迷惑な勧誘電話をしている会社の実態。働いている社員にとってもブラックな企業だった。

私が体験したブラック企業は都内のとある不動産会社でした。
何がブラックかと言いますと、始めの面接では法人営業をするということだったのに、蓋をあけてみれば違法で手に入れた個人情報の携帯の電話番号に手当たり次第に「マンション投資をしませんか?」という営業の電話を入れること。電話をかけるノルマが決まっていて1日300本以上は電話をかけていました。
さらに、朝は朝礼の30分前にきて、机の台を拭かなければいけないなどの雑用から始まり、1週間ごとにアポイントメントの数のノルマも決められているので、電話営業でアポイントメントが取れず、そのノルマを達成できなかった場合、1週間は無給残業を強いられるなどの社内での決まりが多数ありました。
さらに、はじめに言っていたこととやらされる内容が違うということで、会社をやめたのですが、給料を払おうとせず、3ヶ月たっても払われなかったため、労働基準監督署に今までの経緯を話しましたが、タイムカードを義務付けていない会社であったため、契約書で私が在籍していたことは確認できても総労働時間が明確にすることができず、1日の法律で決められている最大の労働時間分に東京都の最低時給をかけた金額分しか振り込んでくれませんでした。
みんブラ事務局の所見:労基署に相談しても、記録がなければ最低賃金分しか戻らない。今日から記録を始めるべき理由。
この職場の何がブラックだったのか
この体験談は、ブラック企業の被害を受けたうえに、記録がなかったために救済も十分に受けられなかったという、二重の損失が記録された貴重な事例です。
まず採用時の説明との相違。面接では「法人営業をする」と説明されていました。ところが実際に配属されて分かったのは、「違法で手に入れた個人情報の携帯の電話番号に手当たり次第に『マンション投資をしませんか?』という営業の電話を入れること」でした。
法人向けの営業と、出所の怪しいリストへの個人向け電話勧誘。まったく別の仕事です。
そしてノルマ。電話をかける本数のノルマが決まっており、1日300本以上かけていたといいます。8時間勤務で計算すると、1時間あたり37本以上、1本あたり平均1分半という密度です。
さらに、朝は朝礼の30分前に来て机の台を拭くという雑用から始まります。そして最も問題なのがこれです。
「1週間ごとにアポイントメントの数のノルマも決められているので、電話営業でアポイントメントが取れず、そのノルマを達成できなかった場合、1週間は無給残業を強いられるなどの社内での決まりが多数ありました」。
ノルマ未達の罰として、無給で残業させる。これが「社内での決まり」として制度化されていました。
そして退職後。「はじめに言っていたこととやらされる内容が違う」という理由で辞めたところ、会社は給料を払おうとせず、3か月経っても支払われませんでした。
投稿者は労働基準監督署に経緯を話しました。ここからが、この体験談の核心です。
「タイムカードを義務付けていない会社であったため、契約書で私が在籍していたことは確認できても総労働時間が明確にすることができず、1日の法律で決められている最大の労働時間分に東京都の最低時給をかけた金額分しか振り込んでくれませんでした」。
在籍していた事実は認められた。しかし何時間働いたかを証明できなかった。だから法定労働時間×最低賃金という最低限の計算しか通らなかったのです。朝礼30分前の出社も、無給残業も、すべて計算に入りませんでした。
法律から見ると、これは何にあたるのか
この会社が行っていたことを条文と突き合わせます。労働法だけでなく、業法にも及びます。
| 体験談で実際に行われていたこと | 抵触する条文 | 何が問題なのか |
|---|---|---|
| ノルマ未達の罰として、1週間の無給残業が制度化されていた。 | 労働基準法24条 労働基準法37条 |
働いた時間には必ず賃金が発生し、時間外には25パーセント以上の割増賃金が必要。「罰として無給」に適法な余地はない。制裁として賃金を減らす場合も労働基準法91条の上限が適用される。 |
| 退職後3か月経っても給料が支払われなかった。 | 労働基準法23条 労働基準法24条 |
労働者の退職に際して請求があった場合、使用者は7日以内に賃金を支払わなければならない。賃金は毎月1回以上、一定の期日に全額支払う義務がある。 |
| 面接では「法人営業」と説明されたが、実際は個人への電話勧誘だった。 | 労働基準法15条 職業安定法65条 |
従事すべき業務の内容は明示すべき労働条件。事実と相違すれば労働者は即時に労働契約を解除できる(15条2項)。虚偽の条件での募集には罰則がある。 |
| 朝礼の30分前に出社して清掃を行わされていた。 | 労働基準法32条 労働基準法37条 |
使用者の指示による清掃は労働時間。毎日30分なら月10時間分の賃金が発生している。 |
| 違法に入手した個人情報のリストを使って勧誘電話をかけていた。 | 個人情報保護法 20条・27条 |
個人情報は適正な手段で取得しなければならず、第三者からの提供を受ける際は取得の経緯の確認と記録が必要。違法に取得された情報の利用は、事業者の重大な法令違反にあたる。 |
| 宅地建物取引業者による執拗な勧誘電話が行われていた。 | 宅地建物取引業法 47条の2 |
宅建業者には威迫行為の禁止があり、国土交通省令では勧誘に先立つ目的の告知、契約しない旨を告げた相手への勧誘の継続、迷惑を覚えさせるような時間の電話などが禁止されている。違反すれば業務停止等の監督処分の対象。 |
| タイムカードが導入されておらず、労働時間の記録が存在しなかった。 | 労働基準法108条 労働安全衛生法66条の8の3 |
使用者には労働時間を客観的な方法で把握し、賃金台帳を調製する義務がある。記録がないこと自体が違法状態であり、結果として労働者の請求を困難にする。 |
※ 引用した条文は2026年8月時点のものです。実際の判断は個別の事情によります。
この体験談から学ぶべき最大の教訓は、「記録がなければ、違法でも回収できない」という現実です。ここを詳しく説明します。
労働基準監督署は、投稿者の訴えを受けて動きました。契約書から在籍の事実も確認できました。それでも回収できたのは「法定労働時間×最低賃金」の金額だけでした。
なぜか。何時間働いたかを示す資料がなかったからです。朝礼30分前の出社も、ノルマ未達による無給残業も、あったことを証明できなければ、存在しなかったことと同じ扱いになります。
ここで重要なのは、タイムカードを導入していないこと自体が会社側の違法状態だという点です。使用者には労働時間を客観的に把握する責務があり、厚生労働省もそのためのガイドラインを示しています。記録を作らないことで、会社は結果的に有利になってしまった——これがこの事例の最も理不尽な部分です。
だからこそ、労働者側の記録が決定的に重要になります。手帳のメモ、交通系ICカードの利用履歴、スマートフォンの位置情報履歴、家族へ送ったメッセージの時刻。会社が記録を作らないなら、自分で作るしかありません。
もうひとつ、この会社には労働法以外の重大な問題があります。
不動産の勧誘については、宅地建物取引業法47条の2および国土交通省令により、勧誘に先立って業者名・氏名・勧誘の目的を告げること、相手が契約しない旨を告げたのに勧誘を続けないこと、迷惑を覚えさせるような時間に電話や訪問をしないことなどが義務づけられています。違反すれば指示処分や業務停止処分の対象です。
そして違法に入手した個人情報の使用。個人情報保護法は、偽りその他不正の手段による取得を禁止し、第三者から提供を受ける際には取得の経緯を確認して記録する義務を課しています。出所不明のリストを使った営業は、それ自体が事業者の重大な法令違反です。
罰として無給で働かせる会社を糾弾する
ここからは、事務局として率直に書きます。
この会社の「社内での決まり」を、もう一度確認してください。アポイントのノルマを達成できなかったら、1週間は無給で残業する。
これは制度化された賃金泥棒です。
普通のブラック企業は、「残業代を払わない」という不作為によって賃金を浮かせます。ところがこの会社は違います。「無給で残業させる」というルールを、明文の社内規定として持っている。意図的で、体系的で、会社ぐるみで設計されたものです。
そして、この仕組みの悪質さは「罰」という言葉で正当化されている点にあります。ノルマを達成できなかったのは自分が悪い。だから罰を受けるのは当然だ。——そう思わせることで、賃金の不払いを、本人の落ち度の帰結にすり替えている。
しかし冷静に見てください。1日300本の電話をかけてアポイントが取れないのは、手当たり次第にかけているリストの質と、設定されたノルマの水準の問題です。営業手法を決めたのは会社であり、リストを用意したのも会社であり、ノルマの数字を決めたのも会社です。会社の意思決定の結果を、23歳の新人が無給労働で支払っている。
そして辞めたあとの対応です。3か月経っても給料を払わない。労働基準法23条は、退職に際して請求があれば7日以内に支払えと定めています。3か月は、その12倍以上です。
私たちが最も悔しいのは、この結末です。投稿者は正しく行動しました。おかしいと気づき、辞め、労働基準監督署に相談した。これは多くの人ができないことです。それでも、回収できたのは法定労働時間分×最低賃金だけでした。
朝礼30分前の清掃も、ノルマ未達の無給残業も、「なかったこと」として処理された。会社がタイムカードを置かなかったという会社側の違法状態が、結果的に会社を守ったのです。
投稿者はこの体験談を「悪質違法企業は取り締まってくれ!」というタイトルで投稿しています。その通りだと思います。そして同時に、この記事を読んでいる方には「取り締まってもらうために必要なもの」を知っておいてほしい。それが記録です。
なぜ、この職場は即座に離れるべきなのか
第一に、会社の違法行為に加担させられているからです。違法に入手した個人情報を使った勧誘は、個人情報保護法と宅地建物取引業法の両方に関わる問題です。実行しているのは現場の従業員です。万一トラブルになったとき、矢面に立たされるのは電話をかけた人である可能性があります。
第二に、無給残業は必ず拡大するからです。「ノルマ未達なら1週間」というルールが機能してしまえば、会社にとってノルマを上げるほど得になります。達成できない人が増えれば、無給労働時間が増えるだけだからです。この仕組みには、歯止めが構造的に存在しません。
第三に、いま辞めても、記録があれば回収できるからです。未払い賃金の請求権の時効は当分の間3年です。今日から記録を始めれば、今日以降の分は確実に請求の対象になります。この投稿者が失ったものを、繰り返す必要はありません。
いま同じ状況にいる人が、今日のうちにやるべき3つのこと
- 1. 今日から、出退勤時刻を毎日記録する
この体験談が示した教訓は、ただ一点です。記録がなければ、違法でも回収できません。タイムカードがない会社なら、なおさらです。手帳でもスマートフォンのメモでも構いません。「何時に家を出て、何時に会社に着き、何時に出たか」を毎日書いてください。そして裏づけとして、交通系ICカードの利用履歴(改札の通過時刻が残ります)、スマートフォンの位置情報履歴、業務用チャットの最初と最後の発言時刻、朝の清掃中に撮った写真の撮影時刻——これらを意識して残しておいてください。 - 2. 給与明細と契約書は、一枚残らず保管する
労働条件通知書、雇用契約書、求人票、面接時にもらった資料、給与明細をすべて保管してください。「法人営業」と書かれた求人票があれば、労働基準法15条2項による即時解除の根拠になります。ノルマや無給残業のルールが書かれた社内文書、ノルマ達成状況の掲示、上司からの督促メールも、制度として無給労働があった証拠になります。 - 3. 未払いは在職中から相談してよい
賃金の不払いは労働基準監督署の申告対象です。退職を待つ必要はありません。申告を理由とする不利益な取扱いは労働基準法104条2項で禁止されています。会社の勧誘手法そのものに問題がある場合は、宅建業については都道府県の宅地建物取引業担当窓口、個人情報については個人情報保護委員会という相談先もあります。金額が大きい場合は法テラスの無料法律相談も検討してください。
この体験談に近いケース
この体験談に近いケースとして、あわせて読まれている記事です。
- 自爆営業は違法だよ?行き過ぎたノルマ・成果主義に、入社数ヵ月で新人が半数に。
- 高齢者・障害者に高額商品を売りつける悪徳訪問販売会社で働いてみた結果。
- 給料未払いで悩まされた体験談まとめ。請求方法は?どこに相談すればよいのか?
- 求人詐欺!募集要項は嘘だらけ!残業時間も給料もぜ~んぶウソ。違法性・罰則は?
この記事を読んで「うちの会社も同じだ」と感じた方は、ページ上部のブラック度から5段階で投票してください。投稿された体験談とあわせて、職場の実態を可視化していきます。




