か月後に受理」…調査が入りそうになった翌日に退職できた

某販売業に勤めていた時の体験談です。雑貨屋で店舗勤務をしていた時の出来事です。
クリスマスや年始のセール準備を控えているなか、もともと腰の病気を患ってしまいました。その日は早退させてもらい、病院で診断を受けたところ、腰椎椎間板症というヘルニアに近い症状で、立ち仕事を続けたらひどくなるとのことで、今後のことも考えて診断書を発行してもらい、マネージャーや事務所の上司に相談をしました。
最初は一刻も早く退職の方向で話が進んでいたのですが、その後一向に対応の話が進みませんでした。話が進むまでの間は、すでに出ていたシフトにそって無理のない程度にできる範囲のことを、一緒に勤務していた人たちに相談してやらせてもらっていましたが、最終的にかえってきた返答は「人数の関係上、2か月後くらいに受理する」とのことでした。
仕事で悪化させてしまったので、その時すでに傷病手当の手続きを進めていました。手当の都合上、休んでから3日から発生するので、中途半端に出勤していても手当を受けられず、どんどん延期してきました。
店舗で満足に働くこともできず、まわりからも不満のようなものも出てき始めたので、心身ともに限界がきていました。
傷病手当の申請を出してから1か月たたないくらいの時、事務所に保険者より、申請したものをそのまま働かせている件で調査が入るかもしれなくなったそうで、翌日退職しても良いと電話で報告がありました。
忙しい時期に患ってしまったのは申し訳ないとも思いますが、自分のこの先のことを考えた時、本当に使い捨ての駒にしか思ってないんだなと思いました。他の方も同じような対応をされていないことを、ただただ願います。
みんブラ事務局の所見:傷病手当金は連続3日の待期が必要。中途半端な出勤は待期をリセットし、収入も手当も失わせる。
傷病手当金は、連続3日の休みがなければ始まらない
この体験談で最も実害の大きかった部分から取り上げます。
投稿者はこう書いています。
「手当の都合上、休んでから3日から発生するので、中途半端に出勤していても手当を受けられず、どんどん延期してきました」。
ここを正確に説明します。
傷病手当金は健康保険法99条による給付です。
業務外の病気やけがで働けないときに支給されます。
支給の要件は四つです。
- 業務外の事由による病気やけがである
- 仕事に就くことができない
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかった
- 給与の支払いがない
ここで三つ目が効きます。
これを待期期間といいます。
連続するという点が重要です。
1日休んで出勤し、また休んでも、
待期は完成しません。
最初から数え直しになります。
つまり中途半端に出勤している限り、永遠に受給が始まらないのです。
そしてこの方はシフトに沿って出勤し続けていました。
そのうえで、全体を確認します。
- 雑貨屋の店舗勤務だった
- クリスマスと年始のセール準備の時期だった
- 腰椎椎間板症と診断された
- 立ち仕事を続けたらひどくなると言われた
- 診断書を発行してもらい上司に相談した
- 最初は早期退職の方向だったが話が進まなくなった
- 最終的に「人数の関係上、2か月後くらいに受理する」と言われた
- 傷病手当金の待期が完成せず受給が延び続けた
- 周囲からも不満が出始めた
- 保険者の調査が入りそうになった翌日、退職してよいと告げられた
法律から見ると
就労配慮と退職の自由が中心の論点です。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 立ち仕事の継続が困難という診断書を受けても配置が変わらなかった。 | 労働契約法5条 労働安全衛生法66条の5 |
使用者には安全配慮義務がある。健康診断の結果に基づく就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置が定められている。 |
| 退職の申出に対し「2か月後くらいに受理する」と述べていた。 | 民法627条1項 労働基準法5条 |
期間の定めのない契約は申入れから2週間で終了。会社の受理は要件ではない。人数の都合は使用者側の事情である。 |
| 療養が必要な状態で、シフトに沿った就労が継続していた。 | 労働契約法5条 健康保険法99条 |
就労の継続により症状が悪化するおそれがある。傷病手当金は連続3日の待期を要するため、断続的な出勤は受給の妨げとなる。 |
| 休職制度の有無や手続が明確に示されていない。 | 労働基準法89条 106条 |
休職に関する定めがあれば就業規則の記載事項。周知されていない規則は効力を持たないため、制度の説明が求められる。 |
| 業務による悪化の可能性がありながら労災の検討がされていない。 | 労働者災害補償保険法 業務上腰痛の認定基準 |
業務に起因する腰痛は労災の対象となり得る。災害性の原因によるものと災害性の原因によらないものの認定基準が定められている。 |
| 立ち仕事における腰部負担への対策が確認できない。 | 職場における腰痛予防対策指針 労働安全衛生法22条 |
作業姿勢・動作、作業標準、休憩について配慮が求められる。腰痛の既往がある者への配置にも留意が必要。 |
| 周囲の不満が生じる状態が放置されていた。 | 労働契約法5条 労働施策総合推進法30条の2 |
就業環境への配慮は使用者の責任。要員を補充せずに配慮を現場任せにすることが本人への圧力を生んでいる。 |
| 保険者の調査が想定された途端に対応が変わっている。 | 健康保険法198条 労働契約法3条4項 |
保険者は文書の提出や質問を求めることができる。調査を契機に取扱いを変えることはそれまでの対応の不当性を示す。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この会社を糾弾する
この記事の要点を順に述べます。
まず診断書です。
この方は正しい手順を踏んでいます。
- 早退して受診した
- 診断を受けた
- 診断書を発行してもらった
- マネージャーと事務所の上司に相談した
ここまで非の打ちどころがありません。
そして診断の内容です。
「立ち仕事を続けたらひどくなる」。
つまり業務の内容が悪化の原因だと医師が示しているのです。
ここで会社がすべきことは決まっています。
- 立ち仕事以外の業務に配置換えする
- 労働時間を短縮する
- 休職の制度を案内する
- 退職を希望するなら手続きを進める
この会社がやったのはどれでもありません。
止めたのです。
次に「2か月後くらいに受理する」という言葉です。
ここをはっきり申し上げます。
退職に受理は要りません。
民法627条1項は解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了すると定めています。
会社が認めたらとは書いていません。
そして「人数の関係上」という理由です。
要員の確保は会社の仕事です。
療養が必要な人に負わせるものではありません。
そしてこの記事の核心に入ります。
傷病手当金の待期です。
ここが最も深刻な損害を生みました。
もう一度整理します。
傷病手当金は連続する3日の休みがあって初めて4日目から支給されます。
この方の状態はこうでした。
- 働ける状態ではない
- それでもシフトが出ている
- できる範囲で出勤している
- だから待期が完成しない
つまり働いても満足に働けず、休んでも手当が出ないという状態です。
収入も療養もどちらも得られない。
そしてこれは会社が退職を止めていたことの結果です。
最後に結末です。
「事務所に保険者より、申請したものをそのまま働かせている件で調査が入るかもしれなくなったそうで、翌日退職しても良いと電話で報告がありました」。
ここをよく読んでください。
翌日です。
2か月かかると言っていたものが、
調査の話が出た途端に翌日になりました。
つまり最初からできたのです。
投稿者の結論は正確です。
「本当に使い捨ての駒にしか思ってないんだなと思いました」。
そして退職後の傷病手当金について申し添えます。
これはほとんど知られていない制度です。
健康保険法104条は資格喪失後の継続給付を定めています。
要件は二つです。
- 資格喪失の日の前日までに継続して1年以上被保険者であったこと
- 資格喪失の際に傷病手当金を受けているか、受けられる状態にあること
この二つを満たせば退職後も引き続き受給できます。
ここで重要なのが二つ目です。
退職の日までに待期が完成し、受給できる状態になっている必要があります。
つまり退職の日に出勤してしまうと、
継続給付を受けられなくなることがあるのです。
この方のように中途半端に出勤し続けた場合、
この道も閉じてしまう可能性がありました。
ですからもう一度申し上げます。
働けないのであれば、連続して休んでください。
それが制度を使うための前提です。
そして会社がシフトを出していても、
診断書を添えて休むと伝えることができます。
最後にこの方の願いに応えます。
「他の方も同じような対応をされていないことを、ただただ願います」。
ですから同じ状況にある方へ整理してお伝えします。
病気やけがで働けなくなったとき、
選べる道は三つあります。
- 就業を続けながら配置や時間を変えてもらう
- 休職して傷病手当金を受ける
- 退職して療養に専念する
そしてどれを選ぶかは本人が決めます。
会社が決めるものではありません。
この方の場合、
一つ目は実現せず、
二つ目は出勤が続いたため始まらず、
三つ目は会社に止められたのです。
つまりすべての道が塞がれていたことになります。
そしてその間症状は進んでいるのです。
ここではっきり申し上げます。
身体が先です。
会社の繁忙期は毎年来ます。
ですが腰は一つしかありません。
そして診断書という書面の強さを申し添えます。
この方は診断書を取得していました。
これは非常に重要です。
口頭で「腰が痛い」と言っても記録に残りません。
ですが医師の診断書は別です。
いつ、どういう状態で、どのような配慮が必要かが書面で残ります。
そして会社がそれを受け取ったという事実も重要です。
提出の際は写しを取り、提出した日付を控えてください。
これが安全配慮義務違反を主張する土台になります。
そして診断書の費用についても一言。
診断書は自費で数千円かかります。
ですがその数千円が後の数十万円を守ることがあります。
惜しまずに取ってください。
こういう会社は、今すぐ辞めていい
3つの理由を述べます。
- 1. 診断書を出しても配置が変わらないなら、悪化する
「立ち仕事を続けたらひどくなる」と医師が言っているのです。腰の疾患は慢性化します。時間がたつほど不利です。 - 2. 中途半端な出勤は、手当も収入も失う
連続3日の待期が完成しなければ傷病手当金は始まりません。そして満足に働けないのですから評価も得られません。 - 3. 調査が入りそうになって初めて動く会社
翌日でできたのです。つまり2か月という説明は事実ではなかったことになります。次の説明も信用できません。
もし今、同じ状況にいるなら
- 1. 傷病手当金は、連続3日の休みから始まる
働けないのであれば連続して休むことが必要です。断続的な出勤は待期をリセットします。支給期間は令和4年1月から通算1年6か月となり、途中で就労した期間はカウントされません。 - 2. 退職は、会社の受理を待つ必要がない
民法627条1項により申入れから2週間で終了します。退職届を書面で出してください。内容証明郵便なら日付が記録に残ります。 - 3. 業務による腰痛なら、労災の可能性がある
重量物の取扱いや長時間の立位が原因であれば労災保険の対象となる余地があります。認定するのは労働基準監督署です。健康保険の傷病手当金とは別の制度ですから相談してください。
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