高齢者宅に押し売り、高額商品を次々販売。クレーム電話で怒鳴られ精神的に辛い思いをすることに。

以前、浄水器や健康食品、ふとん等の訪問販売の会社に勤めていました。15年以上前の事で、現在その会社は存在していません。大阪が本社で、私は京都の支店で事務員として勤務していました。
採用と同時に、大阪本社で1週間程研修を受けて、京都の支店に配属されました。京都・大阪共に20代の営業の方達が(男女含む)10~15名程と、事務員3名程で勤務していたと思います。その他、バイトのテレアポさん達が常に15名程で勤務していました。
テレアポの方達もノルマがあり、リストに沿って電話をかけ、アポを取り付けていました。アポが取れると、事務員である私達が地図で住所を調べ、営業の方へ電話でそのお宅へ向かうよう指示を出します。
当時は車にナビがついていなかったので、まず普段見慣れない地図で1件ずつアポの住所を探す事、お宅が分からないと営業から電話がかかってくるので、地図を見ながら電話でナビをしないといけない事が、私には負担でした。
お宅に到着すると「今から入ります」と営業から電話がかかってきて、どれだけお宅に入り込んで商品を売りつけられるか時間を計ります。商品が売れず滞在時間が少ないと、帰社後上司から指導が入ります。今で言う「押し売り」に近い売り方をしていたんだと思います。
高齢者の方や障害のある方等にも高額な商品を売りつけ、家族の方からのクレームの電話がしょっちゅうかかってきていました。電話応対は私達事務員だったので、家族の方から怒鳴られる事も多く、精神的に辛い思いをしました。また、「直接お金を渡すから、1人で取りに来い」と言われた事もあり、社長から行くよう指示された事もあります。怖かったので断りましたが。
求人情報では普通の事務職の内容だったので応募しましたが、ほぼ電話でのナビやクレーム対応が主な仕事だったので、私の経験してきた事務の仕事とはかけ離れたものでした。
高齢者等、弱い立場の方に対して悪質な売り方をしている様子も耐えられず、結局半年程で退職しました。
みんブラ事務局の所見:「滞在時間」を管理する会社は販売業ではない。求人票の「事務職」との落差は職安法65条違反である。
「加害者の側に立たされる」という、もう一つのブラック
この体験談は、みんブラに寄せられる中でも特殊な苦しさを扱っています。
長時間労働でも、暴力でも、賃金未払いでもありません。「自分が加害の一部にされる」という苦しさです。
事実関係を整理します。投稿者が勤めていたのは、浄水器・健康食品・ふとんを訪問販売する会社でした。大阪本社、京都支店に配属。営業10〜15名、事務員3名、テレアポのアルバイトが常時15名という編成です。
この人員比に注目してください。営業より電話をかける人間のほうが多いのです。これは「商品を売る会社」ではなく、「訪問する口実を大量生産する会社」の編成です。
投稿者の業務はこうでした。テレアポがアポを取る → 事務員が地図で住所を調べる → 営業に電話でナビをする → 営業から「今から入ります」と連絡が来る → どれだけ長く家に入り込めたか時間を計る。
そして——「商品が売れず滞在時間が少ないと、帰社後上司から指導が入ります」。
ここが決定的です。この会社は滞在時間を管理指標にしていた。つまり「帰らないこと」そのものが業務命令だったということです。
もう一点、見逃してはいけない数字があります。営業は「20代」だったと書かれています。
つまりこの会社は、社会経験の浅い若者を大量に採用し、高齢者の家に送り込んでいたということです。
20代の営業にとって、「滞在時間が短いと帰社後に指導が入る」というルールは絶対的な圧力になります。断り方も、引き際も知らないまま、居座ることだけを覚えさせられる。
この会社は高齢者を食い物にすると同時に、若者を加害者に育てていたのです。
投稿者本人が「今で言う『押し売り』に近い売り方をしていた」と書いていますが、これは「近い」のではなく、そのものが法律で禁じられている行為です。
法律から見ると
この事例は労働法と消費者保護法の両方にまたがって違反しています。整理します。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| 求人は「事務職」だったが、実際は電話ナビとクレーム対応が主業務だった。 | 職業安定法65条 労働契約法4条 |
虚偽の条件を提示して募集する行為は職安法違反で6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。労働条件はできる限り書面で確認できるようにしなければならない。 |
| 営業が客宅にどれだけ長く入り込めたか、滞在時間を計測し評価した。 | 特定商取引法 3条の2第2項 |
訪問販売では契約を締結しない意思を示した相手への再勧誘が明確に禁止されている。滞在時間を評価指標にすること自体が、違法勧誘を組織的に奨励する仕組みである。 |
| 高齢者や障害のある方に高額商品を次々と売りつけた。 | 特定商取引法 9条の2 |
日常生活で通常必要とされる分量を著しく超える契約は1年以内なら解除できる(過量販売解除権)。判断力が不十分な状態につけ込んだ勧誘は消費者契約法4条3項による取消しの対象。 |
| 客宅で「帰ってほしい」と言われても居座り、契約を取った。 | 消費者契約法 4条3項1号 刑法130条 |
退去を求められたのに退去しない(不退去)と、その契約は取り消すことができる。退去を求められた後も居座り続ければ不退去罪が成立し得る。 |
| 「直接お金を渡すから1人で取りに来い」という客宅へ、社長が単独で行くよう指示した。 | 労働契約法5条 | 会社は労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう配慮する義務を負う。危険が予見される場所へ女性従業員を単独で行かせる指示は、安全配慮義務違反にあたる。 |
| 家族からの抗議電話をすべて事務員に一次対応させ、怒鳴られ続けさせた。 | 労働施策総合推進法 30条の2 労働契約法5条 |
顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)について、事業主には相談体制の整備などの措置が求められる。自社が原因を作った抗議を、権限のない事務員に丸投げするのは配慮の放棄である。 |
| クーリング・オフの説明を実質的に妨げる売り方をしていた。 | 特定商取引法 9条・4条 |
訪問販売は法定書面の受領日から8日間、無条件で解除できる。書面を渡さない・虚偽を告げると8日を過ぎてもクーリング・オフの起算が始まらない。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この会社を糾弾する
この会社の構造を、はっきり言葉にします。
これは販売会社ではありません。判断力の弱った人を探し出して、家から出られない状況を作り、財産を移転させる仕組みです。
証拠は、この会社が「滞在時間」を管理していたという一点で足ります。
まっとうな商売なら、管理すべきは提案の質や顧客の満足度です。滞在時間を測る必要はありません。良い商品なら、短時間でも売れるからです。
滞在時間を測るのは、「相手が根負けするまで居座れ」という命令を、数値化して社員に飲ませるためです。
そしてこの会社は、その加害を末端の事務員に肩代わりさせました。
売ったのは営業です。売らせたのは会社です。それなのに——「電話応対は私達事務員だったので、家族の方から怒鳴られる事も多く、精神的に辛い思いをしました」。
怒鳴っている家族は、何も間違っていません。親が、あるいは障害のある家族が、不要な高額商品を買わされたのです。怒って当然です。
つまりこの会社は、正当な怒りの矢面に、何の権限もない事務員を立たせ続けた。自分たちは奥に引っ込んだまま。
もっとも許しがたいのは、あの指示です。
「直接お金を渡すから、1人で取りに来い」と言われた事もあり、社長から行くよう指示された事もあります。怖かったので断りましたが。
読み飛ばさないでください。社長は、女性従業員に、身元も意図もわからない相手の家へ、現金を受け取りに、単独で行けと命じたのです。
投稿者は断りました。この判断が、この方を守りました。
断らなかったら何が起きていたか。想像するのは難しくありません。
会社は、社員の身の安全よりも、現金の回収を優先した。それがこの一件の意味です。
そして、この指示にはもう一つの意味があります。
訪問販売では、代金は本来契約書面を交付したうえで受け取るものです。「直接手渡しで、1人で取りに来い」という受け渡し方が選ばれるのは、記録を残したくないときです。
つまり社長は、証拠の残らない現金回収を、事務員に代行させようとした。
もし後で問題になったとき、「現金を受け取ったのは事務員だ」と言える状態を作っておくためです。
断ったこの方は、身の危険だけでなく、責任を押しつけられる立場からも逃れました。
こういう会社は、辞めるのが正解である
投稿者は半年で退職しました。そしてこの会社は現在存在していません。
この2つの事実が、結論を先に出してくれています。逃げた人は正しく、残った会社は消えたのです。
それでも「半年で辞めるなんて」と自分を責める人がいるので、3つの理由を挙げます。
- 1. 会社が消えても、加害の記憶は本人に残る
この業態の会社は行政処分や摘発で消えることが珍しくありません。ですが会社が消えても、「あのとき自分が地図を調べて営業を送り込んだ家」の記憶は本人の中に残り続けます。在籍が長いほど、その件数は増える。早く辞めることは、自分の心を守る行為でもあります。 - 2. 加担した側として名前が残るリスクがある
特定商取引法違反は業務停止命令や業務禁止命令の対象で、行政処分では会社名と業務内容が公表されます。悪質な事案では刑法246条の詐欺罪として立件されることもあります。事務員は指示に従っただけでも、事情聴取を受ける立場になり得ます。在籍期間が短いほど、その関与は薄くなります。 - 3. 「事務職」の経験が積めない
投稿者自身が「私の経験してきた事務の仕事とはかけ離れたものでした」と書いています。ここに何年いても、職務経歴書に書けることは増えません。むしろキャリアの空白と同じ扱いになります。経理・労務・事務の実務は、まっとうな会社でしか身につきません。
もし今、同じ状況にいるなら
- 1. 求人票と実際の業務の差を記録する
応募時の求人票・求人サイトの画面・労働条件通知書を保存してください。これが職業安定法65条違反を主張する唯一の証拠になります。ハローワーク経由なら、ハローワークの「求人ホットライン」に申告できます。 - 2. 危険な指示は、断ってよい
「1人で現金を取りに行け」のような指示に従う義務はありません。会社は安全配慮義務を負っており、危険な業務命令はそもそも有効な業務命令ではありません。断ったことを理由に不利益を受けたら、それ自体が新たな問題になります。断った事実と日時をメモに残してください。 - 3. 被害者側の相談先も知っておく
もし身近に被害に遭った高齢者がいたら、消費者ホットライン「188(いやや)」です。全国どこからでも最寄りの消費生活センターにつながります。クーリング・オフは書面を受け取った日から8日、過量販売なら1年以内。自分の労働については各都道府県労働局の総合労働相談コーナー(無料・予約不要)へ。
この体験談に近いケース
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この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。





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