「父親が亡くなったので休みたい」と言ったら「困る」と叱責。葬式後に休み無し状態に…。

20歳ごろに働いていた企業での話です。私の父親が亡くなったので、職場に休みがほしい、と連絡しました。すると、「シフト制なんだから困る、なるべく休みは少なめに」という話をされました。まさかの返事に困りましたが、結局、通夜と火葬、葬儀にのみ出席しました。片付けは残された母親に頼み出社してみると、新しいシフト表を渡されました。
私が休んでいた分は、その月の、残りの休みがあてられていたのです。「他の人に休みを代わってもらったんだから感謝しろ」という話でした。おかげで、父親が亡くなった後に出社してから2週間ほど、休みなしで働く羽目になりました。
普段も忙しくて休日は無償で出社させられていました。とはいえ、親が亡くなったときくらいはまともな忌引きがあるとばかり思っていました。毎日サービス残業でしたし、インフルエンザで40度以上熱があっても休ませてもらえたことはありません。全国規模で展開しているチェーン店です。未だに当時のことを思い出すと、やりきれない気持ちになります。
当時の上司は、その後に、奥様が体調不良という理由で頻繁に休んだりしていたのも精神的にきつい出来事でした。どうしても忘れられません。ブラック企業だったと今でも思います。
みんブラ事務局の所見:忌引きは法律上の義務ではない。しかし「休んだ分を法定休日で相殺」は労働基準法35条違反である。
まず前提:忌引き休暇は、実は法律で義務づけられていない
この体験談を読むうえで、先に正確な前提を共有しておきます。意外に思われるかもしれませんが、「忌引き休暇」は労働基準法に規定がありません。年次有給休暇や産前産後休業と違い、法律が使用者に付与を義務づけている休暇ではないのです。
ですから、忌引きを何日与えるか、有給とするか無給とするかは、各社の就業規則次第ということになります。親族の範囲に応じて日数を定め、有給扱いとし、香典まで出す会社もあれば、制度そのものが存在しない会社もある。この差は違法・適法の問題ではなく、その会社が従業員をどう見ているかの問題です。
参考までに、就業規則で忌引きを定めている会社の一般的な相場を挙げておきます。配偶者で10日前後、実父母で5日から7日、子で5日前後、祖父母・兄弟姉妹で3日程度、配偶者の父母で3日程度というあたりが多く見られる水準です。遠方であれば移動日を加算する規定を置く会社もあります。あくまで各社が任意に定めているものなので法的な基準ではありませんが、「実父の葬儀で通夜・火葬・葬儀の日だけ」というこの会社の運用が、世間の水準から大きく外れていることは押さえておいてよいでしょう。
もうひとつ実務的な注意点があります。忌引きを「有給」とするか「無給」とするか、そもそも欠勤扱いにするかも、就業規則の定め方次第だということです。特別休暇として有給で処理する会社もあれば、休ませはするが無給という会社もあり、その場合は欠勤控除で給与が減ります。また、忌引きとは別に慶弔見舞金を支給する規定を置く会社もあります。自分の会社がどの扱いなのかは、いざというときではなく平時のうちに就業規則で確認しておくことをおすすめします。
では、この体験談の会社は法的に何も問題がないのかというと、まったくそうではありません。問題は「休ませなかったこと」ではなく、「休んだ分を法定休日から差し引いたこと」にあります。ここを取り違えると、泣き寝入りすることになります。
法律から見ると、これは何にあたるのか
この会社で実際に行われていたことを、条文と突き合わせて整理します。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 父親の葬儀で休んだ分を、その月の残りの休日に振り替えられ、葬儀後およそ2週間休みなしで勤務した。 | 労働基準法35条 | 使用者は毎週少なくとも1回、または4週を通じて4日以上の休日を与えなければならない。休んだ分を他の休日で相殺して連続勤務させる運用は、この法定休日を消滅させる行為にあたる。 |
| 普段から休日に無償で出社させられ、毎日サービス残業をしていた。 | 労働基準法24条 労働基準法37条 |
賃金は全額を支払わなければならず、時間外は25パーセント以上、法定休日の労働には35パーセント以上の割増賃金が必要。「無償で出社」という状態に適法な余地はない。 |
| 40度以上の発熱があっても休ませてもらえたことがない。 | 労働契約法5条 | 使用者は労働者が安全と健康を確保しつつ働けるよう配慮する義務(安全配慮義務)を負う。高熱の労働者を就業させることは、本人の健康被害だけでなく、接客業であれば顧客と同僚への感染拡大リスクも生じさせる。 |
| 「シフト制なんだから困る」と言われ、休むこと自体を渋られた。 | 労働基準法39条5項 | 年次有給休暇は労働者が請求する時季に与えなければならない。使用者に認められているのは事業の正常な運営を妨げる場合に他の時季へ変更する権利だけで、取得そのものを拒否する権利ではない。取得理由を問いただすこともできない。 |
| 「他の人に休みを代わってもらったんだから感謝しろ」と言われた。 | 労働施策総合推進法 30条の2 |
身内の不幸という私的で重大な事情につけ込み、本来与えるべき休日を与えないうえで感謝を要求する言動は、優越的な関係を背景とした「精神的な攻撃」に該当し得る。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
核心は表の1行目です。会社は「他の人に休みを代わってもらった」と説明していますが、実際に起きたのはその月の法定休日を前倒しで使い切らされ、以後2週間連続で働かされたという事態です。労働基準法35条は毎週1回または4週4日の休日を義務づけていますから、2週間連続勤務は原則としてこれに抵触します。忌引きを与えるかどうかは会社の裁量ですが、法定休日を与えるかどうかは裁量ではありません。
もうひとつ、実務上とても重要な選択肢があります。忌引き制度がない会社でも、年次有給休暇を使って休むことは労働者の権利だという点です(労働基準法39条)。有給の取得に理由の説明は要りませんし、会社が理由を審査して可否を決めることもできません。会社側が時季変更権を行使できるのは事業の正常な運営を妨げる場合に限られ、それも「別の時季に変更する」権利であって、取得そのものを拒否する権利ではありません。「シフト制なんだから困る」は、有給を消滅させる理由になりません。
人が一番つらいときに冷たくする会社を糾弾する
ここからは、事務局として率直に書きます。
父親が亡くなったという連絡に対して、この会社が最初に発した言葉は「シフト制なんだから困る、なるべく休みは少なめに」でした。お悔やみの一言もない。まずは自分たちのシフトの心配です。
私たちは、この一点にこの会社の本質がすべて表れていると考えます。従業員をシフトを埋めるための駒としてしか見ていないから、駒の家庭で何が起きたかには関心が向かず、盤面の穴だけが気になる。20歳の従業員が親を亡くしたという場面ですら、そうなのです。
そして、通夜と火葬と葬儀にだけ出席して戻ってきた人間に対して差し出されたのが、休みが消えた新しいシフト表でした。片付けは残された母親に押しつけざるを得なかった。喪主側の実務がどれほど山積みか、想像したことすらないのでしょう。そのうえで「他の人に休みを代わってもらったんだから感謝しろ」と言う。与えるべきものを与えなかった側が、与えられた側であるかのように振る舞っている。ここまでくると倒錯です。
極めつけは、この上司が後に「奥様が体調不良」という理由で頻繁に休んでいたという事実です。配偶者の体調不良では休むが、部下の親の葬儀では休ませない。つまりこの人物は「家族の事情で休むのは当然だ」と理解したうえで、部下に対してだけそれを認めなかったということになります。無知ゆえの冷淡さですらない。意図的な二重基準です。投稿者が20年経っても忘れられないと書いているのは、当然だと思います。
忌引き休暇に法的な義務がないというのは、裏を返せばその会社の姿勢がそのまま出るということです。法律に強制されなくても人として当たり前の配慮ができるかどうか。そこを見れば、その会社が長く勤めるに値するかどうかはだいたい分かります。そして、人が一番つらいときに冷たくした会社が、平時に温かくなることはありません。
なぜ、この手の会社は今すぐ辞めるべきなのか
この体験談の会社は、全国規模で展開しているチェーン店です。つまり個人経営の小さな職場で起きた例外ではなく、規模のある組織で制度として運用されていたということになります。規模が大きいのに労務管理がこの水準だという事実は、「上に言えば直る」という期待が通じにくいことを意味します。
実際、この会社では日常的にサービス残業があり、休日は無償出社で、40度の熱でも休ませない運用が定着していました。忌引きの件はその延長線上で起きた、氷山の一角にすぎません。親の葬儀すら認めない基準で運用されている職場に、自分の病気や、子どもの入院や、災害のときだけ配慮を期待するのは無理があります。
そして冷静に金額で考えてください。休日の無償出社と毎日のサービス残業を合わせて月60時間、時給1,200円換算とすると、割増を無視しても年間およそ86万円を無償で提供している計算になります。その対価として得ているのは、親の葬儀で叱責される職場です。割に合うはずがありません。
いま同じ状況にいる人が、今日のうちにやるべき3つのこと
- 1. まず就業規則を確認する
忌引きの規定があるかどうか、あるなら日数と有給・無給の別を確認してください。常時10人以上の労働者を使用する事業場には就業規則の作成と周知が義務づけられています(労働基準法89条・106条)。「見せられない」と言われるなら、それ自体が違法状態です。規定があるのに運用されていないなら、それは会社側の規則違反という形で追及できます。 - 2. 出勤日と休日を自分の手で記録する
「何月何日から何日まで連続で出勤したか」を、シフト表の写真やカレンダーのメモで残してください。法定休日が与えられていないことを示す証拠は、連続勤務の日数がひと目で分かる記録です。サービス残業の記録もあわせて残します。未払い賃金の請求権の時効は当分の間3年で、1日ごとに請求できる分が消えていきます。 - 3. 有給休暇を「権利として」使い、駄目なら相談する
忌引き制度がなくても、年次有給休暇の取得を会社が拒むことはできません。拒否された、あるいは取得を理由に不利益な扱いを受けた場合は、労働基準監督署または各都道府県労働局の総合労働相談コーナー(無料・予約不要)に相談してください。辞める決断をした場合、期間の定めのない雇用なら民法627条1項により申し入れから2週間で退職できます。シフトの都合は、それを覆す理由になりません。
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