家族経営のアットホーム企業。業務開始前に雪かき。なぜか社長宅の雪かきもやらされる…。

今世間を騒がせているブラック企業ほどではないのですが、数年前に勤務していた会社がブラックでした。
その時の体験談ですが、その会社は家族経営で良くも悪くもアットホームでして、公私混同気味でした。会社はタイムカードを導入していますが、朝は9時に押して夜は17時に押すのが決まりでした。実際は朝は9時よりも早く出勤し夜は17時以降も仕事です(タイムカードの意味がない)。
まぁ、夜の方は忙しいときだけ1時間程度の残業だったのであまり気にしてなかったのですが、朝が大変でした。雪が降る地域に住んでいたのですが、朝は暗くて寒い。しかも求人には9時からと届け出されてたので応募したのに本当の出勤時間は8時出勤でした。なので、本当に冬の朝は辛かったです。
さらに、除雪されてない道を進んで出勤しなければいけないのでここでも体力と時間を消耗します。やっと会社についたら、会社の駐車場の雪かきです。しかも、8時までに終わるようにしなければなりません。
この時点でもういやなのに、会社の駐車場は広くて絶対に8時には終わらないため、朝の出勤時間をもっともっと早くにしなければいけないので辛かったです。
それから、なぜか自宅の前の雪かきもさせられるので、仕事どころではなかったです。頑張った分が給料に反映されるならまだしもタダ働きでしたし、いやになってやめました。やめるとき揉めるかな、と思ったのですが以外とスムーズに、やめれてよかったです。
でも、よくしてもらったことも沢山あるのでそこは感謝してますが、今後はアットホームなところはやめておこうと思う体験でした。
みんブラ事務局の所見:会社の雪かきは労働時間、社長宅の雪かきは業務ですらない。「アットホーム」の正体がこれだ。
「アットホーム」が意味していたもの
この体験談の判定は3.4です。暴言もいじめも出てきません。投稿者自身も「今世間を騒がせているブラック企業ほどではないのですが」と書いています。
それでも取り上げる価値があるのは、「アットホームな職場」という言葉が実際に何を意味するかを具体的に記録しているからです。
会社は家族経営で、「良くも悪くもアットホームでして、公私混同気味」でした。
まずタイムカードの運用。「会社はタイムカードを導入していますが、朝は9時に押して夜は17時に押すのが決まりでした。実際は朝は9時よりも早く出勤し夜は17時以降も仕事です(タイムカードの意味がない)」。
投稿者の括弧書き——「タイムカードの意味がない」——がすべてを言い当てています。
そして朝の問題です。求人には9時からと届け出されていたのに、本当の出勤時間は8時。
ここに、雪国という条件が重なります。「朝は暗くて寒い」。「除雪されてない道を進んで出勤しなければいけないのでここでも体力と時間を消耗します」。
そして会社に着いたら——「会社の駐車場の雪かきです。しかも、8時までに終わるようにしなければなりません」。
ところが「会社の駐車場は広くて絶対に8時には終わらないため、朝の出勤時間をもっともっと早くにしなければいけないので辛かったです」。
——求人は9時。実際は8時。雪かきのために、さらに早く。
そして極めつけがこれです。「それから、なぜか自宅の前の雪かきもさせられるので、仕事どころではなかったです」。
社長の自宅前の雪かき。そして「頑張った分が給料に反映されるならまだしもタダ働きでした」。
投稿者は最後にこう書いています。「でも、よくしてもらったことも沢山あるのでそこは感謝してますが、今後はアットホームなところはやめておこうと思う体験でした」。
法律から見ると、これは何にあたるのか
この職場で行われていたことを条文と突き合わせます。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| タイムカードを朝9時・夜17時に押すことが決まりで、実際の勤務時間と無関係だった。 | 労働基準法108条 労働安全衛生法66条の8の3 |
使用者には労働時間を客観的な方法で把握し、賃金台帳を調製する義務がある。実態と異なる打刻を義務づける運用は、労働時間の隠蔽にあたる。 |
| 求人には9時からと記載されていたが、実際の出勤は8時だった。 | 労働基準法15条 職業安定法65条 |
始業・終業時刻は明示すべき労働条件。事実と相違すれば労働者は即時に契約を解除できる(15条2項)。虚偽の条件での募集には罰則がある。 |
| 会社の駐車場の雪かきを、始業前に無償で行わせていた。 | 労働基準法32条 労働基準法37条 |
使用者の指示による除雪作業は労働時間。所定時刻より前の作業には、賃金と割増賃金の支払義務が生じる。 |
| 社長の自宅前の雪かきをさせていた。 | 労働基準法15条 労働施策総合推進法30条の2 |
経営者個人の家事は労働契約で定められた業務に含まれない。厚生労働省の指針は「業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること」を「過大な要求」の例として明記している。 |
| 17時以降も勤務していたが、打刻は17時とされていた。 | 労働基準法37条 労働基準法24条 |
時間外労働には25パーセント以上の割増賃金が必要で、賃金は全額を支払わなければならない。 |
| 除雪という屋外作業を、寒冷な早朝に行わせていた。 | 労働契約法5条 労働安全衛生法 |
使用者は労働者の安全と健康に配慮する義務を負う。積雪期の除雪作業には転倒・落雪等の危険があり、作業手順や装備の整備が求められる。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この事例で、雪国で働く方に特に知っておいてほしいことがあります。雪かきは労働時間です。
労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を指します。会社の駐車場の除雪は、事業の運営に必要な作業であり、「8時までに終わらせること」という明確な指示があったのですから、疑いなく労働時間です。
そして終わらない量が課されていたという点。「会社の駐車場は広くて絶対に8時には終わらない」——これは始業前の労働時間が際限なく延びる構造を意味します。早く来るほど雪かきが進む。だから「もっともっと早く」出勤することになる。
そして社長の自宅前の雪かき。これは労働時間の問題を超えます。
厚生労働省のパワハラ指針は、「過大な要求」の該当例として「労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること」を明記しています。
社長の自宅前の除雪は、会社の事業とは何の関係もありません。これは指針が名指しで例示しているパワーハラスメントです。
そしてタイムカードの運用。「朝は9時に押して夜は17時に押すのが決まり」——これは記録ではなく儀式です。労働時間を把握するための道具が、労働時間を隠すために使われている。
使用者には労働時間を客観的な方法で把握する責務があり、厚生労働省もそのためのガイドラインを示しています。決まった時刻に押させる運用は、その責務を果たしていないどころか、意図的に反しています。
「アットホーム」という言葉を糾弾する
ここからは、事務局として率直に書きます。
投稿者は「良くも悪くもアットホームでして、公私混同気味でした」と書いています。この「良くも悪くも」という表現に、この職場の本質があります。
アットホームな職場では、良い面と悪い面が同じ根から生えます。
親身になってくれる。困ったときに助けてくれる。——これは良い面です。投稿者も「よくしてもらったことも沢山あるのでそこは感謝してます」と書いています。
ところが同じ根から、「家族なんだから、社長の家の雪かきくらいやってくれるよね」という発想も生えてきます。
境界がないからこそ親密で、境界がないからこそ搾取される。これは分離できません。
そして雪かきという具体的な作業について考えてください。
雪国の朝、除雪されていない道を通って出勤し、暗くて寒いなかで広い駐車場を雪かきする。そしてそれが8時までに終わらないので、さらに早く来る。
これは肉体労働です。事務職として採用された人が、始業前に無償で肉体労働をしている。
そして社長の自宅前。ここで「なぜか」という投稿者の言葉が重要です。「それから、なぜか自宅の前の雪かきもさせられる」。
説明されていないのです。業務命令としての根拠も、手当も、感謝の言葉すら記録されていません。ただ「そういうことになっている」。
そして「頑張った分が給料に反映されるならまだしもタダ働きでした」という一文。
——正当な指摘です。雪かきに手当が出ていれば、それは業務として整理されます。出ないということは、会社がそれを「業務」として認めていないということです。にもかかわらず、やらなければならない。
そして最後の一文が、この記事の教訓を凝縮しています。
「今後はアットホームなところはやめておこうと思う体験でした」。
——求人票で「アットホームな職場」と書かれていたら、それは何を意味するのか。この記事は、その具体例です。
なぜ、この職場は転職を準備すべきなのか
この記事の判定を「転職の準備を推奨」としたのは、暴言や極端な長時間労働が記録されていないためです。それでも準備は始めるべきです。
第一に、タダ働きは積み上がるからです。毎日1時間の早出だけでも、月20時間、年間240時間。時給1,100円なら年間26万円分の労働を無償で提供している計算になります。雪かきの時間を加えれば、さらに増えます。
第二に、記録が残らないからです。タイムカードが決まった時刻に押されている以上、会社の記録には「9時から17時」としか残りません。何年働いても、実労働の証拠はゼロのまま積み上がっていきます。
第三に、「なぜか」が説明されない職場だからです。社長の自宅前の雪かきに理由の説明がないということは、次に何が追加されても説明されないということです。業務の範囲を決めるのが契約ではなく空気である限り、範囲は際限なく広がります。
いま同じ状況にいる人が、今日のうちにやるべき3つのこと
- 1. 打刻時刻と実際の時刻を、両方記録する
「9時に打刻、実際は7時30分から雪かき」——このように両方を並べて記録してください。ずれが継続的に残れば、会社の記録が実態を反映していないことの証拠になります。交通系ICカードの利用履歴、車の発進時刻、スマートフォンの位置情報履歴、雪かき中に撮った写真の撮影日時が裏づけになります。「9時に押すこと」という指示自体も記録してください。 - 2. 社長宅の雪かきは、業務ではない
経営者個人の家事は、労働契約で定められた業務に含まれません。厚生労働省の指針は「業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること」を「過大な要求」の例として明記しています。断りにくければ、まずいつ何をさせられたかを記録してください。積み重なれば、相談時の具体的な材料になります。 - 3. 求人票と実態のずれは、即時解除の根拠になる
求人票に「9時から」と記載されていたなら、その求人票を保存してください。始業時刻は明示すべき労働条件であり、事実と相違すれば労働基準法15条2項により即時に契約を解除できます(2週間待つ必要がありません)。未払い賃金と労働時間の問題は労働基準監督署、虚偽の求人はハローワークや労働局の需給調整事業部門が窓口です。
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この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。





